ラグナロク
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さらに、ホッドミーミルの森(en)だけが焼け残り、そこで炎から逃れたリーヴとリーヴスラシルという2人の人間が新しい世界で暮らしていくものとされている。ホッドミーミルの森とは世界樹ユグドラシルの別称であるとされる。太陽が狼に飲み込まれる前に産んでいた美しい娘が、母を継いでその軌道を巡り、新しい太陽となる。
『古エッダ』フェロー諸島2003年に発行された、『巫女の予言』を題材にした郵便切手シリーズより。ラグナロクの始まり。アンカー・エリ・ペーターセン(英語版)による。オーディンの死、トールの戦い、スルトの炎。バルドルとヘズの復活。
『巫女の予言』

『巫女の予言』[5]では、まず、神々の場所がおそらくは朝焼けや夕焼けによって[6]赤く染まり、太陽が暗く天候の悪い夏が続くことが語られる。女巨人エッグセール(en)が竪琴を弾くそばで雄鶏のフィアラル(en)が、アース神族の場所でグリンカムビが、ヘルヘイムで雄鶏が鳴く。ヘイムダルはギャラルホルンを吹き、オーディンはミーミルを訪ねる。巨人フリュムが東[注釈 1]から攻めてくる。ヨルムンガンドも波を立てて迫る。また東の海[注釈 2]からはムスペルを乗せロキが舵をとる船がやって来る。スルトは南から炎を携えて進む。こうした中で人々はヘルの元へ行くこととなる。

オーディンはフェンリルに倒されるが、直ちに息子のヴィーザルがフェンリルの心臓を剣で貫く。フレイはスルトと戦う。トールはヨルムンガンドと戦うが、その毒を浴び、9歩退いて倒れる。やがて太陽が光を失い、星々が消える。炎と煙が噴き上がる中、大地は沈没する。

やがて海中からは緑なす大地が現れる。生き残ったアース神族はイザヴェルに集まるが、そこにはバルドルとヘズが戻ってくる。ヘーニルもいる。オーディンの2人の兄弟[注釈 3]の息子達が天(風の住居)に住むと語られる。ギムレーには誠実な人々が暮らす。ニザヴェッリルから舞い上がった黒い竜ニーズヘッグはやがて沈んでいく。
『ヴァフスルーズニルの言葉』

古エッダ』の『ヴァフスルーズニルの言葉』[7]では、博識の巨人ヴァフスルーズニルと、ガグンラーズ(Gagnradr)という偽名を名乗ったオーディンが知恵比べをする過程で、ラグナロクについて言及する。その中で、神々の元にいる戦士達は、毎日戦い合っては戦死者を出し、しかし戦場から馬で戻って和やかに食卓に同席すると説明される(第40-41節)。また、ヴィーグリーズはスルトと神々の戦いの場だとされる(第17-18節)。また、ヴァン神族の国からアース神族の元に移った神ニョルズが、世界の終わる時にヴァン神族の元に帰るとされる(第38-39節)。恐ろしい冬が人間の世界に訪れても、ホッドミミルの森に隠れていたリーヴとリーヴスラシルの2人が生き残り、人間はこの2人からまた増えていくとされる(第44-45節)。太陽はフェンリルに捕らえられる前に美しい娘をもうけており、太陽の亡くなった後はこの娘が再び天を巡るとされる(第46-47節)。オーディンは狼に倒されるが、息子のヴィーザルが狼の顎を引き裂くとされる(第52-53節)。世界を焼き尽くしたスルトの炎が消えた後には、ヴィーザルとヴァーリ、モージとマグニは生き残っているとされる(第52-53節)。

なお、アクセル・オルリックは、ニョルズがヴァン神族の元に帰るのはヘーニルがアース神族の元に帰ることと対をなしていると推測している[8]。作者である詩人が、混乱を経た後にはすべてが最初の状態(場所)に戻ると考えていたとしている[9]
その他の詩

『ファーヴニルの言葉』(en)第14-15節によれば、スルトとアース神族が戦う島はオースコープニルだという[10]。『ロキの口論』第41-42節では、フェンリルが神々の滅びる日まで縛られていること、その日にはムスペルの子達がミュルクヴィズの森を越えて神々の元に攻め込んでくることが語られる[11]。『ヴェグタムの歌(バルドルの夢)』第14節ではロキもまた縛めを解かれる[12]。『グリームニルの言葉』では、戦いの時にヴァルハラの540の扉からそれぞれ800人の戦士が出陣する様子が語られる[13]。『ロキの口論』第58節では狼がオーディンを飲み込むとされ[14]、『グリームニルの言葉』第17節ではヴィーザルが父の死の復讐をする旨を宣言している[15][16]

巫女の予言短篇』(『ヒュンドラの歌』)は、『巫女の予言』を大筋でなぞっている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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