体系的な宗教は持っておらず、宗教と呪術の区分も明確でない。東部のメラネシア人社会では超自然力(マナ)を信仰しており、すべて形あるものに精霊が宿ると信じられていた。このため、品物を多く持つ白人たちの文化に触れ、その羨望から彼らが信仰していたキリスト教へ改宗している[4]。こうした動きはやがてカーゴ・カルトと呼ばれるメシア運動へ発展し、メラネシアの社会問題となった[1]。
神話伝承は存在しているがそのほとんどは聖書やカーゴ・カルトの影響を強く受けており、後年に創作されたものと考えられており、原始美術に体系付けられるような口承は現存していない。
生活ベテル・チューイング
キンマの葉、ビンロウの実、石灰
主として堀棒耕作を行う農耕民で、タロイモ、ヤムイモ、キャッサバ、サツマイモなどの根茎類
のほか、バナナ、パンノキ、ヤシ、サゴヤシなどを栽培する[5]。沿岸部では漁撈も行われる。食習慣としてはコショウ科植物の根を原料とした飲料物(カヴァ)や、キンマの葉に包んだビンロウの実と石灰を混ぜたものを噛む習慣(ベテル・チューイング)が特徴として挙げられる。社会組織としては、地理上の問題から中央集権化が困難なこともあり、小規模な単位での政治制度が採られていた[6]。文化圏や言語集団に関わらずビッグ・マンと呼ばれるリーダーによって200人から300人の居住単位による集団をひとつの組織としていたのが一般的である[6]。ビッグ・マンの地位は世襲の場合やそうでない場合が地域によって混在しており一概には定義できない。血縁集団レベルで言えば、地縁内婚が一般化しており、ひとつの集団内のほとんどは親族ないし姻族である[6]。
豚と小型の貝などの稀少品に価値観を見出しており、これらを用いた海上交易や作物の物々交換が発達していたが、近年は貨幣も用いられるようになり、定期的な市が開催されている。 メラネシアの美術は非常に多様化しており、世界的な民族美術
芸術パプアニューギニアの仮面舞踏の一つ、バイニン(英語版)ダンス
美術
また、仮面美術はオセアニアではメラネシア人のみが保持する特有の文化で、ニューギニア島パプア湾のヘベヘ、ヒュオン湾のタゴ、ニューアイルランド島のマランガン、ニューブリテン島のドゥクドゥク、バンクス諸島のタマテなどの仮面が知られている[1]。
その他、美術的価値を見出せるものとしては、ソロモン諸島の貝貨、サンタクルーズ諸島の羽毛貨、ニューヘブリディーズ諸島のパンダヌス布貨などの各種財貨や儀礼的交易(クラ)に用いられた貝の装飾品、階層制度の位階を現す彫像などがある。 メラネシアの音楽はポリネシアほどの統一感は無いが、文化価値表現の手段として古くから社会生活の中に有機的に組み込まれた。ゆるやかな発声と身体打奏を特徴とし、楽器には竹や木のほか動物性の材料を用いる[1]。集団構成員の多くがパフォーマンスに参与する参加型のものが一般的である。
音楽
メラネシア系民族
カナック
脚注[脚注の使い方]^ a b c d e 矢野1990
^ 後藤1996