メルカトルは、直線を引くことで等角航路が求まる地図を作ろうとしていたようである[2]。しかしながらメルカトルの時代にはまだ積分法が知られておらず、赤道から各緯度までの地図上の距離を示す定積分 u = ∫ 0 φ sec θ d θ = ln tan ( π 4 + φ 2 ) = tanh − 1 sin φ = gd − 1 φ {\textstyle u=\int _{0}^{\varphi }\sec \theta {\rm {d}}\theta =\ln \tan \left({\frac {\pi }{4}}+{\frac {\varphi }{2}}\right)=\tanh ^{-1}\sin \varphi =\operatorname {gd} ^{-1}\varphi }
をメルカトルは級数として近似的に計算したにとどまり、作図に必要な数学的根拠を明らかにしなかったので、メルカトル図法は普及しなかった。
海図をはじめ世界図にも用いられるようになったのは、1599年にイギリスのエドワード・ライト
(英語版)が数値計算法(今日でいうリーマン和による方法)を用いて緯線距離を導き出し、作図に必要な数表を作成してからである。この定積分を求める問題は17世紀中期に地図学を目的とする数学上の関心事として取り沙汰されていた(正割関数の積分(英語版)問題[注釈 2])が、当該積分はアイザック・バローによって初めて閉じた式(英語版)として求められたとされ(年代不詳)、1668年にジェームス・グレゴリーによっても求められた。今日では、この緯線距離 u {\displaystyle u} の式は上述のランベルト関数(逆グーデルマン関数) gd − 1 φ {\displaystyle \operatorname {gd} ^{-1}\varphi } に相当すると解釈される。世界地図レベルの広域地図の場合は赤道上の縮尺をその地図の縮尺として表示することが多いが、縮尺の変化があまりに大きいので、緯度別のスケールを書くことも多い。
海図のように比較的限られた範囲を描く場合は「1/1,000,000(北緯35度)」のように緯度を指定して縮尺を表示する。さらに狭い範囲の場合は、地図の中央など図中の決められた地点の縮尺を表示する。(十分狭い場合は縮尺の変化を無視できる)。赤道上を縮尺の基準とする場合を接円筒型 (tangent type) 、赤道以外の緯度を縮尺の基準とする場合を割円筒型 (secant type) と呼ぶ場合がある。
短い距離の簡易的な測定方法としては、地図上で長さを測り、その長さを同じ緯度付近で経線方向にし、緯度差が何度に相当するかを確認し、1度あたりの子午線弧長を約111km(1分あたり1海里)で換算する。
横メルカトル図法や斜軸メルカトル図法のように、緯度だけあるいは経度だけで簡単に縮尺変化を表現できない場合、表記縮尺に対して基準線の縮尺をどれだけ小さくするかを縮尺係数として指定する。ただしこれらの図法は比較的大きな縮尺で用いられるので、精密な測定をするのでなければ意識する必要はない。 通常「メルカトル図法」といえば赤道を基準線として、南北に離れると拡大する図法を指すが、他の大円も基準線にできる。子午線を基準線としたものを横メルカトル図法、それ以外の大円を基準線としたものを斜軸メルカトル図法という。さらに地球を回転楕円体として考慮した横メルカトル図法は特にガウス・クリューゲル図法とも呼ばれる。これらは通常のメルカトル図法(円筒図法)のもっとも目立つ特徴である「経線と緯線が直交する直線である」性質が失われるので、小縮尺の世界地図にはあまり使われない。しかし、他の正角図法である平射図法やランベルト正角円錐図法と比べると、 などの利点もある。そのため地形図など中縮尺?大縮尺地図の図法として、対象地域の近くに基準線を設定し、基準線近辺のごく狭い範囲に限定して使用されることが多い(ユニバーサル横メルカトル図法参照)。
派生図法
基準線が直線になる
その基準線と平行な直線上で縮尺が同じ
注釈^ spherical Mercator Projectionとも呼ばれる。
^ en:Weierstrass substitution
出典^ 佐藤 崇徳. “ ⇒Googleマップの投影法 インターネット時代におけるメルカトル図法の再評価”. 2016年9月28日閲覧。
^ 「メルカトルが、メルカトル図法を考えついた経緯を知りたい。」
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