ラテン文字
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古来、ラテン文字は、西ヨーロッパ中央ヨーロッパの諸言語(例えばイタリア語スペイン語ポルトガル語フランス語、英語、ドイツ語ポーランド語など)で使われていたが、近代以降はこれら以外にも使用言語が多い(詳細は後述の#19世紀以降のラテン文字化を参照されたい)。たとえばトルコ共和国においては1928年以降、トルコ語の表記を「近代化」するため、従前のアラビア文字に替えてラテン文字を用いたトルコ語アルファベットが使われる[1]

ラテン文字は表音文字であるが、広くさまざまな言語で用いられた結果、発音の文字への表記方法自体は各言語ごとに異なっており、同じ綴りでも言語によって異なる発音をすることが珍しくない。他方、広い時代で用いられ続けた結果、英語など、古い時代から表記法を受け継ぐ言語においては、表記発音の間の乖離も大きなものとなってきている[2]
日本語における呼称

日本語における「ローマ字」という呼称は、ラテン文字の別名であるが、日本語のラテン文字を用いた音訳翻字による表記法「ローマ字」の呼称でもあるため、どちらの意味なのかやや紛らわしく、前者を指してローマ文字と呼び分けることもある。

漢字で表記する場合は、日本産業規格 (JIS) の規格票において、「欧字(おうじ)」という表現が見られる。このほか特に、ラテン文字のうち基本26文字(英: basic Latin alphabet、ベーシックラテン・アルファベット)は英語の表記に用いることから「英字(えいじ)」と呼び、よく「英字新聞」などの語において用いる[注 1]

また、ラテン文字の基本26文字については「アルファベット」と呼ぶことも一般的であるが、これは英語のalphabetを片仮名音訳したものであり、イギリス人アメリカ人をはじめとする英語圏の人々と同じく、日本人日本英語教育の場などにおいては、英語の表記のための文字、つまり結果として基本ラテン文字を指すことが多い。

他方、日本語における呼称として一般でないが、ドイツ人をはじめとするドイツ語圏の人々と同じく、日本人のドイツ語学習者の間では、ドイツ語の発音にならう「アルファベート」と呼ぶことで、基本26文字にウムラウトと呼ばれるダイアクリティカルマークのついた文字やエスツェットと称されるリガチャなども加えた「ドイツ語アルファベット」を指す。また、フランス人をはじめとするフランス語圏の人々と同じく、日本人のフランス語学習者の間では、フランス語の発音にならう「アルファベ」と呼ぶことで、フランス語の表記に用いるアクサンテギュアクサングラーヴセディーユなどのアクセント記号などをつけた文字やその他のリガチャなどを加えた「フランス語アルファベット」を指す。「アルファベット」、「アルファベート」、および「アルファベ」も参照
使用言語.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}この項目ではを扱っています。閲覧環境によっては、色が適切に表示されていない場合があります。
古代から中世まで

古代のラテン文字は、最初期の古ラテン語から共和制ローマ以降の古典ラテン語において用いられた。また、中世のラテン文字は、ローマ帝国の東西分裂以降ゲルマン人の言語やキリスト教典礼言語の表記に用いられることで、さらに広まっていった。
古代「古ラテン語アルファベット」も参照

ラテン文字は本来、その名があらわす通り、ラテン語の表記に用いる文字として成立した。このため、ラテン語を公用語とするローマ帝国の勢力が伸長するとともにラテン文字の使用圏も拡大していった。しかし、ギリシア語を使用する帝国の東部においては、文字もギリシア文字が主流であった。

395年ローマ帝国の東西分裂以降、東ローマ帝国においてギリシア語化が進む一方で、西ローマ帝国はラテン語を使用し続け、文字もラテン文字を引き続き使用していた。
中世

西ローマ帝国は、ゲルマン民族の大移動などにより衰退してゆくことで476年に事実上の滅亡を迎えたとされるが、この地域に侵入したゲルマン人たちはラテン語とラテン文字を行政言語として使用するようになり、やがて彼らの祖語であるゲルマン諸語もラテン文字によって表記するようになっていった。また、このころから力を強めていったローマ教会中世ラテン語教会ラテン語と称して典礼言語にしており、それを表記するためのラテン文字も西方教会圏全域に広まっていき、西方教会圏の諸言語を表記するためにラテン文字が転用されるようになった。

こうして中世以降は、俗ラテン語に由来するロマンス諸語のみならず、西ヨーロッパ中央ヨーロッパカトリックプロテスタントを含む西方教会地域のほぼ全ての言語でラテン文字が使われるようになった。具体的にはゲルマン語派スラヴ語派の一部、バルト語派ケルト語派、加えてバスク語ウラル語族の一部などである。

18世紀までにラテン文字を使用していたヨーロッパの諸言語の例(五十音順)系統言語
ロマンス諸語

イタリア語

スペイン語

フランス語

ポルトガル語など

ただし当初はルーマニア語を除く


ゲルマン語派

アイスランド語

英語

オランダ語

スウェーデン語

デンマーク語

ノルウェー語

ドイツ語など

スラヴ語派

クロアチア語

スロヴァキア語

スロヴェニア語

チェコ語

ポーランド語など

バルト語派

ラトビア語

リトアニア語

ケルト語派


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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