リットル
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1879年国際度量衡委員会 (CIPM) はリットルの定義および小文字の l(小文字のエル)をその記号とすることを採択した。

1901年、第3回国際度量衡総会 (CGPM) は、「1. 高精度測定のための体積の単位は,最大密度[注釈 2]で,標準大気圧の下にある1キログラムの純水によって占められる体積であり,その体積を「リットル」と称する.」と声明した[14]

キログラムの本来の定義によれば、これは1立方デシメートルと等しいはずである。しかし、実際にはキログラムの定義に使用されているキログラム原器が本来の定義よりも重くできてしまったため、1リットルは1立方デシメートルよりも少しだけ大きいことになった。そこで、国際度量衡局 (BIPM) が、1キログラムの水の体積を精密に繰り返して測定した。実際は1立方デシメートルの純水の質量を測定した。しかし条件を揃えたつもりでも、測定のたびに1ミリグラム台の差が出てしまった。先のリットルの定義では、最大密度であることと標準大気圧下であることを規定しているが、水の密度には他にも多数の条件が関わっており、それを全て揃えるのは非常に難しいためである。

測定者測定値 L/dm3
ギヨーム1.000029
シャピュイユ1.000027
レピネーラ1.000028

結局、1907年BIPMは表の3つの測定結果を示した上で「BIPMに課せられた水の1キログラムの体積を決定する仕事は、最高の精度をもって達せられた」と報告し、いわば「匙を投げた」状態となった。

そのため、各国で採用する値が異なるという事態を招いた。例えば日本では 1.000028 dm3 を採用し、アメリカでは 1.000029 dm3 を採用していた。このため、1960年の第11回CGPMは、CIPMにこの問題を検討するよう要請した[15]

この検討の結果、1964年の第12回CGPMは、1901年の定義を廃止して、メートルに基づいた元の定義の1リットル ≡ 1立方デシメートルに戻し、リットルは立方デシメートル (dm3) の別名称であることを声明すると同時に、高精度の体積測定の結果を表すためにはリットルを使用しないよう勧告した[16]

定義の変更による混乱を避けるために、新しい定義のリットルには「新リットル」という名称が与えられ、(旧)リットルと区別する必要がある場合に使われたが、現在は単にリットルと呼ぶ。
記号のゆれ

リットルの単位記号国際単位系 (SI) の規定では、大文字・立体の L または小文字・立体の l が正しい。日本の計量法上も同じである[17]
l から L へ

当初、リットルを表す単位記号は小文字・立体の l だけであった。SIにおいては、人名に由来する単位については記号の一文字目を大文字にし、それ以外の単位は全て小文字で書くことになっていたからである。しかし、多くのラテン文字を由来とする文字を使用する国では、筆記体アラビア数字の 1 を単に垂直の線のみで示すのが一般的であり、これとラテン文字の小文字の l とは酷似している[注釈 3]ため、誤認されることがあった。

1979年、第16回CGPMは、小文字・立体の l 以外に大文字・立体の L もリットルの新たな単位記号として用いることを採択した。また、将来この2つのうちのどちらか1つのみを正式なものとして選択されるべきであると表明されたが[18]、1990年の会議ではまだその時期ではないとされた[19]

したがって、現在でも l と L のどちらを用いても正しいが、日本では産業技術総合研究所が、大文字・立体の L を使用することを推奨している[20]。法令においても例えば農林水産省の「飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令」は、「L」を用いることを規定している[21]

一方、アメリカ標準技術局 (NIST) は、SP811において、アメリカ合衆国では大文字 L を使用すると規定している[22]。このためSI文書のNISTバージョンであるSP330においてもリットルの記号として L のみを掲げている[23]。なお、合衆国政府印刷局のStyle Manualにおいても、大文字 L を使用すると規定している[24]

このような事情から、現在では日本においても、記号 L の使用が優勢となっている。
記号の由来についての冗談

リットルに大文字「L」を用いるのは、その由来がクロード・リットル (Claude Emile Jean-Baptiste Litre) という人名によるものである、という冗談をケネス・ウールナー (Kenneth Woolner) が1978年のエイプリル・フールのジョークとして教師向けの化学のニュースレターに載せ[25]、それが1980年に国際純正・応用化学連合 (IUPAC) の雑誌 Chemistry International[26] に事実として記載され、同雑誌の次号において撤回されるという事件があった[27]。詳細はクロード・リットルを参照のこと。
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リットルの単位記号として、小文字の l の活字体ではなく小文字・筆記体・立体の ? (U+2113) が日本をはじめとするいくつかの国で用いられることがある。日本の初等および中等教育でも ? を用いるように教えていた。しかし、前記の通り、国際度量衡局 (BIPM)、国際標準化機構 (ISO) やその他の国際標準機関においても、日本の計量法体系においても、この記号は認められていない。

また、筆記体のエルのほか、中学高校の教科書では斜体字のエル l {\displaystyle l} を用いているものもあったが、計量単位立体で書き、斜体字は物理量の変数を表すことになっているため、単位の取扱いとしては誤りである。このため2006年度の教科書検定では、高校物理IIおよび高校化学IIの教科書では立体の L に表記を変更する措置がとられた。この結果、2012年現在、ほとんどの高校の教科書で立体の L や l が用いられており、? の表記はほぼ使われていない。

小学校の教科書においても、2011年度からは、L が使用されている。2009年6月の小学校学習指導要領解説 算数編では、リットルの単位記号として小文字の「l」が用いられていたが[28]、2011年の教科書検定から、単位記号は、大文字の「L」を使用するように検定意見が付き、各教科書とも、L を使用し始めた[29][30][31][32]。これは、教科用図書検定基準が改定され、計量単位の記号については、「SIと併用される単位」についても、SI文書の表記によることとされたためである[33][34]

現在では、日本の一般的な小売の商品の印刷面やスーパーマーケットなどでの表記でも、大文字立体の L が多く用いられるようになってきている。ただし、2019年時点でも店頭における商品のパッケージ上の記述は統一されていないため、小学校の教科書では、Lとは異なる記号が使われていることに注意を促しているものがある[35]

縦書き表記では、立体の l を使用することはほとんどなく、L が使用されることもまれで、もっぱら ? が使用されるか、SI接頭語の記号 + ?(m? 等)を縦中横にしたり、㍑ の形の組文字を使用することが多い。

文字コードでは、2000年に規格化された文字コード規格のJIS X 0213は、リットルを表す記号として面区点位置1-3-63に ? を追加採用した。ただし、この図形文字の追加は、リットルの記号として L や l の使用の制限を意図するものではないとしている[36]

Unicodeでは U+2113 に ? を SCRIPT SMALL L として liter (traditional symbol) の説明つきでリットル用の記号としてコードが割り当てられており[37]、数学用に使用される筆記体の l である U+1D4C1, 𝓁, MATHEMATICAL SCRIPT SMALL L[38] とは区別して定めている。
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