ライドシェア
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2020年、ウーバーによるアメリカ国内における安全性レポートが公表されており[55][56]、この中で性犯罪に関し、セクシャルハラスメントなど軽微なものから強姦など深刻なものまでを含む総報告件数は3,824件発生しており[55]、この内強姦事件は141件発生、91%を乗客が占め、7%が運転手であった[55]。性別は女性が81%、男性が15%となっており、男性の被害者数が当初の報告から2倍へと増加している[55]。なお、2017年から2018年のレポートによれば報告件数は5,981件(強姦247件)であり被害は減少している。輸送回数は2019年に14億回を記録しており、2020年にはコロナウイルスの流行により6億5,000万回へと減少したことから強姦の発生割合は全体の0.00002%である[55]。このほか、2020年までの2年間の間に20件の傷害致死事件が発生し、このうち被害者の15名が乗客である[55]。継続的な身元調査から8万人の運転手がプラットフォーム上から削除された[55]
中国

2018年5月5日、鄭州新鄭国際空港から鄭州駅までの移動に滴滴出行の相乗りサービスである「順風車」を利用した21歳の女性客室乗務員がドライバーから強姦された後に殺害された[57]。女性は乗車後、男性ドライバーからのセクハラ言動に異変を感じたため、スマートフォンアプリWeChat」を通じ同僚に異変を伝えていた。その後、連絡が途絶えたため父親が警察に通報し、3日後に遺体となって発見された[57]。下半身には何も身に着けておらず、性的暴行を受けた痕跡が認められたうえ、体中にナイフで切られたとみられる多数の切創が確認された。滴滴は懸賞金を掛けドライバーの情報を求めていたが、事件から8日後の13日、鄭州市内の川で遺体となっている所を発見された。自殺とみられている[57]。また、滴滴ではドライバーによる顧客評価システムがあり、この中で利用した女性の容姿に対する辛辣なコメントが書き込まれており、情報はドライバー間で共有されていた。事件によりこの情報が明るみに出たことで滴滴への大きな批判へと繋がっている[57]。滴滴のサービスは事件後に停止されたものの、「社会に必要である」との認識から1週間後には改善策が示された上で再開された[57]

8月27日の午後、20歳の女性利用者が友人の誕生日に参加するため順風車サービスを利用。乗車後しばらくしてからWeChatで友人に対し「運転手が山道を通っている。周りに車がなく、少し怖い」と送信、5分後には「助けて、助けて」と送信し行方不明となった[58]。翌早朝、警察によって男性ドライバーの身柄が拘束され捜査が行われた結果、女性は遺体となって発見された。なお、遺体の状態から強姦後に殺害されていたことが判明している[58]

事件発生以前よりセクハラ関連の報告が多数あがっていたうえ、改善策が示され再開後の僅か3カ月後に発生した2件目となる同様の殺人事件に、ライドシェア廃止論が出るなど中国国民の怒りは頂点に達し、宣伝のため起用されたタレントも軒並みアプリを削除し、「滴滴は3カ月何をしていたのか」とメディアも挙って滴滴を糾弾した[58]。立て続けに発生した殺人事件により滴滴は業績が悪化し、1,800億円の赤字となったことで全従業員の15%にあたる2,000名を解雇した。また、依頼件数が激減し、配車依頼も無くなったことで多くのドライバーが生活に困窮する労働問題にも発展した[59]
交通事故

報告書では、ウーバー車両が関係した衝突死亡事故は101件発生しており、2019年と2020年の双方で発生したウーバーが関連する自動車事故による死亡率は「全土平均の約半分」であると主張している[55]

2019年、シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスによる学術調査が行われ[60][61]、相乗りアプリや配車サービスの人気の高まりと共に自動車事故や死亡者数の増加との相関関係が分析された。2001年から2016年までの米国の大都市における配車サービス導入前後の8四半期を調査し、交通量、交通手段の選択肢、自動車事故の総数を分析し結論に至った[60]。また、アメリカ道路交通安全局(英語版)(NHTSA)のデータを組み込み、主要都市での事故率や車両総走行距離の比較なども行われた。この調査からライドシェア事業は自動車事故による死亡者数全体の3%増加に貢献しているとされる。2010年の米国の交通事故死者数は32,885人(1949年以来最低レベル)であったが、2016年には37,400人以上に増加しており、これは配車サービスが原因であるとされた[60]。毎年登録車両が増加しているため、死亡者数が年間3%、つまり987人ずつ増加している。特に大都市における自転車や歩行者が巻き込まれる事故での負傷者や死亡者の増加に顕著に表れており、2017年から2018年にかけ、ウーバーの車両は97件の死亡事故に関与し、これらの事故で107名が死亡している[60]。なお、曜日や時間帯問わず事故率は一定であった[60]。この研究結果から経済的損失を定量化し、米国運輸省の生命価値に基づき試算した結果、配車サービスによる損失は100億ドル(約16,5兆円)に上り、これに負傷者数は含まれていない[60]
その他の問題

ライドシェアリングは運転中の携帯電話の使用を奨励または要求しているとして批判されている。いくつかのアプリは、通常、通知を受けてから15秒以内に、ドライバーに携帯電話の画面をタップすることを要求しているが、これは漫然運転につながる可能性があるため、特定地域では違法行為である[62]

多くの都市では、ライドシェアリング車両が乗客を乗せたり降ろしたりする際に自転車専用レーンを日常的に妨害しており、サイクリストを危険に晒す行為であると批判されている[63][64][65]
価格操作の申し立て

米国では、ドライバーは自分たちが要求する運賃を選択することができない。これは、1890年に制定されたシャーマン反トラスト法に違反する取引制限であると訴訟で主張された。これに対し、運営側は「乗客とドライバーをマッチングさせ、サービス条件を設定し運賃を徴収するだけである」と主張している。これはカリフォルニア州で提起された訴訟における主題であった[66]
障碍者に対する配慮

ライドシェアリングは、現地の法律に違反し、障害者のためのアクセシビリティに対する対策が不十分であると批判されている。

地域によっては、ハイヤー会社は一定量の車椅子対応バン(WAV;Wheelchair accessible van、福祉車両)を使用することを法律で義務付けているが、大半のドライバーはWAVを所有していないため、法律を遵守することが難しいと指摘されている[67]

ライドシェアリング会社はドライバーに対し介助動物の輸送を義務付けているが、ドライバーが介助動物の輸送を拒否したことで批判を浴びており、これは米国では障害を持つアメリカ人法違反にあたる。2021年には、盲導犬と一緒に旅行する視覚障害者の乗客が14回にわたって乗車拒否受けたことで、仲裁人が110万ドルの支払いを命じている[68]
特定層への差別問題

ドライバーが特定の人種などからの乗車依頼を受け付けていないとの苦情により、一部のライドシェアリング会社では、乗車依頼で乗客の身元を伏せる措置を取っている。2018年にワシントンD.C.で行われた調査では、ドライバーはアフリカ系アメリカ人LGBTストレート・アライの乗客からの乗車依頼を拒否することが多く、性別では同じ割合であった。なお、黒人乗客のキャンセル率の高さは、金銭的インセンティブが高いピーク時にはいくらか減少している[69][70]
交通渋滞問題

特に公共交通機関と競合する都市では、ライドシェアは交通渋滞を助長し、公共交通機関の利用を減少させ、自動車の所有に実質的な影響を与えず、自動車依存を増加させるという研究結果がある[71][72][73][74]


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