ラブ&ポップ
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テレビで再生した時に得た感触について庵野は「自分でも直接撮るから、好きなテイストやアングルが入ってくる」「VHSHi8より段違いで、テレビの深夜番組と同じくらいきれい」[1]「乾いている原作に合う」と感激し、小さいカメラでも庵野のイメージに相応するクオリティを出せることに可能性を感じての起用でもあった[2]

役者に渡して、役者視点の映像も撮ることができた[1]。三輪に至っては庵野の「裕美の主観で撮りたい」という意向で、三輪がヘルメットを被り、その上にテープでビデオカメラを固定して撮影した[3]

素材が足りない時に、メイキングビデオの為に撮影していたカンパニー松尾の撮った素材を本編に流用した[1]

素材の確認も何回もできるが、庵野はチェックの間に制作現場の作業が止まるのを危惧して「もうノイズが入っていたら『ノイズが入っていた』ということにしよう。それで使えなくなる作品じゃないから」「目的のカットが映ってなかったら、そういうものです。映画の神様が『そのカットはいらない』という事なので、それはそれとして諦めましょう」と周囲に説いて、敢えて確認しなかった[1]

エンドロールのみ、35ミリフィルムで撮影されている[6]

メインとなる女子高生役を撮影する際は、カメラの前に置いてその場で自由に演技をしてもらい、欲しい部分だけを切り取って編集した。演技指導は作りこみすぎずにリアリティを持たせるために、庵野は「台本は無視しちゃっていい。この言葉が入っていれば、後は自分のしっくり来る言い回しに変えていいよ」と指示し、制御はほとんど行わない即興劇の体裁をとった[7]。事前に作られた動き・台詞を嫌った庵野は、演技の説明はキャストから聞かれない限りほとんど行わず、三輪の神奈川県方言もそのまま採用された[3]

特殊なアングルからのカットや、「新世紀エヴァンゲリオン」にも見られるようなテロップの使用など、庵野秀明らしさも少なからず含まれる映像となっているが、ストーリー的にはほぼ原作に忠実に作られている。

当時、一般的にはまだ無名だった仲間由紀恵のビキニ試着シーンが、短時間ながらある。エンディングは当初、メインの女子高生役の4人が宮古島の海で遊ぶシーンとなる予定で、実際に撮影もしていたが、主演・三輪明日美の歌う主題歌「あの素晴しい愛をもう一度」をバックに4人が並んで渋谷川をひたすら歩き続けるという象徴的な演出に変更された。

主人公の吉井裕美を演じた三輪明日美と、裕美の姉役を演じた三輪ひとみは実の姉妹である。
映画あらすじ

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キャスト

三輪明日美 - 吉井裕美

希良梨 - 野田知佐

工藤浩乃 - 横井奈緒

仲間由紀恵 - 高森千恵子

三輪ひとみ - 裕美の姉

平田満 - カケガワ

吹越満 - ヨシムラ

モロ師岡 - ヤザキ

手塚とおる - ウエハラ

渡辺いっけい - コバヤシ

浅野忠信 - キャプテンEO

三石琴乃 - ラジオのパーソナリティ(声の出演)

石田彰 - ヨシオ(声の出演)

林原めぐみ - 伝言ダイアルの案内音声(声の出演)

岡田奈々 - 裕美の母親

森本レオ - 裕美の父親

河瀬直美 - 裕美のナレーション(声の出演)

LL BROTHERS(矢間敬視・矢間晶也) - ダンスインストラクター

岡安泰樹 - オダギリ

島田律子 - アオキ

主浜はるみ - イシオカ

大沢健 - サラリーマン風の男(友情出演)

鳥肌実 - 街頭で演説する男

元気安 - レンタルビデオ店の店員

スタッフ

監督:
庵野秀明(新人)

原作:村上龍

脚本:薩川昭夫

撮影:柴主高秀

録音:橋本泰夫

助監督:杉野剛

監督助手:蔵方政俊、大塚雅彦(友情参加)、黒川礼人、神谷誠(友情特殊助監督)

友情准監督(VISUAL WATER ARTIST II):摩砂雪

音楽監督:光宗信吉

主題歌:三輪明日美あの素晴しい愛をもう一度

音楽協力:キングレコード

編集:奥田浩史

音響効果:東洋音響カモメ伊藤進一、小島彩)

友情特殊技術:樋口真嗣

デジタルスーパーバイザー:古賀信明(SpFX STUDIO Inc.)

デジタル操演:尾上克郎

メイキング撮影担当:カンパニー松尾バクシーシ山下

特報:カンパニー松尾、佐藤敦紀

ダンサープロデュース:佐久間浩之

ダンス振り付け:LL BROTHERS

手話指導:南玲子

ポスプロ・現像:IMAGICA

スタジオ:日活撮影所

プロデュース:鶴賀谷公彦、木村利明

製作統括:大月俊倫

製作者:南里幸(シネバザール)

製作協力:シネバザール

製作・配給:ラブ&ポップ製作機構

受賞

第20回
ヨコハマ映画祭ベスト10第7位

第20回ヨコハマ映画祭新人監督賞:庵野秀明

第20回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞:三輪明日美

第8回日本映画プロフェッショナル大賞ベスト10第3位

第72回キネマ旬報ベスト・テン日本映画ベスト・テン第14位

評価

原作者の村上は「作り物ということを意識しながら、ドキュメンタリーの手法で上手く撮っています。テレビのワイドショーが援助交際する女子高生と男を撮る様なカメラワークではなく、演技力も手伝って、ドキュメンタリーを見ている様だった。本当はもちろん作り物だけど、よく言われる『自然な演技』は僕は『そんなものはない』と思う。演技は全て人工的な物だから。その際、やっぱり技術の高い人達が上手い演技をするから、逆に『作り物だ』という意識で撮ってても、ドキュメンタリーに見えたと思う」「レンタルビデオでのやり取りはパーフェクトだった」と絶賛している[2]

松蔭浩之は「あんなに憂鬱な映画って中々ない」と驚愕した[1]
脚注^ a b c d e f g 美術出版社刊「美術手帖」2001年4月号「[対談] 庵野秀明×松蔭浩之 視線の構造学と色彩の論理額」pp.19-20より。
^ a b c d 幻冬舎刊「シナリオ ラブ&ポップ」薩川昭夫庵野秀明著pp.198-204より。


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