ラドン=ニコディムの定理
[Wikipedia|▼Menu]
すなわち、ある可測函数  f  に対して ν ( A ) = ∫ A f d μ {\displaystyle \nu (A)=\int _{A}f\,d\mu }

がすべてのボレル集合について成立するものとする。A を単集合 A = {a} とし、上述の等式を使うことで 0 = f ( a ) {\displaystyle 0=f(a)}

がすべての実数 a に対して成り立つ。このことは函数  f  およびルベーグ測度 ν がゼロであることを意味し、矛盾である。
証明

この節では、ラドン=ニコディムの定理の測度論的な証明を紹介する。ヒルベルト空間の手法を使った函数解析的な証明も、ジョン・フォン・ノイマンによって与えられている。

証明のアイデアは、有限測度 μ および ν に対して  f dμ ? dν を満たす函数  f  を考えることである。単調収束定理の下で、そのようなすべての函数の上限はラドン=ニコディム微分を与える。有限測度に関する技術的な事実より、μ の残りの部分は ν に関して特異的であることが従う。そのような結果が有限測度に対して得られれば、σ-有限測度や符号付測度、複素測度に対しても自然な形で拡張される。詳細は下記の通りである。
有限測度の場合

はじめに μ と ν のいずれも有限値の非負測度である場合を考える。F を、次の関係式を満たすようなそれらの可測函数  f  : X → [0, ∞) の集合とする: ∀ A ∈ Σ : ∫ A f d μ ≤ ν ( A ) . {\displaystyle \forall A\in \Sigma :\qquad \int _{A}f\,d\mu \leq \nu (A).}

少なくともゼロ函数を含むため F ≠ ? である。今  f1,  f2 ∈ F とし、A を任意の可測集合とし、次を定義する: A 1 = { x ∈ A : f 1 ( x ) > f 2 ( x ) } , A 2 = { x ∈ A : f 2 ( x ) ≥ f 1 ( x ) } , {\displaystyle {\begin{aligned}A_{1}&=\left\{x\in A:f_{1}(x)>f_{2}(x)\right\},\\A_{2}&=\left\{x\in A:f_{2}(x)\geq f_{1}(x)\right\},\end{aligned}}}

このとき、 ∫ A max { f 1 , f 2 } d μ = ∫ A 1 f 1 d μ + ∫ A 2 f 2 d μ ≤ ν ( A 1 ) + ν ( A 2 ) = ν ( A ) {\displaystyle \int _{A}\max\{f_{1},f_{2}\}\,d\mu =\int _{A_{1}}f_{1}\,d\mu +\int _{A_{2}}f_{2}\,d\mu \leq \nu (A_{1})+\nu (A_{2})=\nu (A)}

が成り立ち、したがって max{ f 1,  f 2} ∈ F となる。

今 { fn } を、次を満たす F 内の函数列とする。 lim n → ∞ ∫ X f n d μ = sup f ∈ F ∫ X f d μ . {\displaystyle \lim _{n\to \infty }\int _{X}f_{n}\,d\mu =\sup _{f\in F}\int _{X}f\,d\mu .}

 fn  をはじめの n 個の函数の最大で置き直すことで、{ fn } は増加列であると仮定することが出来る。g を次で定義される函数とする。 g ( x ) := lim n → ∞ f n ( x ) . {\displaystyle g(x):=\lim _{n\to \infty }f_{n}(x).}

ルベーグの単調収束定理より、各 A ∈ Σ に対して ∫ A g d μ = lim n → ∞ ∫ A f n d μ ≤ ν ( A ) {\displaystyle \int _{A}g\,d\mu =\lim _{n\to \infty }\int _{A}f_{n}\,d\mu \leq \nu (A)}

が成り立ち、したがって g ∈ F となる。また、g の構成法より ∫ X g d μ = sup f ∈ F ∫ X f d μ {\displaystyle \int _{X}g\,d\mu =\sup _{f\in F}\int _{X}f\,d\mu }

となる。g ∈ F であるため、 ν 0 ( A ) := ν ( A ) − ∫ A g d μ {\displaystyle \nu _{0}(A):=\nu (A)-\int _{A}g\,d\mu }

は Σ 上の非負測度を定義する。ν0 ≠ 0 を仮定する。このとき、μ は有限であるため、ν0(X) > ε μ(X) を満たすようなある ε > 0 が存在する。(P, N) を符号付測度 ν0 ? ε μ に対するハーン分解とする。すべての A ∈ Σ に対して ν0(A ∩ P) ? ε μ(A ∩ P) であり、したがって ν ( A ) = ∫ A g d μ + ν 0 ( A ) ≥ ∫ A g d μ + ν 0 ( A ∩ P ) ≥ ∫ A g d μ + ε μ ( A ∩ P ) = ∫ A ( g + ε 1 P ) d μ {\displaystyle {\begin{aligned}\nu (A)&=\int _{A}g\,d\mu +\nu _{0}(A)\\&\geq \int _{A}g\,d\mu +\nu _{0}(A\cap P)\\&\geq \int _{A}g\,d\mu +\varepsilon \mu (A\cap P)\\&=\int _{A}(g+\varepsilon 1_{P})\,d\mu \end{aligned}}}

が成立することに注意されたい。また μ(P) > 0 であることに注意されたい。実際、もし μ(P) = 0 であるなら、(ν は μ に関して絶対連続であるため)ν0(P) ? ν(P) = 0 であり、したがって ν0(P) = 0 および ν 0 ( X ) − ε μ ( X ) = ( ν 0 − ε μ ) ( N ) ≤ 0 , {\displaystyle \nu _{0}(X)-\varepsilon \mu (X)=(\nu _{0}-\varepsilon \mu )(N)\leq 0,}

が成り立つが、これは ν0(X) > εμ(X) に矛盾する。

したがって ∫ X ( g + ε 1 P ) d μ ≤ ν ( X ) < + ∞ {\displaystyle \int _{X}(g+\varepsilon 1_{P})\,d\mu \leq \nu (X)<+\infty }

が成り立つことから、g + ε 1P ∈ F となり、 ∫ X ( g + ε 1 P ) d μ > ∫ X g d μ = sup f ∈ F ∫ X f d μ {\displaystyle \int _{X}(g+\varepsilon 1_{P})\,d\mu >\int _{X}g\,d\mu =\sup _{f\in F}\int _{X}f\,d\mu }

が満たされる。しかしこれは矛盾であるため、元の仮定 ν0 ≠ 0 が偽ということになる。したがって、目標としていた ν0 = 0 が得られる。

今 g は μ-可積分であるため、集合 {x ∈ X : g(x) = ∞} は μ-である。したがって、 f  を f ( x ) = { g ( x ) if  g ( x ) < ∞ 0 otherwise, {\displaystyle f(x)={\begin{cases}g(x)&{\text{if }}g(x)<\infty \\0&{\text{otherwise,}}\end{cases}}}

のように定めれば、 f  は目標としていた性質を満たすものとなる。

一意性を示すために、 f, g : X → [0, ∞) を、すべての可測集合 A に対して次を満たす二つの函数とする。 ν ( A ) = ∫ A f d μ = ∫ A g d μ . {\displaystyle \nu (A)=\int _{A}f\,d\mu =\int _{A}g\,d\mu .}


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:34 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef