モーグ・シンセサイザー
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「コンステレーション」(Constellation,「星座」の意)とは、1973年頃 Tom Rhea が企画したモーグ社のシンセサイザー・アンサンブルシステムで、予告広告によれば下記構成が1974年早期にリリースされる予定だった [12]。プロトタイプ機は エマーソン・レイク・アンド・パーマーに提供され、『恐怖の頭脳改革』のレコーディングとツアーで使用されたが、システム全体の商品化は頓挫した。
アポロ (Apollo, 琴を持つギリシャ神話の神アポロンの意)
ポリフォニックシンセサイザー [13] (→ 1975年 ポリモーグ・シンセサイザー)
ライラ (Lyra, こと座の意)
タッチセンシティブ付きソロシンセサイザー [2]
タウラス (Taurus, おうし座の意)
ベースペダル・シンセサイザー (→ 1975年 タウラス)
ポリモーグポリモーグ詳細は「ポリモーグ(英語版)」を参照

ポリモーグ (Polymoog) は、1975年にモーグ社が開発したシンセサイザーである(参考書籍: 「シンセサイザーがわかる本 予備知識から歴史、方式、音の作り方まで」

相原耕治、スタイルノート、2011年、p53-54)。フルポリフォニック(一度にいくつでも音を出すことができる)で鍵盤演奏可能な初のモーグ・シンセサイザーである(参考書籍: 「シンセサイザーがわかる本 予備知識から歴史、方式、音の作り方まで」

相原耕治、スタイルノート、2011年、p53-54、   「たった1人のフルバンド YMOとシンセサイザーの秘密」松武秀樹、勁文社、1981年、p149

)。8種類のプリセット・ボイスがあり、ライブ演奏のときでも簡単に音色を変えることができる(参考書籍:@   「たった1人のフルバンド YMOとシンセサイザーの秘密」松武秀樹、勁文社、1981年、p149

Dave Luceによって開発されたもので、ロバート・モーグは開発には関わっていない。ライブパフォーマンスにおいて、プリセット音色による素早い音色チェンジと、カスタム音色を自由に作れる機能の両立を目指した。発音機構は1937年ハモンド・ノヴァコードで最初に製品化され[1]、分周オルガンやストリングス・キーボードで広く普及したトップ・オクターブ・シンセシス(top octave synthesis=TOS)で、ピアノ・ハープシコード・ブラス・ストリングスといったプリセット音色を出発点とし、プリセットそのもの、元波形にパラフォニック形式の単一ローパス/ハイパス・フィルターを通したもの、3バンドパラメトリックイコライザーの一種であるレゾネータを通したものをミックスして最終出力とした。LFOとS&Hのモジュレーション機能、ベロシティ・センシティヴ=71鍵キーボード、キースプリット、リボンコントローラーによるピッチベンド、フットコントローラーのPolypedal等が主な特徴。独自ICを開発し、コストの低減をはかった。正式な発表は1975年だが、1973年にはエマーソンやパトリック・モラーツなどが試作品を使用していた。発売後はクラフトワーク、ゲイリー・ニューマン、日本ではイエロー・マジック・オーケストラも使用していた。ポリモーグ・シンセサイザー (Polymoog synthesizer=model 203A) と廉価版でプリセットのみのポリモーグ・キーボード (Polymoog keyboard=model 280A・1978年) の2機種が存在する。ポリモーグ・キーボードはプリセット音色数が増え、Vox Humanaというヒューマンボイス音色を提供するための基板を追加搭載している。ポリモーグのプロトタイプとして、プリセットのみで音色数が少ないアポロ(apollo)という機種もあった(上節「コンステレーション」参照)が、市販はされていない。
タウラス・ペダル・シンセサイザータウラス I 詳細は「モーグ・タウラス(英語版)」を参照

タウラス・ペダル・シンセサイザー (Taurus Pedal Synthesizer) は「コンステレーション・プロジェクト」から独立して1976年に商品化されたシンセサイザーである。後述のタウラス・ツーと区別するためしばしばタウラス・ワン (Taurus I) と呼ばれる。C-Cの13足鍵盤、プリセット音色=3 (Tuba/Bass/Taurus)、ユーザープログラマブル音色=1、オシレーターレンジ=5オクターブ、2オシレーター、4ポール・ローパスフィルターによるVCF, A/S/Dタイプのラウドネス・コントロール付きVCA, 2フット・スライダー、ポルタメントなどにより制御可能なモノフォニック仕様。設計者はポリモーグ同様Dave Luceである。

このベースペダル・シンセサイザーのサウンドはボブ・モーグがデザインした楽器の持つ低音とはニュアンスの異なる独特の太さを持ち、その重厚なベース持続音をベースペダルポイントやドローンとして演奏に使用するスタイルでピンク・フロイドイエスジェネシスマリリオンU.K.以降のジョン・ウェットンラッシュU2モトリー・クルーレッド・ツェッペリンポリス時代のスティングアンディ・サマーズラウドネス山下昌良ANTHEM柴田直人レインボー時代のリッチー・ブラックモア(1977年にはキーボーディストのデヴィッド・ストーンも)、イングヴェイ・マルムスティーンなど新旧のハードロックヘヴィメタルバンドやプログレッシブ・ロック・バンドを始め多くのアーティストに愛用された。キーボーディストよりもむしろギタリストやベーシストによる使用が顕著である。タウラス・ワン独特の重低音の要因としては、変調入力を持たずモーグには珍しいV/Hz方式の安定度が高いVCOと、VCF/VCAのローエンド・ブースト特性、2オシレーターのデチューン時にフェイズ・キャンセレーションが生じにくい発振器の混合回路構成等が挙げられている。しかしベークライト製の足鍵盤部や外装部品の物理的な欠損が生じやすく美品での残存は少ない。

1981年に発表されたタウラス・ツー (Taurus II) は、18鍵の足鍵盤にストレート・スタンドを立ててローグの音源部を乗せたモデルだが、タウラス・ワンとは全く出音が異なる別種の楽器である。

ボイジャーを製品化した後、タウラス・ワンのユーザとしても知られるある著名なミュージシャンが、モーグに電話をかけてボイジャーを購入した感想を述べた。彼は開口一番「また、だめな楽器を世に送り出したな。ボイジャーもミニモーグと同じでタウラス・ワンと同じ音が出なかったよ」と言って笑った。モーグは笑って答えた。「全て楽器にはそれぞれの音があり、異なった楽器である以上、同じ音が出ることの方がおかしい。それに、それを誰よりも一番分かっているのは君のはずだ。なにしろ、君は今も何十本ものベースをステージに並べて曲ごとに忙しく交換しているんだから」。

2009年、モーグ・ミュージック社はタウラス・ペダル・シンセサイザーの再製品化(Taurus III)をアナウンスした。現在は生産完了しており、音源部分をMIDIモジュールのMinitaurとして販売している。ちょうどTaurus IIの音源部分に手弾き用鍵盤をつけたRougeと同様の位置づけとなる。
メモリーモーグ詳細は「メモリーモーグ(英語版)」を参照

メモリーモーグ (Memorymoog) は作成した音色を100種類記憶=メモリーできる6音ポリフォニックシンセサイザー。フィルター回路以外はダグ・カーティス (Douglas R. Curtis,2007年1月没)のCurtis Electromusic社製CEM chips =CEM3340(VCO) CEM3360(VCA) CEM3310(EG)を使用し、Z80によるキーアサイン方式(CPUアサイン方式)で発音制御をする。発表は1982年だが、1984年にMIDIに対応したメモリーモーグプラス (Memorymoog Plus) が発売された。ミニモーグを6台内蔵したかのような構成で、トータル18オシレーターを使用可能。モノフォニックモードでそれらを一斉に鳴らすこともできる。ロバート・モーグは携わっておらず、Rich Walborn(Prodigy等の開発者)とRay Casterが開発を担当した。
PHATTYS

Phattysとは、Little Phatty(後期モデルのStage IIを含む)、Sub Phatty、Slim Phatty(Little Phatty Stage IIの鍵盤無しモジュール版)の総称である。現行のSubsequent37もこの系列に属する。moogとしては安価な、幅広いユーザー層に向けた量販モデルである。

Little Phattyは2006年に発売された。モーグ博士が最後に初期設計を手がけた製品ではあるが、完成の前に逝去しているため、最後まで関与した製品はボイジャーとなる。当初はツマミの多い伝統的なデザインで音色メモリー機構はなかった。Axel Hartmann氏を製品デザイナーとして招聘し、氏の意見で音色メモリー付き、自照式パラメータ選択ボタンとLED付き大型エンコーダで音作りをする機構が採用された。この機構は賛否両論があったが、Little Phattyは成功をおさめた。後継モデルのStage IIではUSB-MIDIを装備した。多くのカスタムカラーバリエーションがあり、限定モデルとして販売された。音色は高域が少ないまろやかな印象で、70?80年代モーグのアグレッシブな音色とは異なる。MIDIチェイン機構により複数台を接続するとポリフォニック化することができた。Sub Phattyは2オクターブ鍵盤の小型モデルである。サブオシレーターがついたのでこの名称となった。

Sub37 Tribute Editionは2014年にLittle Phatty StageIIの後継モデルとして発売された。評判がいまひとつだったパラメータ選択ボタン・大型エンコーダ式は排され、ツマミが多く搭載された伝統的なフロントパネルになったが、筐体のベース形状はLittle Phattyをそのまま引き継いだ。サブオシレータが装備され、ボイジャーと同様のモジュレーションバスも導入された。音色ダイレクト選択スイッチ、シーケンサー、デュオフォニック演奏モードなどの機能拡張も行われた。プラスチック軸の小型可変抵抗器を表面実装としたため、最初期ロットではVCFカットオフツマミ(大型)を頻回に回すと可変抵抗器のプラスチック軸が折れてしまうという不具合が多発、リコールされている。その後、丈夫な金属シャフトの大型可変抵抗器に変更、基板のレイアウトも変更された。Subsequent 37はSub37の後期モデル、マイナーチェンジモデルであり、外観や機能の違いはない。ミキサーセクションに改良を加え、波形が飽和しにくくなっていたり、ヘッドホンの出力が高められていたりなどの改良が加えられている。
Minitaur / Sirin

MinitaurはTaurus IIIベースペダルを元にした小型のMIDIベース音源モジュールである。PCエディター(有償)を用いることで、本体では操作できないパラメータを変更できる。SirinはMinitaurの派生モデルで、全世界1200台限定。ベース限定だったMinitaurの発音音域を広げたものであるが、音色は異なる。Minitaurの太く濁った粗野な音ではなく、細身で洗練された音である。
Mother 32 / DFAM / Subharmonicon


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