ヨセミテ国立公園
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これらの岩石は「ルーフ・ペンダント」と呼ばれるが、それは花崗岩の上に乗った屋根のような状態を示すからである[7]

隆起によって形成された岩石の節理(割れ目)に浸食作用が働くことによって、現在の渓谷、ドームなどの地形が生み出された。節理が生じる間隔は、花崗岩及び花崗閃緑岩に含まれる二酸化ケイ素(シリカ)の量による。二酸化ケイ素の含有量が多いほど、岩石の強度は増し、節理の間隔は広くなる[8]

ワシントン・コラムやロスト・アローのような岩柱は、節理が交差して生まれる。こうした岩石の節理に対する浸食作用の中でも、この数百万年の間で最も大きかったのが、アルプス型の氷河によるものであった。それまで河川によってV字型に削られていた谷は、氷河によってU字型の渓谷になった(ヨセミテ渓谷やヘッチ・ヘッチー渓谷がそれに当たる)。また、節理どうしの間隔が広い花崗岩に、剥離作用(深成岩結晶が表面で膨張する傾向によって生じる)が加わることによって、現在のハーフドームやノースドームといったドーム地形、ロイヤル・アーチのようなアーチ地形が生まれた[9]
有名なポイントハーフドーム

ヨセミテ渓谷は、国立公園全体の1%にすぎないが、ほとんどの観光客が訪れ、滞在する場所である。エル・キャピタンは、花崗岩の絶壁であり、様々なクライミング・ルートがあること、1年を通じて登れることから、世界中でも人気の高いロッククライミングのスポットである。花崗岩ドームのセンチネルドーム、ハーフドームはそれぞれ渓谷の底から約1160メートル、1470メートルの高さがある。エル・キャピタン

ヨセミテには、トゥオルミ・メドウズ、ダナ・メドウズ、クラーク・レンジ、カセドラル・レンジ、クナ・クレストといった美しいエリアが数多くある。シエラネバダの尾根とパシフィック・クレスト・トレイルがヨセミテを縦走し、ダナ山、ギブズ山のような赤色変成岩の峰、コネス山のような花崗岩の峰がある。ライエル山は公園の中での最高峰である。

古代のセコイアデンドロン(ジャイアントセコイア)の林が、マリポサ・グローブ(200本)、トゥオルミ・グローブ(25本)、マーセド・グローブ(20本)の3か所ある[10]。セコイアデンドロンは、他のどんな木よりも巨大に成長する植物で、体積でも寿命でも際立っている。最後の氷期が始まる前には、今よりずっと広範囲に生えていた[11]
水系ヨセミテから流れ出すマーセド川

トゥオルミ川とマーセド川の水系は、公園内のシエラネバダ山脈の尾根に沿って流れ出し、およそ910mから1,200mの深さの渓谷を作り出している。トゥオルミ川は公園の北半分、約1800km2の範囲の水を集め、マーセド川は公園の南側の峰々、カセドラル・レンジやクラーク・レンジに源流を発し、約1320km2の範囲から水を集める[12]

氷河洪水、河川の流れなど、水の作用は、公園の地形の形成に大きな役割を果たした[12]。また、公園内には約3200の(100m2超)、二つの貯水池、2700kmに及ぶ河川があり、これらも上記の二つの大きな水系の一部をなす[13]湿地は、公園各所の渓谷の底に見られ、これも季節的な洪水や地下水の動きなどを通じて近くの湖・河川と水系的につながっていることが多い。草地の動植物生息域は標高910mから3,400mの範囲に散らばっているが、多くが湿地である。河川沿いの動植物生息域も、同様に多くが湿地である[14]U字谷から流れ落ちるブライダルベール滝。

ヨセミテは、狭い地域に多数のが集まっていることで知られる。急峻な崖、氷河の段差、懸谷(氷河の本流に向かって落ち込んでいる支流の谷)などが多いため、特に雪解けの4月から6月にかけては滝が生まれる条件がそろっている。ヨセミテ渓谷にある739メートルのヨセミテ滝は[15]、北アメリカで最も高い滝である。同じくヨセミテ渓谷にあるリボン滝は、491メートルであるが、水が一気に垂直に落下する距離においては最も高い[11]。ヨセミテ渓谷の中でも有名なのが、ワウォナ・トンネルの東出口のトンネル・ビューポイントから見えるブライダルベール滝である。ヘッチ・ヘッチー渓谷のワパマ滝もまた素晴らしい滝である。そのほか公園内には一時的に生まれて消える滝が何百とある。

氷河は、1日中日陰になる北側又は北東側斜面の圏谷などに、比較的小規模に見られる。ライエル・グレイシャーは、ヨセミテ最大の氷河であり、65ヘクタールある[16]。現在ある氷河は、ヨセミテの景観を作り出した巨大な氷期の大氷河が残ったものではない。氷期が終わった後に訪れたネオグラシエーションの一時期に形成されたものである[10]気候変動により、世界中にある氷河の数もサイズも大幅に小さくなっている。ジョン・ミューアが1871年に発見してヨセミテの起源と氷河の関係についての彼の理論を支えたマーセド・グレイシャーなど、ヨセミテの多くの氷河も消失し、地表面積にして75%までが失われてしまった[16]
気候

ヨセミテ渓谷(1220m)
雨温図説明

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  157 9-3  155 13-2  132 150  76 182  33 235  18 289  10 3212  8 3211  23 308  53 234  140 140  142 9-3


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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