リズ・トラス
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その2日後である9月8日に女王エリザベス2世が崩御したため、女王によって任命された最後の首相となった。

経済政策の失敗により金融市場が混乱を招き、その影響が政権内部にも波及して求心力が低下した結果、10月20日、就任からわずか1か月半で党首退任を表明。首相在任期間はイギリス史上最短となった[1][注 1][3][4]
来歴
生い立ち

1975年7月26日、オックスフォード生まれ。父は後にリーズ大学教授となる数学者のジョン・トラス。母は看護師、教師、元核軍縮運動会員のプリシラ・メアリー・トラス。育った家庭は左翼的で、リズの言によれば、両親はともに「労働党左派(British Labour Left)」であった。後に、トラスが保守党から出馬した際には両親から強く反対され、最終的に母の同意は得たものの、父は終始否定的であった。

4歳でスコットランドに引っ越し、スコットランドのペイズリーのウェスト小学校(West Primary School)に通う。その後、リーズ北東部の総合学校のラウンドヘイ校(Roundhay School)に通っている。また、カナダに一年間居住した。1996年、オックスフォード大学マートンカレッジPPE(哲学・政治学・経済学)専攻で卒業。
民間企業での経歴

オックスフォード大学卒業後はロイヤル・ダッチ・シェルに入社。その後、ケーブル・アンド・ワイヤレス(C&W、現在はボーダフォン傘下)に転職し、同社在職中に管理会計士の資格を取得した。2回連続で選挙に敗れた後、2008年からシンクタンクで副局長を務めた。
政治経歴

1998年から2000年までルイシャム・デプトフォード保守協会の会長を務めた。2006年にグリニッジのロンドン特別区の評議員に選出された。

デーヴィッド・キャメロン党首下の保守党で国会議員候補者入りした。保守党政権になった2010年選挙でサウス・ウェスト・ノーフォーク選挙区から庶民院に選出され、国会議員となった。2012年には教育省政務次官に任命され、政務職に就いた。
環境大臣

2014年の内閣改造で環境・食糧・農村地域大臣に選ばれた。食品輸出拡大に注力したが、工業製品などと比べると市場規模の小さな食品について、特に国内消費されるチーズの2/3が輸入されていることは「恥辱」だと保守党大会で発言し、話題になった[5]。また、事業仕分けで自分の省を積極的に予算削減した[6]
司法大臣・財務省副大臣

2016年からのテリーザ・メイ内閣では司法大臣および大法官に任命されたが、野党からは司法知識の欠如を指摘された[7]。2017年の総選挙後は財務省副大臣に移った。2019年の党首選挙では立候補の可能性に言及していたが、最終的にはボリス・ジョンソンの支援に回った。
国際貿易大臣

ジョンソン内閣国際貿易大臣に就任。2019年9月に2度、トラスは、イエメン内戦で使用するためのサウジアラビアへの武器売却は違法だとした裁判所の命令に反して、国際貿易省が「うっかり」サウジアラビアへの軍事物資の出荷を許可したと発言し、批判された[8]。トラスは下院の武器輸出規制委員会で謝罪したが、野党議員は謝罪だけでは不十分だとし、法律を破ったとして即時辞任を求めた。

2020年には右翼的な経済研究所との公的記録を削除し、不透明さを批判された[9]

2020年9月、日本自由貿易協定で合意した。これは、イギリスがEUを離脱して以来最初に署名した主要な貿易協定であり、トラスは「歴史的瞬間」と評した。しかし、内容はほとんど既存のEUと日本の協定のコピーであり、ブレグジットの付加価値は全くなかったと批判された[10]

平等担当大臣として平等政策のスピーチをした際には、現在のイギリスは空間的格差を無視してファッショナブルな人種や性差別に重きを置きすぎていると指摘した[11]
外務大臣2021年11月30日、エストニアのエヴァ=マリア・リーメッツ外相と2022年2月17日、ウクライナのドミトロ・クレーバ外相と

2021年9月15日、第2次ジョンソン内閣の改造により保守党政権では初、イギリスでは2人目の女性外相に任命された。トラスは記者団に対し「国際的なイギリスの前向きで外向きのヴィジョンを推進していきたい」と語った[12]
ウクライナ危機

11月にEU・ベラルーシ国境難民危機が起きると[13]、ロシアに介入するよう呼びかけた。

2021年12月にウクライナ危機が起きると、いち早くロシア制裁に動いた[14]。また、ウクライナに防御兵器を提供していると発言した。2022年2月10日にはロシアのセルゲイ・ラブロフ外相と会談したが、互いに批判し合ったのみで成果は得られなかった。なお、この際ロシアの州をウクライナの州と混同する失態を演じている[15]

2月24日にウクライナ侵攻が始まると、BBCのインタビューにおいて、イギリス人のウクライナへの義勇兵を支援するかどうか尋ねられ、「絶対に」と答えた。しかし、後に他の保守派議員や野党から、そのような行動は1870年制定の法律の下では違法であると批判された[16]

4月11日、ロシア軍がマリウポリ市民への攻撃に化学物質を使用した可能性があるとの報告」があったとSNSで発信した。アゾフ大隊の戦闘員も同日、ロシア部隊が包囲したマリウポリで「ウクライナ軍と民間人に対して正体不明の毒物を使用した」と述べていた。また、ゼレンスキー大統領も懸念を示していた。しかし、こうした主張を裏付ける証拠は示されておらず、マリウポリ市長の補佐官と米国務省のプライス報道官は確認されていないと述べた[17][18]
EU担当国務相

2021年12月19日、ジョンソン政権の相次ぐ閣僚辞任の影響で[19]欧州連合離脱担当相を兼任[20]。5月17日、対EU通商協定(北アイルランド議定書(英語版))を変更する法案を発表した。EUはイギリスが法案可決に進むなら「あらゆる手段を使って対応する」と応戦し、緊張が高まった[21]
保守党党首選挙出馬詳細は「2022年7?9月イギリス保守党党首選挙」を参照

2022年7月10日、ボリス・ジョンソン首相の辞意表明を受け、トラスは保守党党首選挙に出馬[22]。議員投票では第4回目まで3位でペニー・モーダント外交政策担当相の後塵を拝していたが、最終の第5回目投票でモーダントを僅差で逆転して2位となり、リシ・スナク前財務相との決選投票に進んだ[23]。9月5日に結果が発表され、8万1326票を獲得し、6万399票にとどまったスナクを下し当選、第71代マーガレット・サッチャー、第76代テリーザ・メイに次ぐイギリス史上3人目の女性首相となることが決まった[24][25][26]


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