ラファエロ・サンティ
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ヴァザーリの伝記では、父ジョヴァンニが「母親の嘆きを振り切って」幼いラファエロを、ウンブリア派の画家ペルジーノの工房に弟子入りさせたとなっている。ただし、この弟子入りの記録についてはヴァザーリの『画家・彫刻家・建築家列伝』が唯一のものである。母親が存命時であればラファエロは最年長だと仮定しても8歳となり、弟子入りするには8歳という年齢はあまりにも若すぎるのではないかとして、ヴァザーリの記述を疑問視する研究者もいる[12]。他に、1495年からウルビーノ宮廷画家となったティモテオ・ヴィティ (en:Timoteo Viti) のもとで、ある程度画家としての修業を積んだのではないかとする説もある[13]。いずれにせよ、ラファエロが1500年ごろにペルジーノのもとで少なくとも助手の立場にあったということで、現代の美術史家の見解はほぼ一致している。当時のペルジーノはペルージャフィレンツェに工房を持っており、おそらく他にも2箇所で常設の小工房を経営していたと考えられている[14]聖母の婚礼』(1504年
ブレラ美術館所蔵。
ラファエロがキャリア初期に描いた祭壇画の中でもっとも洗練された作品といわれる。

ラファエロの初期作品におけるペルジーノの影響は明らかで「おそらくはラファエロほどに師(ペルジーノ)の教えを吸収できる才能を持った弟子はいなかった」とされている[15]。十代のラファエロにペルジーノは助手として、ペルージアのコッレージョ・デル・カンビオの「審問の間」のフレスコ装飾に助手として参加させるなど、ラファエロの画風の形成に大きな役割を果たした[16]。ヴァザーリの伝記ではこの時期のラファエロとペルジーノの作品を区別することは不可能だとしているが、現代の美術史家たちはペルジーノやその工房の作品からラファエロが手掛けた箇所を判別するのは容易だと考えている。作風はともかくとして、顔料の厚塗り手法、油性ワニス展色剤の使用、衣服の陰影表現などの技法は酷似しているが、人物の肉体表現についてはペルジーノがはるかに繊弱であるとしているのである。ペルジーノの作品もラファエロの作品も、ワニスに混ぜた過度の樹脂が作品表面のひび割れ(クラクリュール)の原因となっていることが多い[17]。ラファエロが徒弟期間を終えて「マスター」として登録されたのは1501年のことである。

記録に残るラファエロの最初期の作品は、ペルージャとウルビーノの中間にある町チッタ・ディ・カステッロのサン・タゴスティーノ教会の礼拝堂用に描いた『バロンチの祭壇画』 (en:Baronci altarpiece) である。1500年に注文を受け1501年に完成したこの作品は、現在では数点の断片と下絵が残るのみとなっている[18]。その後の数年間に各地の教会からの依頼で絵画を制作しており、ナショナル・ギャラリー所蔵の『モンドの磔刑』(1502年 - 1503年)、ブレラ美術館所蔵の『聖母の婚礼』(1504年)、ヴァチカン美術館所蔵の『聖母戴冠の祭壇画』(1502年 - 1504年[19])などが現存している。

ラファエロはこの時期にフィレンツェをよく訪れており、ペルジーノの影響がいくらか見られるものの、独自作風で描いた大規模な作品がフィレンツェに残っている。また、美しい小作品 (en:Cabinet painting) も多数制作している。それらの小作品の多くはおそらくウルビーノ宮廷の美術愛好家からの注文によるもので、コンデ美術館所蔵の『三美神』(1504年 - 1505年)、ルーヴル美術館所蔵の『聖ミカエルと竜』(1504年 - 1505年ごろ)などが有名な作品となっているほか、聖母マリアや聖母子をモチーフとした作品や肖像画もこの時期から描き始めている[20]。1502年にラファエロは、ペルジーノの弟子で「ラファエロの友人で、極めて優れたデッサンの技量を持つ芸術家」ピントゥリッキオの招きでシエーナを訪れている。このときのシエーナ訪問の理由は、ピントゥリッキオが手がける作品のデザインの手助けをラファエロに求めたためで、現在シエーナ大聖堂のピッコロミーニ図書館に残るピントゥリッキオのフレスコ壁画のデザインだった可能性が高い[21]。ラファエロは画家としてのキャリア初期から、絵画制作注文を多く受けていた。

モンドの磔刑』(1502年 - 1503年
ナショナル・ギャラリー所蔵。
ペルジーノの作風に酷似している。

聖母戴冠の祭壇画』(1502年 - 1504年
ヴァチカン美術館所蔵。

聖ミカエルと竜』(1504年 - 1505年
ルーヴル美術館所蔵。

聖ゲオルギオスと竜』(1505年 - 1506年
ルーヴル美術館所蔵。
29 x 21 cmの小作品。

フィレンツェ絵画からの影響ベルヴェデーレの聖母』(1506年頃)
美術史美術館所蔵。


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