ランチェスターの法則
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すなわち Δ x = − α y Δ t {\displaystyle \Delta x=-\alpha y\Delta t} Δ y = − β x Δ t {\displaystyle \Delta y=-\beta x\Delta t}

であるので、近似的に微分方程式 d x d t = − α y {\displaystyle {\mathrm {d} x \over \mathrm {d} t}=-\alpha y} d y d t = − β x {\displaystyle {\mathrm {d} y \over \mathrm {d} t}=-\beta x}

が成立する佐藤84(p79)。これを解くことで二次法則を導くことができる。
実例

J.H.エンゲルE1954は二次法則に従って米軍と日本軍による硫黄島の戦いを解析した。ただし硫黄島の戦いでは、米軍の側には兵士の補給があったため、二次法則をそのまま適応することはできず、時刻tにおける米軍の補給p(t)を考慮した微分方程式 d x d t = − α y + p ( t ) {\displaystyle {\mathrm {d} x \over \mathrm {d} t}=-\alpha y+p(t)} d y d t = − β x {\displaystyle {\mathrm {d} y \over \mathrm {d} t}=-\beta x}

を解くことにより、この戦いを解析した佐藤84(p178)。

エンゲルは解析にあたり、補給p(t)としてこの戦いにおける実際の米軍のデータを用いた佐藤84(p183)。また硫黄島の戦いは開戦28日目に米軍がほぼ硫黄島を制圧したので、この28日間の実際の死傷者数からα、βを見積もった。この結果、実際の死傷者の時間変化を表すグラフと理論から導かれる死傷者数のグラフがわずかな誤差で一致することを確認できる佐藤84(p184-185)。

また以上のように見積もったα、βから導かれる交換比Eはおよそ E = 5.132 {\displaystyle E=5.132}

であり佐藤84(p184-185)、日本軍は不利な状況下にありながらも5倍もの交換比で善戦したことが分かる佐藤84(p184-185)。
クープマン分析

ランチェスターの二次法則によれば、交換比Eが1である場合、人数の少ない軍が人数の多い軍に勝つことはできない。しかしクープマンK1943はランチェスターの二次法則における仮定「戦闘には全員が参加する」を弱めることにより、もし人数の少ない軍が人数の多い軍を2つに分割することに成功すれば、人数が少ない軍が勝つことができる場合もあることをランチェスターの二次法則から導いた佐藤84(p84-87)。

なお、人数の少ない軍がこのような「分割戦略」を取って勝利できるのは二次法則の場合だけであり、戦闘が一次法則に従っている場合はこの戦略を取っても有利にはならない。
概要

二次法則において、人数の少ない軍Xが人数の多い軍Yに「分割戦略」で勝てるための条件は戦闘開始時におけるX、Yの人数 x 0 {\displaystyle x_{0}} 、 y 0 {\displaystyle y_{0}} が x 0 > y 0 2 ≈ 0.707 y 0 {\displaystyle x_{0}>{y_{0} \over {\sqrt {2}}}\approx 0.707y_{0}}

を満たす場合である(交換比Eが1を仮定)佐藤84(p84-87)。

この条件をみたす場合、Yは何らかの方法によりXを x t 0 2 {\displaystyle {x_{t_{0}} \over 2}} 人からなるサブグループ X ′ {\displaystyle X'} 、 X ″ {\displaystyle X''} に分割することに成功すれば、Yは

まず X ′ {\displaystyle X'} とのみ戦闘して X ′ {\displaystyle X'} を全滅し、

次に X ″ {\displaystyle X''} と戦闘して X ″ {\displaystyle X''} を全滅する

という戦略を取ることでXに勝つことができることをランチェスターの二次法則から導ける佐藤84(p84-87)。
導出

実際、Yと X ′ {\displaystyle X'} の戦闘に対してランチェスターの二次法則を適応すれば、 X ′ {\displaystyle X'} との戦闘が終了した時刻t1でのYの生存人数は y t 1 = y 0 2 − ( x 0 2 ) 2 {\displaystyle y_{t_{1}}={\sqrt {y_{0}{}^{2}-\left({x_{0} \over 2}\right)^{2}}}}

であり、 X ″ {\displaystyle X''} との戦闘が終了した時刻t2でのYの生存人数は y t 2 = y t 1 2 − ( x 0 2 ) 2 {\displaystyle y_{t_{2}}={\sqrt {y_{t_{1}}{}^{2}-\left({x_{0} \over 2}\right)^{2}}}} = y 0 2 − x 0 2 2 {\displaystyle ={\sqrt {y_{0}{}^{2}-{x_{0}{}^{2} \over 2}}}}


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