ライフル銃
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つまり銃身に施条(ライフリング)を有する火器全般がライフルであるが、単にライフルという場合、普通は小銃を指す。全米ライフル協会(NRA)の立法行動研究所(NRA-ILA)では、「ライフリングを施された肩撃ちの銃」(A shoulder gun with rifled bore.)という定義を紹介している[10]

ライフリングはさまざまなに刻まれているため、本来「ライフル」という語は小銃のみを指すものではなかった。小銃一般を指して「ライフル」と表現することもあるが、これはアメリカ独立戦争の際、当時珍しかったライフルド・マスケット(英語版)(:Rifled musket, ライフリングが施されたマスケット銃)を装備したミニットマンが、従来の(滑腔銃身の)マスケットを装備したイギリス軍狙撃して悩ませた故事に基づく。それ以来、「ライフル」という言葉は小銃という意味合いを含むようになり、施条自体は「ライフリング」と表現されるようになったという[11]。前述の全米ライフル協会は銃一般を取り扱う団体であり、ライフリングを備えた銃や小銃に限定した団体ではない。
小銃の定義

日本語における小銃とは、ライフリングを有するライフル銃に加えて、ライフリングを有さない火縄銃マスケット銃などを含む言葉である。

日本では江戸時代の終わり頃まで、(GUN)のうち、大きいもの(砲)を「大銃」とよび、小さいもの(銃)を「小銃」と呼んでいた[12]。明治時代に入ると大きいものを「砲」と表現するようになったため、「大銃」という表現は次第に使われなくなり、歩兵が用いる個人用銃を指す「小銃」という言葉のみ残ったのである[13]。当時の銃砲はライフリングが無いわけであるから、小銃という言葉は本来ライフリング(腔綫もしくは施条)のあるなしを区別しないのである(#銃身)。福沢諭吉は、ライフルの音を借りて「雷銃」と訳した。福沢が著した雷銃操法には「筋入りの小銃なり」「今仮に雷銃と訳す」と説明されている。

防衛省では、Rifleの英単語に対応する語として「小銃」を当て、「個人携行の基本となる肩撃ち銃。使用目的によって,歩兵銃,騎銃,突撃銃,そ(狙)撃銃などがある。」と定義している[14]
日本での法律上の規定

日本の法律上、小銃とは軍用銃のみを指し、同一の火器であっても民間で所有されるものは猟銃として区別される[13]。また、銃砲刀剣類所持等取締法(銃刀法)における猟銃とは「ライフル銃」および「ライフル銃以外の猟銃」の2分類から成り、「ライフル銃以外の猟銃」はさらに「散弾銃」と「ライフル銃及び散弾銃以外の猟銃」に分かれる。空気銃は猟銃に含まれない別分類とされている[15]

1973年(昭和48年)、アメリカで発生した黒人解放軍(BLA)による警官襲撃事件で豊和工業製AR-180半自動小銃が用いられたことが明らかとなり、同年の国会において取り上げられた。この際、公明党の小川新一郎議員は、日本における小銃と猟銃の区別について質問した。通商産業省重工業局次長が解答したところによれば、ライフル銃のうち、半自動あるいは手動式のものは猟銃の範疇に入り、全自動式のもの、あるいは着剣装置が付いているものは小銃に含まれるという[16]

狩猟用ライフル(所持目的が狩猟用であるライフル銃)を所持する場合は猟銃(法的な区分による猟銃であり狩猟目的とは限らない散弾銃や競技用ライフル銃)を10年以上継続して所持しているという実績が必要である。また、狩猟用ライフルは狩猟法の規定により口径が5.9ミリ以下の物は認められない。

競技用ライフルの場合は日本体育協会の推薦が必要となり、射撃大会などの成績により認定される段級位に応じて、エアライフル、小口径ライフル(口径5.6ミリ)、大口径ライフル(口径8ミリ以下に限られ、口径5.6ミリであってもセンターファイヤーの物は大口径として扱われる)が所持できる。この場合必ずエアライフルからはじめなければならず(バイアスロンおよび近代五種用のライフル銃はビームライフルからでも可である)、小口径を経て大口径ライフルへと段位を積み重ねる必要がある。また、推薦要件は手動単発式ライフルのみであるため、小口径・大口径の競技銃はボルトアクションに限られ、狩猟用のような半自動式ライフルは競技用として所持できない(ライフル協会などの推薦が出ないため)。また、狩猟用、競技用共構造として5発を超える装弾が装填できる弾倉を持つ物は許可されない(薬室内1発+弾倉内5発の物は可)。
構造
銃身ライフリングの構造。写真は火砲(戦車砲)の断面九九式短小銃の腔線。下部の逆T字部分が着剣装置詳細は「ライフリング」を参照

現在の小銃はほとんどがライフリング(施条、腔線)を有し、ここから転じたライフルという語は小銃とほぼ同義となっている。また、ライフリングという語自体は古フランス語のRiflerに由来し、元々は「削る」などの意味を持っていた。施条銃身から撃ち出される弾丸は、ライフリングに浅く食い込みながら進む事で回転運動を与えられ、ジャイロ効果により滑腔銃身よりはるかに高い直進性・低伸性を得るため、精密な射撃(狙撃)が可能となる。

ライフリング自体は15世紀中頃に開発されていたものの、いくつかの技術的問題からほとんど普及していなかった。実用的なライフル銃(施条銃)は1740年代にイギリス人科学者ベンジャミン・ロビンス(英語版)によって理論的に発明され、その後のアメリカ独立戦争(1775年 - 1783年)、ナポレオン戦争(1803年 ? 1815年)を通じて実際に運用された。

19世紀に入ると、イギリスで前装式ライフル銃としてベイカー銃ブランズウィック銃が開発されている。この頃までにライフリングの利点は広く認識されていたものの、本格的な普及には至らなかった。前装式小銃にライフリングを施した場合、銃口から弾丸を装填することが非常に困難となったためである。

やがて、一回り小さい弾丸を装填後に押しつぶしライフリングに食い込ませる膨張式弾薬が開発され、これを更に発展させた長形弾丸(ミニエー弾)を用いるミニエー銃の開発(1849年)によって施条銃身を有するマスケット(ライフルド・マスケット(英語版))の普及が始まったのである[17]

なお、近代以降の日本における「小銃」とは、本来は上述のライフリングの有無や前装式・後装式の区分に関わらず、比較的長銃身で個人が携行する銃器の総称であり、欧米における狭義の「ライフル」とは厳密には意味が異なる。
着剣機構

軍用小銃には原則として銃剣を取り付けるための着剣装置が設けられている。着剣装置がない銃ではソケットタイプの銃剣を銃口にかぶせることで着剣できるようになっているものが多く、全長が短いブルパップ小銃によくみられる(通常の着剣装置より銃剣を含めた長さを長くできるため)。

小銃が普及し始めた頃、射撃後の再装填には非常に時間がかかったため、その合間を狙って騎兵による突撃を受けて追い散らされることが多く、これに抗するには槍で槍衾を作る必要があった。1640年頃には銃剣が発明されたことで小銃は槍としての役割を兼ねることとなり、かつて銃兵の天敵であった騎兵にも対処することが可能となった[7]。またかつての小銃は発射速度や命中精度が低く、小銃の撃ち合いだけでは決着がつかず、隊伍が乱れたところで銃剣突撃を行うのが通例であった。現代の小銃は近接射撃能力の高いアサルトライフルが主流であり、かつてほど銃剣は重要なものではなくなった。

大戦中のドイツは生産簡略化のために自動小銃から銃剣を廃し、戦後も威圧的な印象を与える銃剣を用いなかった。しかし現在のドイツの小銃にも着剣装置は備えられている。またアメリカ陸軍においてはルイス・ミレット大尉によって1951年に実施されたものが最後の大規模な銃剣突撃とされており、2010年には基礎戦闘教練(Basic Combat Training)から銃剣刺突の項目が廃止された[18]。しかし銃剣そのものが廃止されたわけではなく、近接戦闘訓練の一環として残っている。
閉鎖機構

初期の小銃は、銃口もしくは銃身の途中から弾丸と発射薬を詰めて使用される前装式が主なものだったが、遮蔽物に隠れたり伏せたままで再装填を行うことが難しいなどの問題があった。1830年代には近代的な後装式小銃の開発が進められ、1836年にはフランス人カシミール・ルフォーショウ(フランス語版)が初めて実用的な製品を開発した。また、同年にはプロイセンのヨハン・ニコラウス・フォン・ドライゼが最初の実用的なボルトアクション式であるドライゼ銃を発表している。後装式小銃は前装式小銃に比べてあらゆる点で優位を認められつつ、一方で当初は閉鎖機構や新型実包(各種薬莢で弾丸・発射薬・着火薬を一体化させたもの)の信頼性に問題があったため、すぐには普及しなかった。1850年代に入ると、技術発展に従い機械部品の精密加工が可能となり、十分に信頼しうる後装式小銃の製造が始まった。1860年代までに前装式小銃はほとんど使用されなくなった[19]

現代の小銃に使用されているのは、各種薬莢で弾丸・発射薬・着火薬を一体化させた実包を用いる後装式であり、薬莢を銃身後端(薬室)部に差し込んで発火させた際に、発射時の圧力で薬莢が飛び出さないよう遊底で閉鎖するためのボルトアクション式をはじめとする各種の方式が考案された。
給弾・装填機構


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