ユダヤ人
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ゴビノーはアラブ人とユダヤ人をあわせてセム人種と呼び、これを白人の中でも他人種との混血度の高い二級集団と断じた[14]ナチズムはユダヤ人を人種として扱っているが、帝国市民法第一施行令による分類では、形式的にユダヤ教組織に属した人間も「人種としてのユダヤ人」になるとされた[15]

こうした見方からはユダヤ人特有の外見の特徴が存在するとされ、これに基づいた差別的検査も行われていた。しかし、ユダヤ人を身体的形質によって他と区別しうる集団としてとらえることはできず[16]、すでに白人のみならず多数の黒人がともにユダヤ人として認められている。

現代社会ではユダヤ人はおおむね居住地のほかの住民と同化しており、これを血統主義的観点からのみ区分することはできない。そのため、ユダヤ人のハーフやクオーターといった形容は、まず用いられない。ドイツの文芸評論家マルセル・ライヒ=ラニツキは、自伝『わがユダヤ、ドイツ、ポーランド』(柏書房)の中で「私は、半分のポーランド人、半分のドイツ人、そして丸ごとのユダヤ人だ」と冗談めかした言い方でこのあたりの機微を突いている。

大澤武男は「歴史的な見地から『ユダヤ人』をユダヤ教を信じる人々と規定するなら『ユダヤ教徒』と呼ぶべきであり、単に『ユダヤ人』と呼称するのは適当ではない」とし、ユダヤ人を人種民族と規定する見方は、19世紀以降のナショナリズム社会進化論反ユダヤ主義の産物であり、また国籍を示す用語でもないという[17]。「ユダヤ人」は、キリスト教文化圏では一種の宗教的差別概念、また少数派、無国籍放浪者としての社会的差別概念を含む言葉として用いられてきた[17]。現在、イスラエル人やユダヤ教徒、またはユダヤ教がもたらした伝統や文化を堅持している人々を指して、ユダヤ人と呼ぶとする[18]

内田樹は、英語であれば Jew や Jewish の一語で表せるが、日本語では単に「ユダヤ」とは呼ばず、その後に「?人」「?民族」「?教徒」とつけて呼び習わしているが、「教徒」では宗教的な意味合いだけで考慮されることが多く、「?人」「?民族」という表現から(民族と人種の概念を混同して)「ユダヤ人」がひとつの「人種」であるという誤った印象を受けてしまう人もいるが、実際にはユダヤ人とほかの民族集団とを区別しうる有意な人種的特徴はないという[16]
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この節の加筆が望まれています。


同化ユダヤ人 - 全世界に散らばり、現地に「同化」した状態のユダヤ人。ユダヤ教以外の宗教を信仰する、シナゴーグ(ユダヤ教の会堂)以外で結婚式を挙げる、非ユダヤ人と結婚するなど。

両属性ユダヤ人 - ユダヤ教に興味がない、または無神論者でユダヤ教の生活習慣に従わないため、ユダヤ人からは「非ユダヤ人」と見なされるが、ユダヤのアイデンティティーを強く持っているユダヤ人。ユダヤ人と非ユダヤ人の境界線上にあるユダヤ人。

東欧系ユダヤ人(アシュケナジム) - ユダヤ系のディアスポラのうちドイツ語圏や東欧諸国などに定住した人々、およびその子孫。言語はイディッシュ語(ユダヤドイツ語)。

西方ユダヤ人 - フランスやドイツ語圏に居住し、イディッシュ語を話すアシュケナジム。

東方ユダヤ人 - 非ドイツ語圏に居住し、イディッシュ語を話すアシュケナジム。


スペイン系ユダヤ人(セファルディム) - ユダヤ系のディアスポラのうち、おもにスペインポルトガルまたはイタリアトルコなどの南欧諸国に15世紀前後に定住した人々、およびその子孫。言語はラディーノ語(ユダヤスペイン語)。

ナチズムによる定義

ユダヤ人 - 両親・祖父母のうち一人でもユダヤ教を信仰したことがある人。非アーリア人

完全ユダヤ人 - 祖父母のうち3人以上が「人種上の全ユダヤ人」である人。信仰によらない。

非ユダヤ教徒ユダヤ人 - ユダヤ人と婚姻していた人。


古代ユダヤ人の生物学的子孫はパレスチナに住むユダヤ教徒やキリスト教徒やイスラム教徒である。

民族性

歴史上、ヨーロッパのキリスト教社会で多くの中傷や迫害を受けたが、現在でもユダヤ人は民族(コミュニティ・ユダヤ教徒)として存続している。

ユダヤ教徒は教義上イエス・キリストメシアと認めなかった(メシアニック・ジュー異端視された)。また、イエスに従った使徒もユダヤ人であったにもかかわらず、キリストはユダヤ人によって十字架にかけられたという俗説が古代から中世にかけて流布し、それまで「神に選ばれた選民」だったユダヤ人は一転して「神(イエス)を殺した賎民」と差別されるようになった。こうした宗教的な理由や、ユダヤ人はキリスト教社会で疎まれていた金貸しが多かったという経済的理由が歴史的な反ユダヤ感情の要因としてしばしば挙げられる[19]

18世紀ごろから宗教的迫害が薄れていったことで、ユダヤ人は自由な信仰、活動が可能になり、さまざまな商工業分野でユダヤ人が活躍するようになった。近現代には企業の創業者や科学者を多数輩出している[20]

ユダヤ人はタルムードに従って行動すると思われているが、それはラビ的ユダヤ教徒の場合に限られる。ただし、一般的なユダヤ人の宗教はラビ的ユダヤ教である。ユダヤ人は何よりも学問を重視すると言われる。紀元70年ローマ軍によりイスラエルが一度滅びたときもラビ・ヨハナンが10人が入れる学校を残すことを交渉し、ローマ皇帝ティトゥスがこれを許したため、ユダヤ人は絶滅を免れた。今ではもっとも知的な民族集団のひとつと考えられており、民族別知能指数では世界でもっとも高く[21]、一例としてノーベル賞の22%、フィールズ賞の30%、チェスの世界チャンピオンの54%がユダヤ人であるとも言われる。カール・マルクスジークムント・フロイトクロード・レヴィ=ストロースなど、近現代の哲学思想方面のキーパーソンを輩出しているほか、音楽業界にもユダヤ人が多いことが知られている[22]

ただしこういった民族主義的差別(贔屓)とも捉えられやすい統計論は、大衆に誤った認識を与えることもある。すなわち、前述したようにユダヤ人とは他の「?人」と呼ばれるような血縁集団とは異なり、あくまでも文化的集団として大枠で定義されているため、上記の統計結果から「ユダヤ人の血が流れている者は優秀な者が多い」といった結論に至るのは誤りであり、正確には「長きにわたって迫害されながらもあらゆる地域で継承されてきた歴史を持つユダヤ教の教育方法は、他言語・他文化への適応術やリスク管理能力養成などの面で優れているのではないか」といった程度の帰結にとどまる。

ドイツを中心とした地域に住みつき、中欧・東欧へ拡散したユダヤ人は、アシュケナージ(アシュケナジム)と呼ばれ、ドイツ語方言であるイディッシュ語を話していた。近代のドイツ語圏では彼らはある程度ドイツ文化に同化してドイツ語を使用するようになった。

中世前期のヨーロッパでは、ユダヤ人は農業、商業、職人などさまざまな職業に従事することができた。カロリング朝ではユダヤ人は聖書の民として保護され、11世紀頃までは国際的な交易の担い手でもあった。イタリア商人に東方貿易のお株を奪われると、ユダヤ人は消費貸借専門の貸金業に活路を見出した。中世後半期には、土地所有の禁止、ギルドからの締め出し、公職追放等により次第にユダヤ人の活動は制限されるようになり、農業手工業に従事することが困難になったユダヤ人は、質屋両替商、黄金の管理人、古物商、行商や市場での無店舗販売、芸能などで生計を立てていた。


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