ヨハネ・パウロ1世_(ローマ教皇)
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1972年に、ルチャーニが総大司教を務めていたヴェネツィアでは、聖職者や低所得者層への低金利融資を行っていたカットーリカ・デル・ヴェーネト銀行(Banca Cattolica del Veneto)が、大規模な陰謀に巻き込まれていた。同行はバチカンの運営資金調達や資金管理などの財政を取り仕切るバチカン銀行(正式名称は「宗教事業協会」、Istituto per le Opere di Religioni/IOR)の総裁で、マフィアフリーメーソンロッジP2などの秘密組織と深い関係を持っていたアメリカ生まれのポール・マルチンクス大司教と、バチカン銀行の主力取引行であるアンブロシアーノ銀行ロベルト・カルヴィ頭取の、脱税と株式の不法売買のために秘密裏に売却された。

これに対して、ルチャーニ総大司教はバチカンに抗議をしたものの、マルチンクス大司教がパウロ6世から直々にバチカン銀行総裁に任命されていたことから、パウロ6世へ累が及ばないように巧みに抗議を行ったことなどがパウロ6世に感銘を与え、パウロ6世からの信頼を勝ち取った。このことも影響し、翌年の1973年には枢機卿に選ばれた。
枢機卿

1973年に枢機卿に選ばれた後は、主に発展途上国への支援や貧困層の救済に尽力し、またパウロ6世の強い信頼を受けたものの、バチカン内の政治的、金銭的な動向に対しては極めて無欲であったと言われている。
「ヨハネ・パウロ1世」ヨハネ・パウロ1世の紋章教皇就任後にバチカンのバルコニーから演説するヨハネ・パウロ1世(1978年)

1978年8月6日、パウロ6世の帰天を受けて行われたコンクラーヴェにおいて、「本命」と目されていたジュゼッペ・シーリ枢機卿やブラジル出身のアロイージ・ロシャイデル枢機卿を退け、1日目の3回の投票でアルビーノ・ルチャーニ枢機卿が新教皇に選ばれた。

教皇名は「ヨハネ・パウロ」となり、複合名を初めて採用した教皇となった(これはヨハネ23世とパウロ6世前教皇の改革路線を継承するという意志の表れとも言われる)。また通常、初めての名前には2世が現れるまで「1世」と付けないのが通例であったが、8月26日の就任当初から「ヨハネ・パウロ1世」を自ら名乗っている。これには「ヨハネとパウロという法王名を組み合わせた初めての例だから」「(バチカンの)刷新の思いを込めた」などの説がある[1]
改革

ヨハネ・パウロ1世は、様々な意味で型破りな教皇であった。複合名を初めて採用したことを皮切りに、虚飾的な事柄に対して非常に改革的に臨み、例えば教皇演説の中で、それまでの教皇が伝統的に自らを「」と呼んでいたのを初めて「私」に変えた他、豪華な教皇戴冠式教皇冠も拒否した。教皇用の輿の使用も拒否したが、これは周囲の圧力で使わざるを得なかった。

さらに、難解な宗教用語やラテン語を多用していた表現を、ジュール・ヴェルヌや『ピノキオ』などを引用した、一般人にも理解しやすい平坦な表現へと改めた。こうした試みは「キリスト教の威厳を損なう」などとして保守派からは反感を買うこととなった。

また、中南米アフリカ諸国の聖職者をバチカンの要職につけた他、中南米やアフリカ諸国の貧困や独裁体制下で苦悩する民衆への同情を示し、アルゼンチンで行われていた「汚い戦争」を進めていたホルヘ・ラファエル・ビデラ大統領(上記の「ロッジP2」は反共産主義であるがゆえに同大統領を支援していた)がバチカンで行われた戴冠式に訪れた際には、直接的な表現でアルゼンチンの現状を非難した。

9月23日に、ローマ司教の職権によりサン・ピエトロ大聖堂を受け継いだ。当時イタリアで大きな支持を受けていた(反対に、当時の東西冷戦下でイタリアの保守派やアメリカなどからは強い反発を受けていた)ローマの共産党の市長と握手を交わし、ミサの後「教会の真の宝である貧しい人々のためには尽力するが、悪人に対しては教皇の教権を憚ることなく行使する」と宣言した。
避妊の解放

ヨハネ・パウロ1世は、避妊についての禁令を解くつもりでもあった。アメリカの幾つかのプロテスタント教会とは既に接触を持っていた。教皇に選出される直前、アメリカ議会代表団を歓迎し、避妊について女性の排卵期について語った後「どうして妊娠しない期間を、24日から28日にすると罪になるのか、私には理解できません」と述べた。そして、パウロ6世による旧来の産児制限反対を再確認する回勅『人間の生命について〔フマナエ・ウィタエ〕』は誤りだったと口にしていた。

「神からの贈り物である子供が出来ないようにする行為は罪である」とするそれまでの主流派に反して、「本当に子供を望んでいる女性のみが妊娠すべきである」との避妊擁護の考えを持っていた[2]
バチカン銀行の改革リーチオ・ジェッリ(中央)とジュリオ・アンドレオッティ首相(左)


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