『巫女の予言』にその名前が登場するフロージュンとフィヨルギュンもまた、オーディンの子であるトールの母とされている[3]ため、ヨルズに同一視される。また『詩語法』では「大地」の言い換えとして、「ヨルズ」と並び「フロージュン」「フィヨルギュン」が挙げられている[4]。
『詩語法』では、ヨルズを表すケニングとして、「トールの母」「シヴの義母」「オーナル(アンナル)の娘」「ノーットの娘」「アウズの姉妹」「ダグの姉妹」「オーディンの花嫁」「フリッグのライバル」「リンドのライバル」「グンロズのライバル」「ユミルの肉」(すなわち「大地」)、「風の館の床または底」「獣たちの海」が挙げられている[5]。またトールのケニングとして「ヨルズの子」というものも挙げられている[6]。
ヨルズという言葉は、古ノルド語で「大地」を指す一般名詞であった。またこの語は現在の北欧諸語における同義語の祖語となっており(アイスランド語の jord, フェロー語の jord, デンマーク語・スウェーデン語・ノルウェー語の jord)、また英語の earth の同根語ともなっている。
フィヨルギュンという言葉は、ゴート語の fairguni (山)や古英語の firgen (山の森)、そしてバルト・スラヴ族(en) の雷神 Perkunos (en) と同根語であると考えられている。これは、ゲルマン神話においては新世代の雷神 *Tunraz の祖父、あるいは雷の化身としてしばしば登場する、原インド・ヨーロッパ人(en) の(あるいは少なくとも北部地域のバルト=スラヴ=ゲルマン人の)雷神を指す言葉である、インド・ヨーロッパ祖語の *Perk(w) を説明できるかもしれない。
脚注リヒャルト・ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指環』には、ヨルズに相当する大地の女神エルダ(Erda)が登場する。ヴォータンに警告を与える知恵深き女神で、ブリュンヒルデの母となる。[脚注の使い方]
注釈^ なお『ギュルヴィたぶらかし』および『ロキの口論』で言及される、フリッグの親とされるフィヨルギュン (Fjorgynn) は別人である。詳細はフィヨルギュン参照。
出典^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』231頁。
^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』232頁。
^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』14頁。
^ 『「詩語法」訳注』89-91頁。
^ 『「詩語法」訳注』33-34頁。
^ 『「詩語法」訳注』17頁。
参考文献
V. G. ネッケル他 編『エッダ 古代北欧歌謡集』谷口幸男訳、新潮社、1973年。ISBN 978-4-10-313701-6。
谷口幸男 (12 1983). “スノリ『エッダ』「詩語法」訳注”. 広島大学文学部紀要 第43巻 (特輯号3).
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