一般的に、ヨーク地方は、自然が豊かな地域とみなされている。広大で、大都市のまわりにも、昔のままのカントリーサイドの風景が残されている。ヨークシャー・デイルズ(Yorkshire Dales)やノース・ヨーク・ムーア(North York Moors)がその典型である[11][12]。ヨーク地方はしばしば「神の恵みの土地(God's Own Country)」と称される[10][13] 。
ヨークシャーの紋章は「ヨークの白薔薇(White Rose of York)」である。これはかつてのヨーク王家の紋章であり、青地に白薔薇の旗がヨークシャーの旗としてよく使われている[14]。この旗は50年ほど使われてきたが、2008年7月29日に正式化された[15]。1975年以来、毎年8月1日は、ヨーク地方の歴史、文化、方言を記念した「ヨークシャーの日(Yorkshire Day)」となっている[16][17][18]。 「ヨークシャー(Yorkshire)」は、後述するように、「カウンティ」と呼ばれるイギリスの伝統的な地方区分のなかでも最大の面積があり、2位のリンカンシャーと3位のデヴォンシャーを合わせたより広い。この広さゆえに、ヨークシャーは古くから3つの「ライディング」という下位区分にわけられていた。 日本の文献での訳語は様々である。「ヨークシャー[1]」「ヨークシア[19]」「ヨークシァ」「ヨーク地方」「ヨークシャー県[1]」「ヨーク県」「ヨーク州」などと表記されてきた。古い文献の中には、ふつうの「カウンティ」を「県」、ヨークシャーを「州」と区別して和訳するものもある[20][21]。近年の文献では、「シャー」とつくものは「ヨークシャー」「ヘリフォードシャー」とそのままにし、「シャー」のつかないものに「コーンウォール州」「デヴォン州」としている例もある[22]。 ヨーク地方は、この地方の中心地であったヨークという都市名からその名をとられている。古代ローマ時代の都市名「エボラクム」(Eboracum
名称・語源と範囲
「ヨーク」
ヨークのシンボルの野猪。
赤色の地方が「-シャー」がつくカウンティ、橙色はかつて「-シャー」がついていたカウンティ。
ローマ人が名付けた「エボラクム」の語源には諸説あるが、「イチイ(ebor)の木があるところ(-cum)」の意味だったとする説が一般的である。このほか、「エブロス族の居住地があった場所」との解釈もあるが、「エブロス族」の名称はイチイの木から来ていると考えられており、いずれにしてもイチイの木が関わっていると考えられている[注 2]。これがアングロ・サクソン人の「エオフォヴィック」に置き換わった際に、「野猪(エオフェル)」と同じ音を持つことから、イノシシがヨークのシンボルになっていった[24][25][26]。