モモ
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弥生時代後期には大陸から栽培種が伝来し桃核が大型化し、各時代を通じて出土事例がある。桃は食用のほか祭祀用途にも用いられ、斎串など祭祀遺物と伴出することもある。平安時代 - 鎌倉時代には日常的な食材となり「菓子」として珍重されていたが、当時はスモモ程度の大きさで明治時代以降のモモとは異なる果実と考えられており[22]、それほど甘くなく主に薬用・花の観賞用として用いられていたとする説もある[17]江戸時代にさらに広まり、『和漢三才図会』では「山城伏見、備前岡山、備後、紀州」が産地として挙げられるほか、諸藩の『産物帳』にはモモの品種数がカキ、ナシに次いで多く、特に陸奥国と尾張国に多いと記されるほど、全国で用いられるに至った[23]

明治時代の中頃には、甘味の強い水蜜桃系(品種名:上海水蜜桃など)が輸入され、食用として広まった[17]。1875年(明治8年)、(中国)を調査していた内務省の武田昌次と岡毅、通訳の衣笠豪谷は、日本へ帰国時に多くの種苗を持ち帰ったが、その中に上海種と天津種の水蜜桃があった[22]。現在日本で食用に栽培されている品種は、この水蜜桃系を品種改良したものがほとんどである[24]。昔の桃は小ぶりで固く、果汁も少なかったとみられているが、現在の日本ではやわらかくて果汁が多いタイプの桃が主流で、これら栽培種の多くは岡山県の「白桃」が元になっている[12]。「白桃」は、1899年(明治32年)に岡山県磐梨郡可真村(現在は岡山市の一部)の大久保重五郎が上海種の実生から優秀な品種を発見したもので、さらに改良を進めて1927年(昭和2年)には新品種「大久保」を誕生させた[24]
品種

食用の品種(実桃)の分類を以下に示す。果実を食用するモモは、品質調査と消費者の嗜好調査を行うとともに、少低温要求性品種、ネクタリンや蟠桃品種、多様な果色や果肉の品種、高品質品種といった品種開発が行われていて[25]、特に実のかたさ、糖度、酸味、香りが重要視されている[26]。モモの品種は非常に多くあるが、欧米ではリンゴブドウは品種表示されることになっているが、モモの品種名は任意表示であることから、消費者による認知度は低いと考えられている[27]

世界で栽培される品種の多くは、アメリカカリフォルニア州で育成されたものである[28]。特にネクタリンの「Big Top」は、ヨーロッパ市場に大きな影響を与えた品種である[29]。日本と中国は果肉が白く酸味が少ない品種、アメリカでは果肉が黄色く酸味がある品種、スペインやラテンアメリカ諸国では不溶質で果肉が黄色い品種が伝統的に好まれるが、嗜好の多様化も進んでいる[30]。中国の主要品種は54種あり、そのうちモモ類が23品種、ネクタリン類が9品種、蟠桃のモモ類が7種、蟠桃のネクタリン類が8種、観賞用7種であり、約85%が中国育成品種である[31]。日本の「倉方早生」「大久保」も中国の主要品種に含まれている[31]
水蜜(すいみつ)種
一般的な桃。果肉の色は、白色系、黄色系、赤・ピンク系など。皮には柔らかい毛が生えている。
白桃(はくとう)・白鳳(はくほう)系
現在、日本の市場に多く出回っている品種は、「白桃(はくとう)」系と「白鳳(はくほう)」系の桃である。「あかつき」「暁星」「明星」「ゆうぞら」「川中島白桃」「清水白桃」「まどか」「ちよひめ」「みさかっ娘」、冬に実が熟す「名月」などの品種がある。※白鳳系は自家受粉により一本でも着果するが、白桃系は異品種との混植を行わないと着果しない。(「清水白桃」は白鳳系なので一本でも着果する[32]

あかつき - 日本で最も栽培面積が広い品種で、東北から四国まで栽培されている。数あるモモの品種の中でもトップクラスの品質といわれ、栽培しやすく収量も多い。自家結実生が高く、結実が安定している。[33]

大久保 - 1927年に岡山県の大久保重五郎により育成された品種。果肉が白く、淡泊な甘みと上品な食感を持つ桃のイメージをつくった。[34]

おかやま夢白桃 - 岡山県のオリジナル品種で、2005年に品種登録。大玉で通常180グラムほどであるが、大きなものでは400グラムを超える大果になる。甘みが強く、果肉の端まで甘みを感じられる。[35]

清水白桃(しみずはくとう) - 1932年(昭和7年)に、岡山県で偶然実生として発見された品種。直射日光を避けるため1玉ずつ袋掛けをして仕上がり、上品な甘さととろけるような肉質になる。主な生産地は岡山県や和歌山県。[33]

なつっこ - 「川中島白桃」と「あかつき」を交配育成した長野県のオリジナル品種。果実は扁円形大きく、甘みが強い。[34]

白鳳(はくほう) - 日本を代表する白桃の1品種で、「あかつき」の父親にあたる[33]。果皮は淡いピンク色に色づき、果肉は多重でやわらかい[12]。名前に「白鳳」とつく品種は「白鳳」の枝変わりである[34]

白麗 - 岡山県の東山四郎が、「大久保」に中国原産の「肥城桃」を交配して育成した品種。果肉は硬めで甘みが強い。[34]

ふくあかり - 「川中島白桃」と「もも福島8号」を交配して育成し、2016年に品種登録された。「あかつき」よりも大玉で、着色が良く、栽培もしやすい。[35]

まどか - 「あかつき」の実生から山梨県のイシドウが選抜育成した品種。果肉は緻密で硬めであるが、日持ちがよく、果汁も多い。[34]

黄桃(おうとう)系
果肉が黄色い桃。缶詰に加工され出回ることが多い。近年、生食用の黄桃「黄金桃(おうごんとう)」「ゴールデンピーチ」の出荷、販売が多くなっている。

黄桃(おうとう) - 甘味は低くて酸味があり、主にシロップ漬けに加工される。[12]

黄金桃(おうごんとう) - 池田農園が育成した長野県産「川中島白桃」から偶然できた品種。8月下旬から出荷される晩生種。果肉は鮮やかな黄色で甘味が強い。果皮はピンク色をしており、袋がけ栽培されたものは果皮も黄色い。[12][35]

桃りん(別名:ワッサー桃) - 長野県で作られたモモとネクタリンの交配種。果肉は歯ごたえがあって甘味もある。[12]

ゴールデンピーチ - 山梨県産の黄金桃で、袋がけをしないで赤味が入らないように栽培されたもの。[12]

ネクタリン (Nectarine)・椿桃(つばいもも・つばきもも)
ネクタリン(白肉品種)皮が赤く、毛は、ほとんど無い。果肉は、黄色でやや硬い。「光桃(ひかりもも)」「油桃(あぶらもも)」とも呼ばれる。

ネクタリン - モモの変種で、果皮には産毛がなくスモモのような外見をしている。果肉は白色と黄色の品種がある。食味はかためで甘酸っぱい。[12]

Big Top - カリフォルニアの Zaiger Genetics 社が育成した品種であるが、ヨーロッパに導入され、ヨーロッパのネクタリン産業、市場に大きな影響を与えた。スペインでは黄肉生食用品種で最も重要な位置を占めている。着色がよく、硬肉品種のような硬さを持ち高糖度で、成熟の最終段階で軟化するため取り扱いやすい。[36]


蟠桃(ばんとう)
蟠桃扁平な形をしている。中国神話では、西王母と関連がある。『西遊記』では孫悟空が食べた不老不死の言い伝えがある[34]

蟠桃(ばんとう) - 中国原産で、果実は真ん中がくぼんでいて、つぶれたような異形が特徴。種は小さく可食部が多い。果肉は黄色でとろけりような食感、やや強い酸味と強い甘味がある。[12][34]

ハナモモと呼ばれる観賞用の品種(花桃)は源平桃(げんぺいもも)・枝垂れ桃(しだれもも)など。

源平桃 - 1本の木に白花と紅花を咲かせる品種(観賞用花桃)。環境によっては白と紅の混ざった花も咲く。

照手水密 - 枝垂れ性の花桃だが小さいながら果実も食用とする事が出来る[37](一般的な花桃は果肉が固く食べられない)。


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