メタン
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2004年7-8月、日本の新潟県上越市沖で初めてメタンハイドレートの天然結晶の採取に成功[8]。2008年3月、カナダ北西部のボーフォート海沿岸陸上地域にて永久凍土の地下1,100mから連続生産に成功。2013年3月12日には、日本の愛知県三重県の沖合で海底からのメタンガスの採取に成功した。
バイオガス詳細は「バイオガス」を参照

メタンは火山活動で生成される以外にもメタン産生菌の活動などにより放出されるため自然界に広く存在し、特に沼地などに多く存在する。メタンの和名の「沼気」は、これが語源である。大気中には平均 0.00022% 含有されている。このメタン産生菌を用いて生ごみなどを嫌気醗酵させてメタンを得て、資源として利用することも実用化されつつある。実際にバイオガスの供給事業も始まっており[9]、日本のバイオガス化市場規模は最大約2300億円と推計されている。シロアリに共生する体内微生物によってもメタンが生成され、その量は、地球上で発生している全メタンの5?15%と推定される[10]
カーボンニュートラルメタン

カーボンニュートラルメタン(CNメタン、Green Methane:グリーンメタン)は、再生可能エネルギーなどを使い製造したグリーン水素と、発電所や工場、バイオガスなどから排出される二酸化炭素を原料とし、二酸化炭素と水素からメタンを合成するメタネーション(Methanation)技術を使い製造した合成メタンのこと[11][12][13]
温室効果ガス詳細は「北極圏メタンガス放散」を参照

メタンは強力な温室効果ガスでもあり、同量の二酸化炭素の28倍程度の温室効果をもたらすとされている[14]。2021年開催の第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)ではメタン排出削減を目指す国際枠組みが発足し[15]、翌2022年11月17日には第27回気候変動枠組条約締約国会議(COP27)でアメリカとEUがメタン排出の2030年までの30%削減を目指す世界協定について150カ国以上が調印したことが発表された[16]。天然ガス・石油施設や炭鉱といった大きなメタン排出源は人工衛星からの観測で特定できるようになっている[17]

産業革命以来、人工的な温暖化ガスの排出量が急激に増加しており、地球温暖化が加速度的に進行していることが国際的な社会問題となっている。気象庁の温室効果ガス世界資料センターによると、地球の大気における平均メタン濃度は2020年に1889ppbで、産業革命前の2.6倍に増えた[15]

火山ガスであるメタンは、世界最大の火山帯である日本列島および近海から常に大量に放出され続けていることに加え、気温が上昇すれば海底や永久凍土中のメタンハイドレートが放出されることも懸念されるため、日本は積極的にメタンやメタンハイドレートを開発し、燃焼させるべきだとする意見もある。

ロシアなどでは古くから天然ガスとして盛んにガス田の開発が行われてきた。ガスはガス田から消費地に向けてパイプライン輸送されるが、施設の老朽化によりガスが大量に大気中に漏出しているものとみられている。ロシアは漏出量を2019年時点で年間400万トンとしているが、国際エネルギー機関では2020年に1400万トン近くが漏出したと推計している。2021年にはタタールスタン共和国において、1時間当たり400トンに及ぶメタンガスがパイプラインから漏出していることが人工衛星のデータにより確認されている[18]

国連環境計画(UNEP)が2021年5月に公表した『世界メタン評価』によれば、人類による排出で最も多いのは農畜産分野(40%)で、化石燃料分野(35%)、ゴミ・排水処理など廃棄物分野(20%)が続き、排出削減の必要性を訴えている[15]など、草食動物げっぷにはメタンが含まれ、そのからもメタンが発生するため、牛が増えるとメタンガスも増えて温室効果を助長するという説が広まり、大量の牛肉を使用・廃棄しているハンバーガー販売企業がバッシングされる事態も発生した。人口の10倍以上の家畜を抱える酪農国のニュージーランドでは、や牛のげっぷを抑制するという温暖化対策を進めようとしたが、農民の反対を受けている[19]。畜産はメタンガスの21%(げっぷ16%・糞尿5%)を排出していると言われている[20]。日本の農研機構は牛の胃から、牛のエネルギー源となるプロピオン酸を多く産生してメタン発生量を抑える細菌を発見し、この菌を増やす飼料サプリメント化を研究している[21]。家畜排せつ物から発生するメタンは大気中に放出されれば温室効果ガスであるが、一方で発生したメタンを回収し、燃料や発電として利用すればカーボンニュートラルなバイオガスエネルギー、バイオマス資源となる[22][23][24]

酸素が乏しい湛水状態の水田では、気温の高い日が続くと土壌の還元が進みメタン生成菌が活性化し有機物を分解することにメタンガスが発生する。この現象は「わき」と呼ばれる。発生した土中のメタンは稲の根から吸い上げられて稲の茎を通して大気中に排出される。また、この現象は水稲の根の成長を妨げるため、「わき」を抑制するために古くから水田の水を抜き、土中に酸素を供給する中干しという作業が行われる。この中干しは慣行では茎数が有効茎数の 8?9 割に到達した時点で1週間?10日程度行われるが、その期間を1週間程度前倒しし、中干しの期間を長くすることでメタンの発生を抑えられる。実験では1週間程度延長した場合メタンの発生を30%削減できた。しかし、中干しを長くすると収穫量が3%程度減少した、一方で登熟歩合(全籾数に対する登熟した籾数の割合[25])は向上し、米の品質は向上した[26][15]

メタンは大気中の寿命が約12年(時定数)で排出量の63.2%は分解され、分解量を超過する分が濃度上昇に反映される。このため、排出削減をすれば大気濃度がすぐに減少する[27]
脚注[脚注の使い方]
注釈^ ドイツ語発音: [me?ta?n]
^ アメリカ英語発音: [?meθe?n]イギリス英語発音: [?mi?θe?n]

出典^ D.D. Wagman, W.H. Evans, V.B. Parker, R.H. Schumm, I. Halow, S.M. Bailey, K.L. Churney, R.I. Nuttal, K.L. Churney and R.I. Nuttal, The NBS tables of chemical thermodynamics properties, J. Phys. Chem. Ref. Data 11 Suppl. 2 (1982).
^ 中井 多喜雄 『知っているようで知らない燃料雑学ノート』(燃焼社 2018年5月25日発行 ISBN 978-4-88978-127-4)pp.67 - 70
^ 中井 多喜雄 『知っているようで知らない燃料雑学ノート』(燃焼社 2018年5月25日発行 ISBN 978-4-88978-127-4)p.67
^ 宇宙輸送はメタンエンジンにおまかせ! (PDF) IHI(2018年3月22日閲覧)
^ a b 早稲田周、岩野裕継「ガス炭素同位体組成による貯留層評価」『石油技術協会誌』Vol.72 (2007) No.6 P.585-593, doi:10.3720/japt.72.585
^ 亀井玄人「茂原ガス田の地下水に含まれるヨウ素の起源と挙動」『資源地質』Vol.51 (2001) No.2 P.145-151, doi:10.11456/shigenchishitsu1992.51.145
^ 北逸郎, 長谷川英尚, 神谷千紗子 ほか「CH4の炭素同位体比とN2/Ar比の分布に基づく天然ガスの生成プロセス」『石油技術協会誌』Vol.66(2001年)No.3 pp.292-302, doi:10.3720/japt.66.292
^ 新潟県上越市沖の海底にメタンハイドレートの気泡を発見 東京大学、海洋研究開発機構東京家政学院大学独立総合研究所産業技術総合研究所


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