リチャード・セイラー
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「人はしばしば、ひどい選択をしてしまった挙句に、あとでひどく後悔するものだ!〔…〕このようなことが起きてしまう理由は、私たち人間は誰でも、習慣化したバイアスという大きな溝に落ちやすいからであり、そのせいで教育、家計、健康管理、譲渡抵当、クレジットカード、幸福、そしてこの地球の問題に至るまで、たびたびひどい失敗に陥りがちなのである」。同著では、「選択の建築士(choice architect)」という概念が提唱されている。題名のNudge(ナッジ)とは、がみがみ言う(nag、ナッグ)よりもで軽く突く(nudge、ナッジ)ようなちょっとした後押しの方が、人の行動を変え良い結果に繋がるという理論に依る[3]
その他の著作

セイラーが経済学界において注目を集めたのは、1987年から1990年にかけて『Journal of Economic Perspectives』に連載を続けたコラム『Anomalies』によってであった。このコラムは、伝統的なミクロ経済学理論の定説に反するような経済行動の具体例を紹介するものである[4]

最近書かれたある論文にて[5]、セイラーと彼の共同研究者は人気テレビ番組『Deal or No Deal』の出演者が下した選択を分析し、経路依存的なリスク回避性向に関する行動主義的な説明を支持する議論を行っている。また、イギリスのゲーム番組『Golden Balls』における協力行動についても分析を行っている[6]
その他の活動

『New York Times News Service』のコラムニストを務めるセイラーは、アメリカ合衆国の金融危機への解決案を連載し始めた。最初のコラムタイトルは、「ラジオ局周波数の一部を売却することでアメリカ合衆国の赤字を削減しうる(Selling parts of the radio spectrum could help pare US deficit)」。セイラーは同論考で、FCC(連邦通信委員会)を改革し、テレビ周波数チャンネルを無線技術向上のために使用できるようにして、コスト削減と米国政府の歳入増加を図るべきだ、というトーマス・ハズリットのアイデアに言及している[7]

セイラーはアセットマネジメント会社「Fuller & Thaler Asset Management」の創立者でもある[8]。投資家集団は授かり効果、損失回避、現状維持バイアスといった認知バイアスを利用することができる、というのが同社の主張である。2004年?2005年トムソン・ロイター引用栄誉賞受賞[9]

セイラーは2015年上映の映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』に本人役としてカメオ出演しており[10]、セレーナ・ゴメスと共に熱い手の誤謬(hot hand fallacy)について解説している。
著作
単著・共著

Thaler, Richard H. 1992. The Winner's Curse: Paradoxes and Anomalies of Economic Life. Princeton: Princeton University Press.
ISBN 0-691-01934-7.篠原勝訳『市場と感情の経済学――「勝者の呪い」はなぜ起こるのか』ダイヤモンド社、1998年/〔改題新版〕『セイラー教授の行動経済学入門』ダイヤモンド社、2007年

Thaler, Richard H. 1993. Advances in Behavioral Finance. New York: Russell Sage Foundation. ISBN 0-87154-844-5.

Thaler, Richard H. 1994. Quasi Rational Economics. New York: Russell Sage Foundation. ISBN 0-87154-847-X.

Thaler, Richard H. 2005. Advances in Behavioral Finance, Volume II (Roundtable Series in Behavioral Economics). Princeton: Princeton University Press. ISBN 0-691-12175-3.

Thaler, Richard H., and Cass Sunstein. 2009 (updated edition). Nudge: Improving Decisions About Health, Wealth, and Happiness. New York: Penguin. ISBN 0-14-311526-X.キャス・サンスティーン共著、遠藤真美訳『実践 行動経済学』日経BP社、2009年

Thaler, Richard H. 2015. Misbehaving: The Making of Behavioral Economics. New York: W. W. Norton & Company. ISBN 978-0-393-08094-0.遠藤真美訳『行動経済学の逆襲』早川書房、2016年

関連項目

心の会計
(英語版)

ナイーブな分散化

リバタリアン的パターナリズム(英語版)

脚注^ “ ⇒行動経済学の本質、それは「にんげんだもの」にあった! リチャード・セイラー米シカゴ大学教授が語る新著と「相田みつを」” (2009年10月6日). 2017年11月26日閲覧。
^ David Orrell's Economyths, page 123
^ “ノーベル経済学賞のセイラー教授が提唱する「ナッジ」が重要な理由”. Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン) (2017年10月10日). 2023年12月11日閲覧。


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