MOOGの音色を特徴付ける最も重要な要素として、梯子型4次ローパスフィルタ(LPF)が挙げられる。MOOGで使用している梯子型4次ローパスフィルタはMOOG博士の特許(アメリカ合衆国特許第 3,475,623号
Etherwave Theremin
Big Briar series 91
Etherwave Pro
Big Briar (1978年 - 2002年)、 Moog Music (2002 - ) [31]
テルミン (* 印 は生産完了)
Theremin Controller * (1982年 - 不明)
Big Briar series 91 * (1991年 - 1996年)
Etherwave Theremin (1995年 - )
Etherwave Plus
Ethervox MIDI Theremins * (1998年 - 不明)
Etherwave Pro * (2004年)
その他
Moog PianoBar * (2003年) Buchla and Associatesと共同開発 [32]
アコースティックピアノに装着し、内蔵音源やMIDI音源を演奏するための非接触型MIDI出力デバイス
Moog guitar (2008年 - ) [29]
Moogerfooger Bundle (プラグイン版moogerfooger) Bomb Factoryと共同開発
梯子型4次ローパスフィルタの特許と特徴
MOOG博士の特許は、CR(コンデンサ+抵抗)を用いたLPF,HPFを構成する際、トランジスタ(ベース?エミッタ間ダイオード)を抵抗素子(R)として使うことに特徴がある。これにより、僅かなベース電流値によって広範囲な抵抗値が設定出来る、すなわち、カットオフ周波数を広いレンジで可変出来る。更に、トランジスタをバッファとしても機能させており、LPF各段(CR)の分離が可能となる。各段のCRが干渉しないためカットオフ周波数近辺のキレが良い。これに対して、TB-303等ではトランジスタ(またはダイオード)を抵抗として使う点はMOOGと同様であるが、CR各段間にバッファ機能を入れない、すなわちCR各段を直結することで特許を回避した。結果としてカットオフ特性が鈍る(傾きが緩い)特性とならざるを得なかった。この傾きの緩さから、4次フィルタであるにもかかわらず、3次と間違われることがある。文献によっては「TB-303は3次LPFであるから独特な音となる」等といった誤った記述が見られるため、注意を要する。
梯子型4次LPFのもう一つの大きな特徴は、トランジスタの非線形性による歪の発生にある。例えば、電圧上昇率一定の鋸波を入力した場合、指数関数曲線状に増加する出力となる。この結果、歪が生じ、倍音が付加された音が生み出される。この点、トランジスタ等の非線形素子を用いた梯子型4次LPFは音源の一部を担っているという見方も出来る。この特徴は、特許を回避した派生版のLPFについても同様である。
※特許名称:バイポーラトランジスタのベース?エミッタダイオード抵抗を使用したハイパス及びローパスフィルタ。特許日:1969年10月28日。著名なMOOG奏者ガーション・キングスレイの誕生日と同じ。 モーグ・シンセサイザーは、まずラジオやテレビなどのジングル・メーカーに使用されたことで音楽業界内での知名度を高めた。電子音楽に関係する研究機関、学校、放送局といった施設費予算による購入層以外で、一般には高価であったこの楽器を個人や小規模な音楽プロダクションで購入可能だった顧客層は、コンスタントな音楽制作により一定収益を確保可能な商業音楽分野の音楽家に当初は限られていた。ジャン=ジャック・ペリーとのコンビネーション・ワークで「ペリー&キングスレイ」(ペリキン)として知られるガーション・キングスレイもそうしたミュージシャンの一人であった。エリック・シディの紹介で1967年にモーグから直接モジュラー・システムを購入したキングスレイは、後にディズニーが「エレクトリカルパレード」に使用した「バロック・ホウダウン」を含むヴァンガード・レーベルでの諸作と、世界的なヒット曲となった「ポップコーン」及び「ファースト・モーグ・カルテット」でのライブ活動でモーグ・シンセサイザーの存在をアピールした。 モーグ・シンセサイザーを最も世に知らしめたのは、1968年10月にウォルター・カーロスが発表した『スイッチト・オン・バッハ(Switched On Bach
モーグ・シンセサイザーの音楽界での使用例
ポピュラー音楽においては、ザ・モンキーズが1967年11月に発表したアルバム『スター・コレクター(Pisces, Aquarius, Capricorn & Jones Ltd.)』が最初期の使用例として知られる。「Daily Nightly」「Star Collector」の2曲で用いられたモーグ・シンセサイザーはメンバーのミッキー・ドレンツが購入したものであった。バーズが1968年1月に発表したアルバム『名うてのバード兄弟』やサイモン・アンド・ガーファンクルが1968年4月に発表したアルバム『ブックエンド』などでも使用された。『名うてのバード兄弟』の再発盤にはボーナストラックとしてインストゥルメンタル「Moog Raga」が収録されている。1968年9月にローリング・ストーンズが購入したモジュラー・システムは1968年のイギリス映画『パフォーマンス』にその姿を見ることができる。
1969年1月に購入したビートルズは、アルバム『アビイ・ロード』のレコーディングに使用してモーグ・シンセサイザーの知名度を高めた。
『スイッチト・オン・バッハ』を聞きモーグ・シンセサイザーに興味を持ったキース・エマーソンは、ナイスとロンドンのロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団が共演したロンドンのロイヤル・フェスティバル・ホールのステージで、モーグのモジュラー・システムを初めて使用した(「未来の<サウンド>が聞こえる 電子楽器に夢を託したパイオニアたち」マーク・ブレンド/著 ヲノサトル/訳、アルテスパブリッシング、2018年、p288)。マイク・ヴィッカースから借りたモジュラー・システムで、舞台ではプログラムは持ち主のマイク・ヴィッカースが担当した。その後、エマーソン自身も音色のプリセット機能を備えたモジュラー・システムを購入し、新たに結成されたエマーソン・レイク・アンド・パーマー (EL&P) のステージに導入することで、モジュラー・システムの視覚的な知名度をも高めた。レコーディングでは1970年のEL&Pのデビューアルバムに収録された「ラッキー・マン」にその代表的なポルタメント・サウンドを聞くことができる。エマーソンは、本来ライブ演奏向けではなかったシンセサイザーというスタジオ機器をステージに導入することで、演奏者と機械の格闘という視覚的要素をロックにおけるステージ・エンターテインメントに初めて取り入れた。ケーブルが複雑に入り組んだパネルのつまみを激しく動かして演奏し、時にリボン・コントローラーを携えて客席に飛び込み、リボン・コントローラーに仕込んだ火薬をステージから打ち上げる様子は、当時オーディエンスはもちろん開発者のモーグ自身にも大きな衝撃を与えた。
ドイツではモジュラー・システムの1モジュールである960・シーケンシャル・コントローラを発音変調制御に使用した反復フレーズを基本とする音楽がタンジェリン・ドリームの成功などで人気を獲得し、さらにクラフトワークなどのヒットによってテクノ・ポップという新しいジャンルへと利用法を拡大した。ステップシーケンサーによる人工的で制約的なフレーズとリズムの反復機能は、本来はゆらぎを持つ人間の生態リズムが、一定の基準によるゆらぎの少ない繰り返しのリズムに対して引き込み効果を持つという特徴に即したテクノやディスコ・ミュージックのスタイルとなり、ジョルジオ・モロダーは彼のミュンヘン・サウンドを構築して数多くのヒットを生んだ。