ライトノベル
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いわゆる「ネット小説」の他、VOCALOID楽曲をもとにして書かれる「ボカロ小説」や「フリーゲームのノベライズ」なども新文芸に含まれるとしている。意味合いが異なる「ライト文芸」と名称を混同されることがある[19]
発祥

ライトノベルの発祥は複数の説があり、1975年ソノラマ文庫の創刊という説や、新井素子氷室冴子などの人気作家が登場した1977年という説などである[20]。また、77年刊の三島由紀夫『夜会服』(集英社文庫)の解説で篠田一士が「『夜会服』のような小説をライト・ノヴェルとよんでみたら、どうだろうか。ライト・ノヴェル、つまり、軽い小説ということだが、もちろん、軽小、軽薄のそれではなくて、軽快、軽捷の軽である」と書いている。ライトノベル作家の中里融司は、その源流は戦前の「少年倶楽部」に載っていた一流大衆作家の少年向け長編小説だとしている[21]
名称

井上伸一郎によれば1980年代後半には統一されたジャンル名はなく「ファンタジー小説」や「ヤングアダルト」に括られていたという[18]水野良安田均は「RPGの世界観やストーリー」を特徴とする小説として「ゲーム小説」を定義しています。その後、角川歴彦は「ゲーム小説」の概念をメディアミックスの可能性を持つ新しいジャンルに拡大しました[22]

「ライトノベル」の命名は、1990年初めにパソコン通信ニフティサーブの「SFファンタジー・フォーラム」において、それまでのSFやファンタジーから独立した会議室を、会議室のシスオペであった“神北恵太”[注釈 1]が「ソノラマ・コバルト」などのレーベルからの出版物に「ライトノベル」と名付けたことが始まりであるとされる[23][24]

従来、これらの分類に対して出版社がつけていた名称としては「ジュブナイル」「ヤングアダルト」または「ジュニア小説」などがある。しかし「ジュブナイル」は小学生向けの教育的かつ健全な物語というイメージがあり、欧米の図書館職員によるレイティングが由来の「ヤングアダルト」は日本では「ヤングのアダルト小説」とも解釈されて異なった印象を与えがちなことから、これらとは違う、気軽に扱うことの出来る名称として作られた。現在では、各種メディアでも「ジュブナイルノベル」や「ヤングアダルト小説」ではなく「ライトノベル」と呼ばれるようになり、定着している[25]。なお「ライトノベル」という呼称は、発祥してからすぐに定着したわけではなく、一般にも呼称されるようになったのはインターネットが広く普及しそれまで以上に読者同士が交流を行うようになった2000年頃だとされている[6]。例えば、東京BBSのファンタジーノベルボードでは、ボードで扱う話題の説明に "(富士見ファンタジア文庫・朝日ソノラマ文庫等)" とあり、今日ではライトノベルと認識される範疇を「ファンタジーノベル」と括っていた。

「ライトノベル」という呼称については、和製英語なので国際的には通用しないと誤解されていること(現在は「MANGA」「ANIME」などと同様に日本独自の分類分けとして知られている)、英語として直訳すると「軽い小説」と訳されることもあり、読者がどのように受け入れているのかを考慮することなく「ライトノベル」と呼ばれることを敬遠する出版社や作家などもいる[26]。また、文学事典などの学術的な事典においても「ライトノベル」を採用している例は少ない[注釈 2]。さらに図書館学の分野においては国際的な学術用語として「ヤングアダルト」が採用されている[27]
特性
版型と年齢層

以前は多くが文庫本の判型であった。しかし、1990年代末以降においては読者層の変化や嗜好の細分化などから、より少ない発行部数でも採算の取りやすい新書ノベルズ)や四六判ソフトカバーなどでの発売も増えている。とりわけ、2012年頃から四六版ソフトカバーのライトノベルレーベルの発足が相次ぎ、2012年から2015年にかけて、ライトノベルにおける新書・四六版の売上が倍増している。主として若年層を読者としているものの、その対象年齢は拡大しているとされる[20]。中心読者層が30代から40代以上の作品もある[28]
内容

内容は恋愛SFファンタジーミステリーホラー、学園ラブコメと多くのものを含んでいる。ビジュアルノベルアニメ漫画などの作品を原作にしたノベライズ作品も多く発行されている。逆に、ライトノベルを原作とした漫画化アニメ化映画化やテレビゲーム化、玩具化(フィギュア等)などのメディアミックスも盛んに行われている[29]

近年は作品と読者年齢層の多様化が見られる。また高殿円紅玉いづきなどライトノベルとそれ以外の小説の両方を出版する作家、乙一冲方丁桜庭一樹などライトノベル作家としてデビューした後、他ジャンルにも展開し、直木賞などの文学賞を受賞して文壇入りする作家の出現によって、それまでの概念から大きく広がりを見せている[30]
挿絵・イラストの重要性

ライトノベルにとっては、挿絵によるイメージと挿絵に対する読者層からの評価は、他ジャンルの小説よりも重要な意味を持つ。これは、ライトノベル読者のうち少なくない数が、イラストレーションで作品を選択する「イラスト買い」を行っていることに起因する。「イラスト買い」が多く行われる理由は、ライトノベルがメインのターゲットとしている層は活字よりもアニメやマンガに親しんでいる層であるためとされているからである[6]

初期のライトノベルの挿絵担当者は、安彦良和天野喜孝など油絵水彩画のような絵画手法をも持ったアニメーター出身者や、永井豪などの伝奇アクション作品系の漫画家いのまたむつみ美樹本晴彦などアニメ業界出身の当時の若手中堅イラストレーター、都築和彦などのパソコンゲーム業界出身のイラストレーターなどが主流であった。

少女文学のジャンルでは、1987年に花井愛子講談社X文庫ティーンズハートの創刊に際して企画から関わり、同年、『一週間のオリーブ』を第一線で活躍する人気漫画家のイラストを採用した華やかな少女小説として出版し、これが人気を集めたのに続いて、少年向けでも1990年代初頭、神坂一スレイヤーズ』の挿絵を手掛けたあらいずみるいの登場を契機としていわゆるアニメ塗りのイラストへの変革が発生した[31]。これはアニメを見慣れた世代の読者が増加するとともにそうした絵柄が支持を集めるようになったことと、ライトノベルの需要増加とともに短時間で大量のイラストを生産できる体制を確立する必要があったことに起因している[32]

1990年代後半に入るとパソコンと画像ソフトウェアの発達からCGを利用したイラストレーションが増加し、美少女ゲームなどからも人気を集める絵柄のエッセンスを取り込むなどの動きが見られた[33]。特に電撃文庫は緒方剛志黒星紅白原田たけひとなど、アニメ業界やゲーム業界でも活躍する若手イラストレーターの登用で躍進し、MF文庫Jがより大衆化された美少女路線で追随した。2000年代以降はいとうのいぢヤスダスズヒトブリキなどがヒットメーカーとして知られている[6]


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