先に述べたように片眼鏡は、その流行期においても、視力矯正器具としてより流行品として使用者から好まれた[5]。現代でも視力矯正器具というより近代ヨーロッパを象徴するレトロ文化の一種と見なされることが多い。21世紀初頭においては、たとえ片目だけの視力矯正が目的であっても、コンタクトレンズや、片方のレンズに度が入っていない眼鏡を使うことがほとんどである。 19世紀のヨーロッパの上流階級で流行し、日本でも明治の頃やや流行した。基本的に片眼鏡を使用するのは男性で、女性がかけることは稀であったが、一部の女性の間では、男性らしい飾り気のないスーツやヒールの低い靴、ステッキとともに殊更に男性的なイメージを狙って片眼鏡をかけることが流行した。1920年のウィメンズ・ウェア・デイリー誌ではこの流行を批判的に報じている[14]。 基本的には貴族階級がかけるものであったが、イギリス等では主人の富を象徴させるため、執事に片眼鏡をかけさせることも流行した。 片眼鏡の流行した時代を舞台にしていればもちろんのこと、その他の時代を舞台にしていても、フィクションの登場人物は片眼鏡をかけているものと設定されることがある。元が上流階級における流行なので、ある程度地位のある男性に使われることが多い。特に、紳士のシンボルとしてシルクハットにコート、片眼鏡は定番ともいえる。 ピエールラフィット社から1907年に刊行された小説『怪盗紳士ルパン』にて、本文には片眼鏡を愛用している描写がないものの、表紙絵のアルセーヌ・ルパンに片眼鏡がかけられたことにより、怪盗のイメージとしても定着している。漫画『名たんていカゲマン』の怪人19面相、同じく『まじっく快斗』の怪盗キッドなどがその例である。小説シャーロック・ホームズシリーズのモリアーティ教授も、アニメ『名探偵ホームズ』などでは片眼鏡をかけた姿で映像化されている。アニメ『どうぶつ宝島』に登場する海賊のうち、男爵と称する子分も片眼鏡をかけ、物陰で片眼鏡を光らせる様子や、ヒロインに取引を持ち掛けながら片眼鏡をもてあそぶ様子、ぶつかった際にとっさに片眼鏡に手をやって落下を防ぐ仕草、船倉に落ちていく最中に空中に取り残された片眼鏡を拾いに戻るギャグなどが描かれた。 ユニコードに定義された中に、片眼鏡をかけた顔の絵文字?がある。何かについて疑問に思ったり、懐疑的であったりすることを表す[15]他、洗練された、あるいは独りよがりな知性を示唆する[16]。 片眼鏡の人物が珍しくなかった時代もあるため、片眼鏡が当時これらの人物の個性と捉えられていたとは限らない。片眼鏡の流行期から大きく外れて片眼鏡をかけていた著名人としては、イギリスの天文愛好家でテレビの天文番組の司会を務めたサー・パトリック・ムーア
歴史
フィクションにおける片眼鏡アルセーヌ・ルパンの挿絵
絵文字
片眼鏡の著名人
歴史上の人物
ヴェルナー・フォン・フリッチュ
トリスタン・ツァラ
ヴァルター・フォン・ライヒェナウ
ヴィルヘルム・カイテル
オットー・モーリッツ・ヴァルター・モーデル
サー・オースティン・チェンバレン
ジョセフ・チェンバレン