文学や歌と同様に、歌詞は多くの翻訳の問題・難問を抱えている。かつて(さらに現在も)台詞のある外国語の音楽劇、とりわけ喜劇は、歌のパートは原語で、台詞のパートはその土地の言葉で上演されることもあった。しかし、それは、ミュージカルやオペレッタを本当に理解できない人々に、「歌詞は重要なものではない」という誤まった考えを与えてしまうことになった。ベティ・グレイブル、ドン・アメチー、カルメン・ミランダといった役者の魅力を活かすように書かれたミュージカルならそう支障はないかも知れないが、『ショウボート』、『オズの魔法使い』、『マイ・フェア・レディ』、『回転木馬』といった、歌詞が単に曲のおまけではなく、台詞と一つになって全体を構成し、筋に深くかかわるようなミュージカルでは重大である。今日では、原語で歌う時、翻訳を印刷して渡すか、映写することができるが、それでも自国語で歌を聞きたいという欲求は残るだろう。
リブレット作者とリブレットの地位『イオリオの娘』のポスター。台本のガブリエーレ・ダンヌンツィオの名前が作曲家より上にある
上演の時に印刷された台本が売られることが一般的になり、それらは手書きの楽譜より現存しているが、18世紀後期のロンドンでさえ、台本作家に言及したレビューは稀で、ロレンツォ・ダ・ポンテは回想録の中でそのことを嘆いている。
しかし、20世紀になった頃には、台本作家も重要な共作者として認識されるようになった。たとえば、ギルバート&サリヴァンがそうである。現在、オペラやオペレッタの作曲家の名前が宣伝のトップにきて、台本・作詞はその次にくるか、あるいは脚注扱いされるのが普通であるが、例外もある。『三幕の四人の聖人(英語版)』(作曲はヴァージル・トムソン)では台本のガートルード・スタインの名前が、『イオリオの娘(英語版)』(1906年、作曲はアルベルト・フランケッティ)では、原作者(戯曲)で台本作家のガブリエーレ・ダンヌンツィオの名前が、それぞれトップに記された。
一方で、台本があまり出来が良くなくても、素晴らしい音楽がつけられることによって、台本作家の名前が音楽史に残る場合もある。たとえば、モーツァルトの台本作家ジャンバッティスタ・ヴァレスコ(英語版)がそうである。
オペラにおいて、歌詞と音楽のどちらが重要かという問題は長い間議論されていて、リヒャルト・シュトラウスのオペラ『カプリッチョ』では劇中でその議論を扱っている。 台詞、歌詞、ト書きといったテキストは楽譜とは別に出版されるのが一般的だった(現在ほとんどのオペラのCDなどにもブックレットとしてついている)。フォーマットはさまざまで、パブリックドメインでのオペラの台本では、主要な曲の楽譜の抜粋がついていたりする。 一方、オペラの印刷された楽譜には歌詞がつくことが自然である。しかし、印刷された台本にある歌詞と楽譜の歌詞が異なる場合もありうる。台本にあった詞やフレーズの繰り返しなどである。たとえば、プッチーニ『トゥーランドット』のアリア『誰も寝てはならぬ』は、台本では「Tramontate, stelle! All'alba, vincero」とあるのに、楽譜では「Tramontate, stelle! Tramontate, stelle! All'alba, vincero! Vincero! Vincero!」と変えられている。 現代のミュージカルでは、台本と楽譜は別々に出版されるが、脚本と歌詞、全歌詞、ピアノ伴奏版、すべての音楽素材付き、台詞のタイミング付きなど、フォーマットが様々である。
出版されたリブレット
関連項目
Category:オペラ台本作家
リブレット作家のリスト(英語版:List of opera librettists
外部リンク
⇒Public-Domain Opera Libretti and Other Vocal Texts
⇒400 Librettos of the most famous Operas
⇒Либретто во сне и наяву [Libretto in dream and in reality], holding Russian and some Western libretti (in the Russian language, as Microsoft Word files), notably:
⇒Libretti of classic Russian operas (in Russian)
典拠管理データベース: 国立図書館
ドイツ
⇒イスラエル
アメリカ
ラトビア
チェコ
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