古来、文豪や作家達が、ユーモアに対して様々な定義を付けている。またウィットとの境界線も明確ではなく、両者が混同されることもある[9]。
18世紀後半、ロマン主義が盛んになる中で、哲学者や文学者達は、ユーモアの定義づけと考察に奮励した。その中心人物だったジャン・パウルは、ユーモアについて、世界との関連や、パロディや冗談との差異など、様々な観点から分析、考察を行い、大きな業績を残した。また、ゾルガー、ゲーテ、ヘーゲルらも、ユーモアに対する独自の解釈、研究を発表した。 元々ユーモアとは体液を意味する「フモール」という言葉だった。ヒポクラテスが、人間の健康は四つの体液から構成され、どれか一つの量が基準値を逸脱すると不調になるという『四体液説』を指摘するようになると、次第にユーモアの示すものは体液から人の体調へと変わり、さらに、調子の変わった人物を指す意味へと変化した。医学・生理学用語だった「フモール」を、美学的な用語の「ユーモア」として使い始めたのは、ルネッサンス時代の文芸批評家たちだった[10]。そして、17世紀になってイギリスで気質喜劇という形式の演劇が勃興すると、おもしろさ、おかしさ、滑稽さ、特異性などを意味するように、語意は変遷した。エリザベス朝時代のイギリスでは、奇矯なことが魅力的であるという風潮が一部にあり、そのためそうした奇矯な振舞いが横行し、「ユーモア」という言葉も、濫用と言われるほどに流行した[11]。(なお、ベン・ジョンソンやウィリアム・シェイクスピアは、こうした風潮に辟易していた、という。) 「ユーモア」とは伝統的な発音で、イギリスでは近世に入ってからは「H」を発音し「ヒューマー」と呼ぶようになった。何時頃から「ヒューマー」という呼称が定着したかは定かでは無いが、英文学者で言語学に詳しい外山滋比古は、1920年に発行されたイギリスの国語辞典OEDでは既にヒューマーという発音が採用されていることから、これを20世紀初頭であろうと推測している[12]。日本では「ユーモア」という発音が一般的なことから、発音の変遷も勘案して、この英国式ユーモアの概念が日本に輸入されたのは19世紀であろうと考えられている。 典拠管理データベース: 国立図書館
歴史
脚注[脚注の使い方]
注釈
出典^ 大辞泉「ユーモア」
^ ブリタニカ国際大百科事典「ユーモア」
^ 外山滋比古「ユーモアのレッスン」(中公新書) 6頁
^ 「エスプリとユーモア」8頁
^ a b c d e 『日本大百科全書』【ユーモア】
^ 「ユーモアのレッスン」24-26頁
^ 「ユーモアのレッスン」27頁
^ 「エスプリとユーモア」4頁
^ 「エスプリとユーモア」10頁
^ 河盛好蔵「エスプリとユーモア」6頁
^ 「エスプリとユーモア」6頁
^ 「ユーモアのレッスン」9頁
関連項目
笑い
滑稽
風刺
パロディ
言葉遊び
ユーモアの効用
ウィット ‐ 機転、気の利いたユーモア。
外部リンク
Humor (英語) - インターネット哲学百科事典「ユーモア」の項目。
Igor Krichtafovitch ⇒Humor Theory ? The Formulae of Laughter, Outskirts Press, 2006, ISBN 9781598002225
⇒Humor Theory ウエブサイト
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