ライドシェア
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2010年の米国の交通事故死者数は32,885人(1949年以来最低レベル)であったが、2016年には37,400人以上に増加しており、これは配車サービスが原因であるとされた[60]。毎年登録車両が増加しているため、死亡者数が年間3%、つまり987人ずつ増加している。特に大都市における自転車や歩行者が巻き込まれる事故での負傷者や死亡者の増加に顕著に表れており、2017年から2018年にかけ、ウーバーの車両は97件の死亡事故に関与し、これらの事故で107名が死亡している[60]。なお、曜日や時間帯問わず事故率は一定であった[60]。この研究結果から経済的損失を定量化し、米国運輸省の生命価値に基づき試算した結果、配車サービスによる損失は100億ドル(約16,5兆円)に上り、これに負傷者数は含まれていない[60]
その他の問題

ライドシェアリングは運転中の携帯電話の使用を奨励または要求しているとして批判されている。いくつかのアプリは、通常、通知を受けてから15秒以内に、ドライバーに携帯電話の画面をタップすることを要求しているが、これは漫然運転につながる可能性があるため、特定地域では違法行為である[62]

多くの都市では、ライドシェアリング車両が乗客を乗せたり降ろしたりする際に自転車専用レーンを日常的に妨害しており、サイクリストを危険に晒す行為であると批判されている[63][64][65]
価格操作の申し立て

米国では、ドライバーは自分たちが要求する運賃を選択することができない。これは、1890年に制定されたシャーマン反トラスト法に違反する取引制限であると訴訟で主張された。これに対し、運営側は「乗客とドライバーをマッチングさせ、サービス条件を設定し運賃を徴収するだけである」と主張している。これはカリフォルニア州で提起された訴訟における主題であった[66]
障碍者に対する配慮

ライドシェアリングは、現地の法律に違反し、障害者のためのアクセシビリティに対する対策が不十分であると批判されている。

地域によっては、ハイヤー会社は一定量の車椅子対応バン(WAV;Wheelchair accessible van、福祉車両)を使用することを法律で義務付けているが、大半のドライバーはWAVを所有していないため、法律を遵守することが難しいと指摘されている[67]

ライドシェアリング会社はドライバーに対し介助動物の輸送を義務付けているが、ドライバーが介助動物の輸送を拒否したことで批判を浴びており、これは米国では障害を持つアメリカ人法違反にあたる。2021年には、盲導犬と一緒に旅行する視覚障害者の乗客が14回にわたって乗車拒否受けたことで、仲裁人が110万ドルの支払いを命じている[68]
特定層への差別問題

ドライバーが特定の人種などからの乗車依頼を受け付けていないとの苦情により、一部のライドシェアリング会社では、乗車依頼で乗客の身元を伏せる措置を取っている。2018年にワシントンD.C.で行われた調査では、ドライバーはアフリカ系アメリカ人LGBTストレート・アライの乗客からの乗車依頼を拒否することが多く、性別では同じ割合であった。なお、黒人乗客のキャンセル率の高さは、金銭的インセンティブが高いピーク時にはいくらか減少している[69][70]
交通渋滞問題

特に公共交通機関と競合する都市では、ライドシェアは交通渋滞を助長し、公共交通機関の利用を減少させ、自動車の所有に実質的な影響を与えず、自動車依存を増加させるという研究結果がある[71][72][73][74]

デッド・マイレージは特に不必要な二酸化炭素排出と交通渋滞を引き起こす[75]。2019年9月に発表された研究では、タクシーは乗客の待ち時間と車両の空車走行時間が短く、繁華街での渋滞と汚染への影響が少ないことが明らかとなっている[76]。なお、2018年の報告書でライドシェアリングは公共交通機関を補完する(MaaS)と指摘している[77]。2018年7月に発表された研究では、ウーバーとリフトが多くの交通渋滞を生み出している要因であると指摘された[78][79][80]

2016年3月に発表された研究でロサンゼルスシアトルでは、ウーバーの乗客占有率はタクシーよりも高かったことで、タクシーから代替することを前提に考慮すれば渋滞を減らすであろうと結論付けている[81]。2010年から2019年のデータを引用した研究では、ウーバーはタクシー乗車に次いで行われており、徒歩、自転車、バスの代替手段となりうるが、ウーバー車両は平均占有率が低いことから渋滞を増加させるとしている。車輛の増加に伴う渋滞が顕著に表れた都市ではライドシェアリングを利用した乗車に対し課税する都市も出てきている[82]

2017年7月に発表された研究によると、ウーバーによる交通量の増加は、渋滞による時間のロス、大気汚染の増加や交通事故の増加など、サービスによって生み出される経済性や収益を上回る損失を生み出しており、特定の条件下では、ウーバーは利益よりも大きな社会的損失を払う可能性があることを示している[83]

日本オラクルの初代代表アレン・マイナーは、「アメリカがやらなければならないのは、Uberではなく日本みたいに電車を敷いてバスを敷いて……ということです」と述べている[84]
日本の対応「自家用車活用事業」および「自家用有償旅客運送」も参照

日本で有償の旅客輸送事業を行うには事業用自動車であること、乗務員には第二種運転免許道路運送法によって定められているため違法であり、日本政府も全面解禁には慎重姿勢であり意見が割れている[85][86][87]。しかし、少子高齢化に伴い「過疎地特区)」に限定した実証実験が2016年に京都府京丹後市で「ささえ合い交通」として開始され[88]、一年の実験を得て、2017年には北海道中頓別町で「なかとんべつライドシェア」として開始された[88]。タクシー事業者は「最低車両数5台で専用の施設が必要」という営業所の設置要件があるため、5台分の需要を下回る状況では費用負担が重く[89]、京丹後市では地域を担当していた地元のタクシー会社が廃業したため日々の移動が問題となっていた。過疎地におけるライドシェア事業は北海道天塩町三重県菰野町兵庫県養父市愛知県豊明市鹿児島県与論町広島県三次市の順に行われている[90]

自家用自動車での営利目的の運行は基本的に違法であるため、道路運送法78条第2号で定めた自家用有償旅客運送における「公共交通空白地有償運送」の取り扱いに基づき、管理は市町村NPO法人などが担当し、地元住民が運転手となり、乗務に向けた各種講習を義務付けており、運行範囲は営利に当たらない範囲に限定し、運賃もタクシー上限の概ね1/2を目安に設定している[91]。地域を循環するコミュニティバスを参考にしており、料金はバスよりは高くタクシーよりは安い金額である[88]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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