鉄輪式リニアモーターカーには以下のようなメリットがある。
リニアモーターは非常に薄いため通常の電車よりも車輪径を小さく、台車を小型化でき、客室の床面を低くすることができるほか、車両限界も縮小できる。このためトンネル断面を小さくでき、建設費を削減可能(ミニ地下鉄)。
駆動力を車輪とレールの摩擦に頼らないため、急勾配での走行性能が高く[注 2]、急曲線での走行が可能である[注 3]。大都市では地下鉄路線の過密化により直線的な路線空間の確保が困難になっており、急勾配・急カーブを多く持つ線形にせざるを得ないが、そのような場合に有効である。
減速歯車や撓み継ぎ手等の可動部分が無いので騒音が低く、保守が容易。
一方で、以下のようなデメリットがある。
リアクションプレートと車両側の電磁石との間隔(ギャップ)が狭い(12 mm程度)ため、地上区間や駅部ではゴミなどが挟まりやすい。
従来の粘着式推進に比べるとリニア誘導モーター固有の内部損失、及び、一次側コイルとリアクションプレート間の隙間が従来の回転式の誘導電動機に比べ大きいのでエネルギーの損失が大きく(磁界の強度は距離の2乗に反比例する)効率が低い、そのため、単位輸送量あたりの消費電力が従来型に比べ大きい。
車輛以外の鉄道関連システム
リニアモータ方式貨車加減速装置 - (日本の貨車操車場の記事も参照)1974年9月に運用開始[2]。貨物列車などの組成・入換えにコンピュータ化された武蔵野、北上、新南陽、郡山、塩浜、高崎の各操車場で使用されていた[3][信頼性要検証]。保守車両として国鉄ヤ250形貨車があった。リニアモーター車輛でもいわゆる台車でもなく、通常のレールの内側に設置された専用のレールの上を移動しながら貨車を捕捉して加減速の後に突放あるいは停止させる装置である[注 4]。
鉄道総研「集電試験装置」[4] - リニアモータ駆動により、実車のパンタグラフ等の集電周辺装置が取り付けられた台車を、高速(最高速度200 km/h程度)で走行させ、それら集電関係の高速移動時の問題[注 5]等の試験・調査等をおこなう装置。
世界での実用化例
LIMRV - 車載のガスタービン発電機で駆動するリニア誘導モータを備えた試作車両
ボンバルディア・イノヴィア・メトロ(英語版)(ボンバルディア・アドバンスト・ラピッド・トランジット) - ボンバルディア社が開発した鉄輪式リニアモーターカー。第3軌条から集電する。
アメリカ
デトロイトのピープルムーバ(新交通システム)
ニューヨークの「エアトレインJFK」
カナダ
トロントの「スカーバラ RT line」
バンクーバー市のスカイトレイン エキスポ・ライン - 1985年開業
バンクーバー市のスカイトレイン ミレニアム・ライン - 2002年開業
その他、香港の地下鉄などでも採用計画があるとされる。
中国
広州市の広州地下鉄4号線 - 2005年開業
広州市の広州地下鉄5号線 - 2009年開業
広州市の広州地下鉄6号線 - 2013年開業
北京市の北京地下鉄首都機場線 - 2008年開業
日本「日本の地下鉄#ミニ地下鉄」も参照
ALPS[注 6] - ゴムタイヤ支持・リニアサイリスタモーター駆動の高速鉄道システムとして、鉄道技術研究所で研究された[5]。
リムトレン - 1988年のさいたま博覧会(3月19日 - 5月29日)で日本モノレールが出資し、鉄車輪(4輪)のボギー台車2組を取付け2両編成による展示走行を行った。製作は三菱重工。
Osaka Metro長堀鶴見緑地線 - 1990年に日本初の常設実用線として開業。使用車両の70系は、この年のローレル賞を受賞した。導入の経緯として、(大阪市高速電気軌道〈Osaka Metro〉の前身の)大阪市交通局長であった今岡鶴吉は、御堂筋線の混雑軽減のために四つ橋線を開通させたが「余り使ってもらえない」ため、現在の御堂筋の幅員にもう一本地下鉄を入れるために小型地下鉄を検討したことが、長堀鶴見緑地線のリニアメトロ車両の開発に繋がったとしている[6]。
都営地下鉄大江戸線 - 1991年開業
神戸市営地下鉄海岸線 - 2001年開業
福岡市地下鉄七隈線 - 2005年開業
Osaka Metro今里筋線 - 2006年開業
横浜市営地下鉄グリーンライン - 2008年開業
仙台市地下鉄東西線 - 2015年開業
ベネズエラ
TELMAGV - ベネズエラのアンデス大学(英語版)で開発中のリニアモーター式交通機関リニアリラクタンスモーターを推進に使用する。
マレーシア
クアラルンプールの「RapidKL Kelana Jaya Line」
クアラルンプールの「Bandar Utama-Klang line」
駆動方式の種類詳細は「磁気浮上式鉄道#リニアモータの種類」を参照