リトアニア語
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ただしこのアクセントは短すぎて聞き取りにくいながらも後述する下降アクセントか上昇アクセントが実態となっており、短音調と呼称するのは便宜的な側面が強い[6]

下降アクセント(tvirtaprad? priegaid?、直訳:「堅い始めの音調」): 長母音や二重母音に置かれる(例: au)。 ただし混合二重母音in, im, ir, il, un, um, ur, ulの下降アクセントを表す際には、例外的に最初の母音をそれぞれi, uで表す(具体例: 誤: ilgas, 正: ilgas)。

上昇アクセント (tvirtagal? priegaid?、直訳:「堅い終わりの音調」): 下降アクセントと同様、長母音および二重母音に置かれる(例: a?)。

アクセント・タイプ

リトアニア語では名詞や形容詞が格変化する際にアクセントの位置や種類が変化する場合と変化しない場合とが存在する。この規則性を捉えるための概念が、アクセント・タイプ(kir?iuot? (lt) )である。このアクセントの型は、大まかに4種類のものに分けられる。基本的には1つの語に対し1種類のアクセント・タイプが設定されているのが原則であるが、中にはauksas 〈〉の様に(1)と(3)の2通りの型を持つ語も存在する。以下では、名詞とともに各アクセント・タイプの特徴を説明した後、形容詞のものについても触れていく事とする。
名詞
タイプ (1)

どの格変化でもアクセントの位置が変化しない。2音節の名詞であれば、最初の音節に必ず下降アクセントが来る(語例: duona 〈パン〉, kl??tis 〈穀倉〉)。しかし、3音節以上の語であれば語末から3番目の音節以前に短アクセントや上昇アクセントが現れる場合もある(語例: adata 〈針〉, pikt?ol? 〈雑草〉)。なお、語尾が-aである名詞はこの(1)の型のもの以外は全て主格単数形の語尾に必ず短アクセントが来る。
タイプ (2)

大部分の格変化において語末から2番目の音節に短アクセントもしくは上昇アクセントが来る。この型の名詞のいずれにも共通する要素は、対格複数形および具格単数形において語尾に短アクセントが現れるという点である(語例: r??stas 〈丸太〉, varis 〈銅〉, ranka 〈手〉)。
タイプ (3)

上記2つの型に比べ、格変化した際に語尾にアクセントが現れる割合が多い。2音節の語であれば語頭に現れるのは下降アクセントである(語例: kovasミヤマガラス〉、〈三月〉, arkl?s 〈馬〉, galva 〈頭〉, gerkl?? 〈喉〉, ?irdis 〈心臓〉)。また、3音節の名詞には(3a)と(3b)の区別が存在する。異なるのは、語頭にアクセントが来る場合には前者が下降アクセントを持ち、後者は短アクセントないし上昇アクセントを持つという点である(語例: augalas (3a) 〈植物〉; amatas (3b) 〈手工芸〉)。(3a)および(3b)型名詞の中には主格単数形は2音節であるものの、格変化すると3音節に変わるものも含まれる(語例: vanduo (3a) 〈水〉; vaidmuo (3b) 〈役割〉, sesuo (3b) 〈姉妹〉)。
タイプ (4)

(3)と同様、格変化形の語尾にアクセントが現れる割合が多い型であるが、更に(2)と同じく対格複数形と具格単数形の語尾には短アクセントが来る。2音節の語であれば、語頭に現れるのは短アクセントもしくは上昇アクセントである(語例: var?das 〈名〉, spygl?s 〈針葉樹の葉〉, ?aka 〈枝〉, pilis 〈城〉)。
形容詞

音節の数や語尾の形により、現れるアクセント・タイプの種類が異なってくる。
2音節

2音節の形容詞のアクセント・タイプは基本的に(3)および(4)の2種類に大別される(語例: ?altas (3) 〈冷たい〉, r?g?tus (3) 〈すっぱい〉; ?il?tas (4) 〈温かい〉, gudrus (4) 〈利口な〉)。なお、語末が-usで且つ(3)に属する形容詞の中には、(1)の型で読まれるものも存在する(語例: ai?kus 〈明らかな〉, lygus 〈平等な〉)。
3音節以上

3音節以上の形容詞には(1)の型に属するものが多い(語例: raudonas 〈赤い〉)。語尾に-ingasを持つ形容詞もその大半が(1)型である(語例: i?mintingas 〈賢い〉, nuodingas 〈有毒な〉)。-inisで終わる形容詞のアクセント・タイプは(1)か(2)である(語例: gele?inis (2) 〈鉄の〉)。しかし、3音節かつ-asで終わる形容詞には(3a)や(3b)に属するものが存在し、-usで終わるものには(4)の型に属するものが存在する(語例: ?vairus 〈様々な〉)。
文法

文法上の性の区別や7つのを持つことなどから、現代語の中ではインド・ヨーロッパ祖語に近い形式を残しているとされる。

リトアニア語の名詞および形容詞には (gimin?) の区別が存在する。名詞には男性名詞と女性名詞があり、中性名詞は存在しない。形容詞に関して言えば、名詞を修飾するものの性は名詞の性に一致し、名詞を修飾しないものは中性となる。

リトアニア語の (linksnis) には以下の7つがあり、インド・ヨーロッパ語族の中でも古い特徴を持つ。

主格 (vardininkas, nominatyvas) - 主語補語を表すときなどに用いられ、日本語助詞「が」の意味に近い。

属格 (kilmininkas, genityvas) - 所有や所属を表すときなどに用いられ、日本語の助詞「の」の意味に近い。また、かつてのインド・ヨーロッパ祖語奪格は、リトアニア語ではこの属格に吸収された[7]。そのため、元来は奪格で表していた物体からの分離を表す「?から」という意味も、前置詞とともにこの属格で表される。そのほか、否定文において直接目的語を表すときにも用いられる。

与格 (naudininkas, datyvas) - 間接目的語を表すときに用いられ、日本語の助詞「に」の意味に近い。

対格 (galininkas, akuzatyvas) - 肯定文において直接目的語を表すときに用いられ、日本語の助詞「を」の意味に近い。また時間を表すときにも用いられる。

具格 (?nagininkas, instrumentalis) - 手段などを表すときに用いられ、日本語の助詞「で」の意味に近い。

位格 (vietininkas, lokatyvas) - 場所を表すときに用いられ、日本語の「において」の意味に近い。

呼格 (?auksmininkas, vokatyvas) - 人や動物に対する呼びかけのときに用いられる。

以上の日本語訳はあくまで目安にすぎず、実際は単語や文脈によって異なる日本語に訳される。

また、古いリトアニア語には入格 (iliatyvas) 、接格 (adesyvas) 、向格 (aliatyvas) も存在していた。現代でも方言などで見られる。
戦間期リトアニアで発行されていた2リタス硬貨。「DU LITU」と双数形で表記されている(現在の標準語では複数形で「du litai」)。

に関して言えば、現在の標準語では1つの物を表すときに単数形 (vienaskaita) が、2つ以上の物を表すときに複数形 (daugiskaita) が用いられる。ただし、不可算名詞については単数形もしくは複数形のみしか存在しない。また、可算名詞であっても単数形が存在しない名詞もある(例えば、metai(「年」)、durys(「ドア」)、d?insai(「ジーンズ」)、など)。

なお、かつてのリトアニア語には単数形や複数形のほかに2つの物を表す双数形 (dviskaita) も存在していた。現在では方言などでは双数形が残っている地域もあるが、(代名詞以外では)[8] 標準語では一般には用いられない。
代名詞

リトアニア語の代名詞 (?vardis) には以下のものがある。
人称代名詞

リトアニア語における人称代名詞 (asmeninis ?vardis) は、以下の通りに格変化する。2人称を表す代名詞のうち、tu は単数で親称(「君」)、j?s は単数で敬称(「あなた」)もしくは複数(「君たち」、「あなた方」)を表す。また、3人称を表す代名詞は、「彼」「彼女」「彼ら」「彼女ら」といった人に関するもののほか、物に関しても用いられ、「それ」「それら」とも訳される。

人称代名詞の格変化単数複数再帰
代名詞

1人称2人称3人称1人称2人称3人称
男性女性男性女性
主格a?tujis(ai)ji(nai)mesj?sjiejos(なし)
属格man?stav?sjojosm?s?j?s?j?j?sav?s
与格mantaujamjaimumsjumsjiemsjomssau
対格manetavej?j?musjusjuosjassave
具格manimitavimijuojamumisjumisjaisjomissavimi
位格manyjetavyjejamejojemumysejumysejuosejosesavyje
日本語私君彼/
それ彼女/
それ私たちあなた/
君たち/
あなた方彼ら/
それら彼女ら/
それら自分

なお、「あなたの(もの)」「彼女の(もの)」といった所有代名詞所有限定詞)は、1人称単数、2人称単数および再帰代名詞を除いて人称代名詞の属格と同じ形となる。1人称単数、2人称単数、再帰代名詞はそれぞれ mano 、 tavo 、 savo である。日本語には「…の」あるいは「…のもの」と訳され、英語の my にあたる語と mine にあたる語を区別しない(リトアニア語ではいずれも mano )。区別する場合にはmanas, mana '私の', tavas, tava 'あなたの', savas, sava '自分の'という形容詞的変化をする語(ただし稀用)、あるいはmani?kis, mani?k? '私の親族、友人', tavi?kis, tavi?k? 'あなたの親族、友人', m?si?kis, m?si?k?, '私達の親族、友人', j?si?kis, j?si?k? 'あなた達の親族、友人' という単語を使うことがある。[9]

所有代名詞単数複数再帰
代名詞

1人称2人称3人称1人称2人称3人称
男性女性男性女性
所有
代名詞
manotavojojosm?s?j?s?j?j?savo

また、2人を表す場合、「2」を表す数詞が組み合わされた別の人称代名詞で用いられることがある。これを双数 (dviskaita) の人称代名詞と解することもできる。格変化は以下のとおりとなる。

双数の人称代名詞の格変化1人称2人称3人称


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