ヨルダン川西岸地区
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2020年は、新型コロナウイルス感染症流行初期の1-2月は、月平均45件に減少したが、3-8月は月平均65件と、2017年からの4年間で最も多くなった。OCHAは、命令1797によって建造物の迅速な撤去が可能になり、所有者が異議申立の手続きを取れなくなっていることを懸念している[12]
イスラエルイスラエルの「分離壁」(エルサレム、2016年)ヨルダン川西岸地区のユダヤ人入植地(黒三角、2007年)「ユダヤ・サマリア地区」および「イスラエル西岸地区の分離壁」も参照

イスラエルの行政上の区画はユダヤ・サマリア地区である。前述したように、ヨルダン川西岸地区の6割(2000年時点)はイスラエルの統治下にある。また、他のパレスチナ政府管轄下(AおよびB地区)についてもイスラエルは網の目のように包囲しており、与える影響は大きい。

C地区とは別にユダヤ人入植地と呼ばれるものが存在する。これは、マアレ・アドゥンミームを始めとするユダヤ人による入植地(イスラエル(国籍の)人の移住地)であり、そのほとんどはC地区に点在している(2014年の地図 (PDF))。入植地は政府主導の大規模なものもあれば、入植者が勝手に作った「アウトポスト」もある(イスラエル政府は一部例外を除いて事実上容認)。入植者には2020年時点で71万人ほどのユダヤ人が住んでいるとされる[1]。そして、その入植地およびヨルダン川西岸地区を取り囲むように建設されたのが「分離壁」である。イスラエル政府の名目上の説明は「自爆テロの防止」であるが、分離壁の一部はグリーンライン(1949年停戦ライン)を超えて西岸地区内に入り込んでおり、入植地の事実上の領土化やパレスチナ人の生活を分断している。イスラエルは、のべ710キロの分離壁の建設を進めており、2020年6月現在、約64%が完成した[13]

イスラエル外務省は、ユダヤ人入植地が合法であるとする主張の根拠を、以下のように挙げている[14][15]

国際連盟パレスチナ委任統治決議で、ユダヤ人の数千年に及ぶ古代の故郷に国家樹立する権利が認められている。

1993年以降のパレスチナ自治政府との交渉では、入植地について何ら取り決めをしていない。恒久的地位協定の締結までの間は、パレスチナ自治政府が入植地やイスラエル人に対する管轄権や支配権を持たないことに明示的に合意した。

よって、入植地の建設は、この地域全体の最終的な恒久的地位に影響を与えない。この禁止が建築に適用されるとすれば、どちらの側もそれぞれの地域社会のニーズに合わせて住宅を建てることは許されていないという不合理な解釈につながるだろう。

イスラエルの入植地建設は、国際法に合致したものである。1949年のジュネーヴ第4条約違反という指摘は当たらない。なぜなら、ジュネーヴ条約は先祖代々の地や不当に奪われた土地への帰還を妨げるものではないからだ。西岸(ユダヤ・サマリア)は、古代よりユダヤ人の居住地だった。ユダヤ人の入植を禁じたのは、ヨルダン占領下の時代(1948年 - 1967年)だけだった。ヨルダンによる占領は、国際的に認められておらず、ヨルダンおよびガザ地区のエジプトはユダヤ人の排除と、ユダヤ人への土地売却を禁止する暴挙を働いた。この暴挙によってユダヤ人の権利を無効にすることは許されず、ユダヤ人による既に行われた土地取得は、今日まで有効である。

イスラエル入植地はアラブ人を追放することを目的とした物ではなく、実際に行ってもいない。また、入植地はヨルダン川西岸の3%程度の面積である。

パレスチナ人がすべての入植地の解体を要求するのは、ユダヤ人を追放しようとする一種の民族浄化である。対照的に、イスラエルではユダヤ人とアラブ人が共存している。

入植地が存在するのは係争地であり、イスラエルは他国の領土を占領していない。占領地ではない以上、国際法違反には当たらない。

入植地を事実上違法であり、あるいは「植民地」と主張することは、この問題の複雑さ、土地の歴史、そしてこの事件の独特の法的状況を無視している。

イスラエルによるヨルダン川西岸地区の強硬的な実効支配については国際的な非難が行われており、2016年12月23日の国連安保理では、イスラエルのパレスチナ占領地への入植活動を「法的な正当性がなく国際法に違反する」とし「東エルサレムを含む占領地でのすべての入植活動を迅速かつ完全に中止するよう求める」決議が採択され、賛成14票(アメリカのみ棄権)で可決されている。イスラエルの友好国であるアメリカは同様の決議に対ししばしば拒否権を行使していたが、今回は棄権するという異例の事態となった[16]。実質的にイスラエルとの境界線となっている分離壁には2004年に国際司法裁判所が「イスラエル政府の分離壁の建設を国際法に反し、パレスチナ人の民族自決を損なうものとして不当な差別に該当し、違法である」という勧告的意見を出し[17]国際連合総会でも建設に対する非難決議がなされている[18]

2020年、イスラエルはヨルダン川西岸地区の一部を併合する計画を打ち出した。同年6月24日、国連安全保障理事会はオンラインで会合を開き、国連、欧州およびアラブ各国は計画が実現すれば中東和平が打撃を受けると警告を発した。一方、アメリカはイスラエルの計画への支持を表明した[19]

2024年2月、米国はヨルダン川西岸地区へのイスラエル人入植者過激派への経済制裁を開始した[20]。同年4月には、EUもヨルダン川西岸地区及び東パレスチナへのイスラエル人入植者過激派に対する経済制裁を開始した[21]
パレスチナパレスチナの県(灰色の部分は統治外)「パレスチナ国の行政区画」も参照

パレスチナ人による自治政府の管轄下はヨルダン川西岸地区の約4割ほどであり、そのうちパレスチナ政府が完全に支配下に置いているのは2割にも満たない(2000年)。


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