ヤツメウナギ
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イギリスには、イングランドヘンリー1世がヤツメウナギ料理の食べ過ぎで死亡したといわれる伝説[17]がある。

ポルトガルには「ヤツメウナギの卵」(lampreia de ovos)というケーキが存在しており、クリスマスに家庭で作られる。これは、ヤツメウナギが貴重品であった時代(現在も高級食材であるが)に、庶民がヤツメウナギを模した菓子を作った事に起源があるといわれる。
文化史
東洋

現代の日本語での漢字表記は「八目鰻」「八つ目鰻」などだが、江戸時代
1712年に成立した和漢三才図会本草綱目では「鱧」と表記されている。この字は現在の日本では、ハモに充てられている。現在の中国では「鱧」は主にライギョを指す。また1666年訓蒙図彙では「?」(今日の日本では一般にウツボを指すが本来はタウナギを指した字)や「?魚」(現代ではタウナギ)の字を充てられている。

和漢三才図会によれば、「頭に七つの斑點があり、北斗の象をなす」「夜は首を仰け北に向かって禮拝する」とある。ただし、このような生態が近年観察された例は知られておらず、真偽はさだかでない。

産地である北海道江別市では、市のマンホールなどにヤツメウナギの意匠が見られる。

西洋

プリニウスの『博物誌』をはじめ、いくつかのヨーロッパの文献には「ローマ帝国時代にはヤツメウナギの養殖用の池が作られており、主人が罰する奴隷を生きたまま養殖池に投げ入れてヤツメウナギのエサにした」といった内容の記述が見られる。ただし、その真偽は定かでない。当時からヤツメウナギはたびたび他の動物と混同されており、この逸話はウツボがモティーフではないかとも目される[18]。実際に、『博物誌』でのヤツメウナギの項の大部分は、アリストテレス動物誌』のウツボの項によく対応するという[18]。大西洋産の大型種ウミヤツメは、その体型・模様ともにウツボに似る。またヨハン・ヤーコプ・ショイヒツァーによる『神聖自然学 (Physica Sacra)』にもヤツメウナギはウナギ・ウツボなどと並んで描かれており、これらと混同される例は時代・地域を問わず非常に多い。

フィンランドのサタクンタ県では県の魚に指定されており、県下にある自治区の紋章にもヤツメウナギが見られる。

スペインサモラ県にあるパハレス・デ・ラ・ランプレアナ(スペイン語版) (Pajares de la Lampreana) やマンガネセス・デ・ラ・ランプレアナ(スペイン語版) (Manganeses de la Lampreana) といった地名の「Lampreana」はヤツメウナギ (lamprea) に由来しており、紋章にもヤツメウナギが描かれている。


『和漢三才図会』50巻408頁 河湖無鱗魚 やつめうなぎ

『訓蒙図彙』より。右下の図がヤツメウナギ。

ヤツメウナギ漁を描いた江別市のマンホール(彩色版)

ヤツメウナギ漁を描いた江別市のマンホール(通常版)

ヤツメウナギをモティーフとした紋章フィンランド, ナッキラ)

ヤツメウナギをモティーフに含む紋章フィンランド, エウラヨキ

ヤツメウナギをモティーフに含む紋章スペイン, パハレス・デ・ラ・ランプレアナ)

ヤツメウナギをモティーフに含む紋章スペイン, Villalba de la Lampreana)

ヤツメウナギをモティーフに含む紋章フランス, fr

健康全書 (Tacuinum Sanitatis) より、ヤツメウナギ漁。

焼きヤツメ(ロシア。一般的な料理なのかどうかは不明。)

スペイン、サンティアゴ・デ・コンポステーラの市場に並ぶヤツメウナギ。

生態系への影響サケ科魚類に寄生したヤツメウナギ詳細は「ウミヤツメ」を参照

北米大陸五大湖では、本来は外洋とつながる河川セントローレンス川1本のみだった。19世紀初頭から始まったいくつかの運河建設により、ハドソン川など複数の他河川とつながった。

その結果、大型種のウミヤツメが大量に流入。各湖の魚類に寄生したため、漁業資源として重要なサケ科をはじめ多くの魚類が激減する深刻な被害をもたらした。そのため、1991年から年間約26000匹のオスを捕らえ、不妊化処理を行い川に戻すという事業が行なわれている[19]
ヤツメウナギ類の分類

ヤツメウナギ目 Petromyzontiformes は、現生のもので3科10属38種を含む[20]。ただし、この分類も一例であり、しばしば変更される。

たとえば日本産カワヤツメは2005年頃までLampetra japonicaとされていたが、のちにLethenteron japonicumと属が変わった。2012年現在では、Lethenteron camtschaticumのシノニムともされている[21]。body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper{margin-top:0.3em}body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper>ul,body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper>ol{margin-top:0}body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper--small-font{font-size:90%}

ヤツメウナギ科 Petromyzontidae

ヤツメウナギ亜科 Petromyzontinae

アメリカヤツメ属 Ichthyomyzon(6種)

Ichthyomyzon bdellium (Jordan, 1885)

Ichthyomyzon castaneus Girard, 1858

Ichthyomyzon fossor (Reighard and Cummins, 1916)

Ichthyomyzon gagei (Hubbs and Trautman, 1937)

Ichthyomyzon greeleyi (Hubbs and Trautman, 1937)

Ichthyomyzon unicuspis (Hubbs and Trautman, 1937)


ウミヤツメ属 Petromyzon(1種)

Petromyzon marinus (Linnaeus, 1758) : ウミヤツメ ウミヤツメ Petromyzon marinus。大西洋岸に生息する大型種。特に五大湖周辺では駆除の対象(「#人間との関係」に詳述)。



Lampetrinae

カスピヤツメ属 Caspiomyzon(1種)

Caspiomyzon wagneri (Kessler, 1870)


Tetrapleurodon属(2種)

Tetrapleurodon geminis (Alvarez, 1964)

Tetrapleurodon spadiceus (Bean, 1887)


Eutosphenus属(7種)

ウクライナヤツメ属 Eudontomyzon(4種)

Lampetra属(7種)

Lampetra fluviatilis (Linnaeus, 1758) : ヨーロッパカワヤツメ

Lampetra tridentata (Richardson, 1836) : ミツバヤツメ

Lampetra morii (Berg, 1931) : アリナレスナヤツメ


カワヤツメ属 Lethenteron(6種)

Lethenteron camtschaticum (Tilesius, 1811)

Lethenteron japonicum (Martens, 1868) : カワヤツメ

Lethenteron kessleri (Anikin, 1905) : シベリアヤツメ

Lethenteron matsubarai (Vladykov and Kott, 1978)

Lethenteron reissneri (Dybowski, 1869) : スナヤツメ スナヤツメLethenteron reissneri。中国北部や朝鮮半島、九州以北の日本中の河川に広く分布する小型種。成体は何も食べず寄生も行わない。

Lethenteron zanandreai (Vladykov, 1955)




ミナミヤツメ科 Geotriidae

フクロヤツメ属 Geotria(1種)


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