ラスト_サムライ
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渡辺謙小雪真田広之などを含め、日本の俳優が海外に進出する1つの契機を築く作品となった。

公開時からの邦題は『ラスト サムライ』とスペースが入る表記だが、公開前の製作発表などでは『ラスト・サムライ』と中黒が入る表記が使用されていた[3][4]
あらすじ

冒頭では、古事記の一節(イザナミイザナギの神が天沼矛アメノヌボコで、日本の国土を生成したと信じている人々の住む国)を引用する形で、日本の国柄を紹介している。その長く深い伝統の空気を打ち破る幕末の近代化が始まり、建国以来の剣を信じる者と、新たな洋式鉄砲と軍隊に希望をかける者の思いに、日本という国は分断されていったのだった。

場所は変わって、南北戦争時代のアメリカ。北軍の士官として参軍したネイサン・オールグレン大尉(演:トム・クルーズ)は、南軍インディアンと戦う。その戦争の渦中、バクリーの命令により関係の無い無抵抗なインディアンの部族に攻撃を仕掛け、老若男女関係なく無差別に殺し回った。命令とはいえ、良心の呵責に悩まされたオールグレンは悪夢に苦しむようになり、逃れるように軍を離れる。

除隊後、週給たったの25ドルでウィンチェスター社と契約し、戦争で活躍した英雄として同社の広告塔に奉り上げられる。だが、ロクな仕事もせずに酒浸りで自堕落な生活を送るオールグレンに、ウィンチェスター社員も呆れ果てていた。

そんな中、日本の実業家にして大臣の大村(演:原田眞人)はベンジャミン・バグリー大佐(演:トニー・ゴールドウィン)を介し、お雇い外国人として「戦場の英雄」を軍隊の教授職として雇いに来た。その頃の日本は明治維新が成り、近代国家建設のために急速な近代的軍備の増強が必須であった。大金のオファーに魅せられたオールグレンは、僚友ゼブロン・ガント軍曹(演:ビリー・コノリー)とともに日本に行き、軍隊の訓練を指揮する。

やがて、不平士族の領袖である勝元(演:渡辺謙)が鉄道を襲ったという報が入った。まだろくな訓練も出来ていないこの軍隊では闘えないと主張するも、やむなく出動するオールグレン。案の定、隊の練度は低く、サムライたちの勢いに呑まれた部隊はバラバラになり、ガントは落命、オールグレンも孤軍奮闘するが勝元らに捕えられる。しかし勝元は彼を殺さず、妹のたか(演:小雪)に手当てをさせる。オールグレンはまたも悪夢に苦しめられながらも次第に回復しはじめる。村を歩き回り、古きよき日本の人々の生活風景を目の当たりにしながら、木刀でチャンバラをやる飛源(演:池松壮亮)を見つける。剣術の真似事をはじめたオールグレンはサムライたちのリーダー格である氏尾(演:真田広之)に目を付けられ、手合わせをするが手も足も出ないまま完敗する。村の生活を送るにつれ、オールグレンは彼ら反乱軍=サムライたちの精神世界に魅せられるようになる。そして勝元もまた、「敵を知るため」に生かしていたオールグレンにどこか不思議な魅力を感じ始めていた。

勝元の息子である信忠(演:小山田真)の村での生活を深めるにつれ、オールグレンは置いてあった着物を着て生活をはじめる。たかの子どもたちをはじめ、村の人々は急速に心を開いていく。だが、世話をしてくれる女性・たかだけはオールグレンを不信の目で見続けていた。彼女の夫・広太郎は戦場でオールグレンと戦い、殺されたからであった。だが、村の生活で村人たちに敬意を表し、自分から打ち解けていく様子を見ていくうちに、次第にたかは心を開き始める。やがてオールグレンはたかに広太郎を殺してしまったことを詫び、たかもそれを許すようになる。

訓練と談笑と生活の中でオールグレンは心の中に静けさを取り戻し、いつのまにか悪夢からも解放された。母国の戦場での体験から"神の意志"には疑問を持っていたが、サムライの村での生活には安らぎと神聖なものを感じ始める。またオールグレンは、氏尾との手合わせで、はじめて引き分けることができた。これを機に、オールグレンは氏尾や村の男たちからの信頼を急速に勝ち取る。

そんな中、村で祭りが行われ、ふだんは怖く厳しい村の首領・勝元が道化を演じる舞台がはじまる。皆の笑いでにこやかな雰囲気の中、そのスキを狙って大村が差し向けたとおぼしき刺客たちが密かに村に近づき襲撃してきた。オールグレンと勝元・村人は心をひとつにして襲撃者たちと戦い勝利する。ついにオールグレンは村人と味方になった。

やがて春を迎えて雪が溶け道が開いた頃、政府に呼び出されて勝元一行は東京へ出向く。疑いと警戒の目で一団の行進を見つめる大村。一行の中にオールグレンが居ることを見つけて、ほっと笑顔をもらす通訳・写真家・著述家のサイモン・グレアム(演:ティモシー・スポール)。東京でオールグレンが見たものは、すでに立派に訓練され、軍備も充実した政府軍の姿であった。

街に出たオールグレンは、銃を掲げ不遜な態度で振る舞う軍人が、信忠の剣を奪い、髷を切り落とす場面に出くわす。そんなオールグレンに、大村は刺客を差し向ける。一方、勝元は元老院に戻る。だが、刀を差したまま和装姿で現れた勝元に対し、大村は廃刀令にしたがって刀を捨てるよう迫る。勝元は判断を明治天皇(演:中村七之助)に仰ぐが、天皇は気の弱さから目をそむけてしまう。天皇はもちろん、元老院を牛耳る大村に誰も口を開かない事に落胆する勝元だが、それでも刀を捨てない彼は、東京で謹慎となり、大村からは自害を勧められる。

オールグレンは、大村の不平士族討伐軍の指揮官就任のオファーを断り、日本での職・役割を終わらせてアメリカへの帰還の準備をするが、大村の差し向けた刺客に襲われ、彼らを返り討ちにする。その後、信忠ら村の武士たちやグレアムと共に勝元を謹慎先から脱出させる。勝元一行は村へ帰還できたものの、殿を務めた信忠は警備兵に撃たれ、帰らぬ人となる。もはや、政府軍と勝元達反乱軍との対決は免れ得ないものとなった。

村に帰還したオールグレンは反乱軍の一員として、大村とバグリー大佐率いる政府軍に一矢報いる事を決めた。するとたかは戦う決意をしたオールグレンに亡き夫の鎧を着るよう促す。朱色の鎧を着て、武士たちとともに戦場に現れたオールグレンを見て驚くバグリーと大村だったが、勝元に降伏勧告を突き付ける。勝元はそれをはね除け、ついに全面対決となる。訓練された上に榴弾砲まで装備した政府軍だったが、思い上がった大村の命令が仇となり、勇敢な反乱軍の前に初戦で敗北する。

最後の騎馬による大突撃でオールグレンはバグリー大佐を討ち取ったが、騎馬隊は回転式機関銃ガトリング砲により阻止される。反乱軍はオールグレンと勝元を残し、氏尾をはじめ全員が戦死した。致命傷を負った勝元は、かつて「自分の命は(侍の魂である)刀が奪うのだ」と言っていたが、自ら切腹する体力がもはや残っていなかった為、信頼するオールグレンに力を貸して欲しいと頼み、オールグレンの背後に咲く桜を見ながら「すべてパーフェクトだ」という言葉を遺してオールグレンの協力のもと切腹により安らかに息を引き取った。こうして反乱軍はオールグレン1人を残し全滅した。

しかし、この闘いは決して無駄ではなかった。政府軍の兵士たちは勝元の死に様に涙して敬意を表し、跪いて頭を垂れたのである。維新以降、失われて久しかった「武士道精神」を、軍人たちが取り戻した瞬間であった。

そして生き残ったオールグレンは明治天皇に拝謁。そこで勝元の生きざまを語り、遺刀を渡した。受け取った天皇は勝元の刀と彼の教えを取り戻し、結んだばかりのアメリカとの契約を破棄した。全てを水の泡にされ激怒する大村だが、決意を新にした天皇に完全に説き伏せられた。

そして天皇はオールグレンに勝元の「死に様」を尋ねた。オールグレンは彼の「生き様」を話し、勝元の遺志を伝えた。それは日本が真に近代国家に生まれ変わるための、勝元からのメッセージであった。


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