メディア・フランチャイズ
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この事態に業を煮やした大林は「『HOUSE』映画化を実験するキャンペーン」と銘打って、映画製作より先に『HOUSE』ブームを起こしてやろうと積極的にメディアに露出したり、『HOUSE』をラジオドラマにしたり、コミック化ノベライズなど、大林主導で「メディアミックス」を仕掛けていき、これらが功を奏して知名度が上がって話題となり、東宝も企画を進めざるを得なくなって、2年後の1977年にようやく本体の映画化が決まったことがあった[16][18][19][20][21][22][23]。既存の映画界とは別のところで仕事をしていた大林と角川春樹は、ほぼ同時期にそれぞれの方法で「メディアミックス」を仕掛けていた[16]。これを「メディアミックス」の先駆と評価する見方もある[16]。大林の「メディアミックス」の成功は、助監督経験のない、撮影所育ちでない映画監督の出現という映画界に新しい流れを生み出している[18][24][25][26]。大林と角川が「メディアミックス」のヒントを得たのは、ともに1970年アメリカ映画ある愛の詩』である[16]。なお『ある愛の詩』を手掛け、当時はパラマウント映画の製作担当副社長だったロバート・エヴァンスは、1968年ロマン・ポランスキー監督の『ローズマリーの赤ちゃん』で、既にメディアミックスの手法を用いている[7]

1980年代には月刊少年キャプテン徳間書店)、月刊コミックコンプ(角川書店)、月刊コミックNORA学習研究社)などのいわゆるマイナー系の漫画雑誌が登場し、やがてメディアミックス企画の漫画を多数連載することになる。
近年のメディアミックス

近年は、元々一つのメディアでしか表現されていなかった作品(原作)を、小説漫画アニメゲームコンピュータゲーム)、音楽CDテレビドラマ映画タレント、トレーディングカード、プラモデルなど、複数メディアを通じて展開するビジネスモデルを指して、「メディアミックス」と呼ばれるのが一般的である。

従来のビジネスモデルであったキャラクター、小道具、施設など、作品内に登場する物をモチーフとした商品の販売、いわゆるグッズ戦略が、あくまで作品要素を模写・抽出した製品の製造と販売によって当該作品の経済効果を受容する戦略であったのに対し、メディアミックスの売買対象は厳密にいえば作品そのものであり、いわゆる副次的なものではあるが創作物そのものを商品として経済効果を吸収する媒体とした点に大きな相違がある。その結果、創作活動の多軸化によって創作物の量産を可能にし、そして何より従来路線にはなかった爆発的な市場開拓力を持ち、認知性(知名度)の拡大、支持層の開拓、「商品」展開によるさらなるブーム刺激と、それによるブームの長期化・持続化の効果をもあわせ持つに至った。

この「商品」展開による過熱化効果は、規模が大きいものだとその重複効果が倍加され社会現象規模のブームをも産み出す可能性を持つ(例:『新世紀エヴァンゲリオン』など)とも云える。

1990年代、角川書店は『スレイヤーズ』シリーズにおいて、小説、漫画、アニメ、映画、ゲーム、イベントなどをほぼ同時進行させ、常にいずれかのメディアで商品を提供し続ける手法で、同タイトル作品の長期的な人気の持続に成功した。そして同時期に大ヒットした『新世紀エヴァンゲリオン』における製作委員会方式の確立によって角川書店のメディアミックスは大成功を収める。

また最近では、TV局方面での映画・ドラマのメディアミックス化が活発となっている。漫画のドラマ化・映画化が一般的になり始め、さらに逆にある程度TV放送で視聴率のとれたドラマなどを漫画連載化するという形での進出も試み始められている。
メディアミックスの問題
費用対効果の低下

2000年代中半以降、大手・中堅出版社から刊行されたり、テレビ系メディアやプロダクションが企画した若者世代向けのフィクション作品の多くが「何らかのメディアミックス展開」を導入している状況がある。現在では2ジャンル程度のメディアミックス展開がなされている作品はごくありふれたものであり、その程度の規模で大衆の格別の関心を引くことはもはや不可能に近い。

そのため、メディアミックスの展開自体も手間やコスト負担が増す傾向にあり、従来型のメディアミックスというそれ自体の費用対効果に対しても疑問を持つ企業が出てきており、「新たなメディア展開」を考えるべき時期にさしかかっている。
予算の厳しさ

2000年代以降の大半のメディアミックス作品では、製作委員会方式を利用した出資・制作・収益確保のシステムが構築されている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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