モノレール
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日本国内に現存する懸垂式モノレールは、東京都交通局日本車輌製造による上野式(上野動物園)・三菱重工業フランスから導入したサフェージュ式(湘南モノレール千葉都市モノレール)・神戸製鋼所と三菱重工業によるスカイレール、の3方式がある。
ランゲン式試運転中の1900年に描かれたヴッパータール空中鉄道の雑誌挿絵詳細は「ヴッパータール空中鉄道」を参照

ランゲン式モノレールは、民間のドイツ人技師カール・オイゲン・ランゲン (Carl Eugen Langen) が開発した。彼は、1880年代から、懸垂式モノレールシステムについての研究開発を行っていた。1885年に、アルベール・シャルリエ (Albert Charlier) が同様の発想による「空中自転車」を開発したため、ランゲンは念のためにこの方式についてのパテントを取得した。

1898年に、ヴッパータールでの建設計画が着工に移され、ヴッパータール空中鉄道1901年に開通している。その後100年以上にわたってこの路線は実用的交通手段として運行され続けており、そのためランゲン式は世界で最初に実用化したモノレールシステムとされる。

ランゲン式では、レール・車輪ともに鉄製である。車輪は両側にフランジを持つもので、間のみぞにレールがはまりこむことにより、支持・案内が行われる。

車輪は2輪のボギー台車に取り付けられており、片側から下ろしたアームによって車体は懸荷される。レールも、車体を支えるアームとは逆側から、片持ちで支持されている。従って、走行システムは左右非対称である。走行装置・車体は、カーブなどでは左右に15度の範囲で振り子状に揺れることができる。
上野式上野式の上野懸垂線

東京都交通局では太平洋戦争後の東京都内の交通渋滞を緩和するため、路面電車路線バスに代わる近距離交通手段として日本車輌と共同で独自にモノレールの研究を行い、1957年12月17日に上野動物園内の輸送施設である東京都交通局上野懸垂線として開業した。

前記のランゲン式と類似した方式ではあるが、軌道がレールではなく軌道桁となっており、走行輪が鋼製の車輪からゴムタイヤ方式になっている。ランゲン式とは逆に、軌道桁の上部の窪みにゴムタイヤがはまりこんでいる。軌道桁の両側面を案内用タイヤが台車から挟んで車両を案内する。上野懸垂線はその設置目的から極めて短い営業区間のピストン輸送をしていたため、線路に分岐機を持たず交換設備なども設置されていなかった。非対称型懸垂式モノレールへのゴムタイヤの導入は、前年にアメリカ合衆国ヒューストンに作られた「スカイウェイ」が先鞭を付けており、上野式が最初ではない。

上野式は結果として当初の目的である都電や路線バスの置き換えとはならず、上野懸垂線が唯一の導入事例となった。しかし、経年劣化に伴う更新に多額の費用がかかることから、2019年11月1日をもって運行休止となり[11]、2023年12月27日付で廃止された[12]
サフェージュ式サフェージュ式の湘南モノレール詳細は「SAFEGE」を参照

サフェージュ (SAFEGE) 式は、フランスのリュシアン・シャーデンソン (Lucien Chadenson) を中心とする設計チームが1957年に開発した方式である。サフェージュ式という名称は、この方式を開発するためフランス国内の25の企業が集まって結成された企業連合であるフランス語: Societe Anonyme Francaise d'Etude de Gestion et d'Entreprises(「フランス経営経済研究株式会社」の意)の頭字語である。
Iビーム式

Iビーム式は、I型断面を持つ軌道桁をレールとして使い下側のフランジに車輪を乗せて車体をぶら下げる方式で、車両の支持・案内はI型断面を持つ軌道桁と車輪で行う。小規模なものは吊り下げ式の荷物輸送用設備や遊戯施設などに多用されている。

実用的な乗り物としては、1964年から1965年にかけて開催されたニューヨーク万国博覧会の会場内輸送に使われたAMFタイプモノレールを挙げることができる[13]。他に、タイタン社がリニアモーター駆動のシステムを提案しているが、これは実用化されていない[14]
スカイレールスカイレールみどり坂線

スカイレールは、神戸製鋼所三菱重工業が急傾斜地の頂上にある住宅街スカイレールタウンみどり坂と谷側の鉄道駅を結ぶために1990年代に開発した小規模交通システムで、概念としてはIビーム式による懸垂式モノレールシステムに含まれる。

一見したところロープウェイに類似した乗り物だが、ロープではなく高架構造の軌道桁にゴンドラがぶら下がっている。そのためロープウェイと比べて風に強いが、支持体の鋼桁を設置する必要があるためロープウェイよりかなりコストが高くなる。車体の支持・案内方法はIビーム式を採用している。

駆動系に特徴があり、軌道桁に沿ってロープを通し、それが一定の速度で回っており、駅間では車輌はそのロープをつかんで駆動され、駅では、車両はロープから離れて、地上一次式のリニア誘導モーターで駆動される。そのため、基本的に線路は「複線でループ構造[15]」となる。最小回転半径は30m、最大勾配は270パーミル(27%)、最大距離は3.2km、想定輸送力は2,200人/時間。一般の軌道系交通機関とはかなり様相が異なる小規模短距離システムではあるが、概念としてはモノレールに含まれ、見方によっては懸垂式ケーブルカーとの解釈もできる個性的な運送機関である。

広島県広島市スカイレールサービス広島短距離交通瀬野線が唯一の導入事例であるが、2024年4月末での廃止が予定されている[16]
跨座式跨座式モノレールの模式図。左から「リロイ・ストーン式ラルティーグ式」「アルヴェーグ式」「逆T字方式」。

跨座式(こざしき)とは、車両の下にレールがありレールに車両がまたがっている形態のモノレールである。跨がり式とも呼ばれる。

跨座式はその多くが、軌道桁の上にある走行路を走行輪が接して車両重量を支えて車両を走行させ、軌道桁の左右に接する案内輪と安定輪で車両を案内するという方法を取る。この方法では、車両の床下と軌道桁上部の間に車輪があり、さらにその下に案内車輪が存在するため、車両の高さが通常の鉄道車両よりはるかに大きくなるという欠点がある。他に、軌道桁の下部左右に車両重量を支える車輪を設け、上部を左右方向に抑えて案内をする、マイグス式や逆T字方式[17]もある。この方式では、車輌の高さをおさえることができるが、一般化はしていない。日本では、日立製作所によってドイツから導入された、コンクリート製の軌道上をゴムタイヤで走行する「アルヴェーグ式(アルウェーグ式)」あるいはこれを基に規格を統一した「日本跨座式」と呼ばれる方式が主流である。過去に川崎重工業が導入した、コンクリート軌道上に設置された鉄製レール上を鉄車輪で走行する「ロッキード式」や、東芝がアルウェーグ式を参考に独自に開発した「東芝式」もあった。電車線は軌道桁の両側面に2つ設置しており(直流のプラスとマイナスの線)、車両側の集電装置で電力が供給される。

日本国内では東京モノレール大阪モノレール沖縄都市モノレール(ゆいレール)などで採用されている。
アルヴェーグ式アルヴェーグ式の東京モノレール詳細は「ALWEG」を参照

アルヴェーグ (ALWEG) 式は、スウェーデン実業家であるアクセル・レンナルト・ヴェナー=グレンが特許を取得し、事業化した方式である。アルヴェーグ式という名称は、ヴェナー=グレンの頭文字であるAxel Lennart Wenner-Grenの頭字語である。日本では日立製作所が事業展開していることから日立アルヴェーグ式とも呼ばれる。

日本国内においては東京モノレール羽田空港線名鉄モンキーパークモノレール線(2008年廃止)、よみうりランドモノレール(1978年廃止)で採用された。
東芝式

アルヴェーグ式を参考にして東京芝浦電気(現:東芝)が開発。連接台車や自動ステアリングを採用したことが特徴。

本方式はかつて、松尾國三の肝いりで奈良ドリームランドモノレールとして採用後、横浜ドリームランドへのアクセスとして1966年5月開業のドリーム交通モノレール大船線で採用された。


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