メソポタミア
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世界最古の文明が発祥した地であり、メソポタミアに生まれた文明を古代メソポタミア文明と呼ぶ。文明初期の中心となったのは民族系統が不明のシュメール人である。シュメールの後も、アッカドバビロニアアッシリアなどに代表される国々が興亡を繰り返した。やがて周辺勢力の伸張とともに独立勢力としてのメソポタミアの地位は低下していき、紀元前4世紀アレクサンドロス3世(大王)の遠征によってヘレニズムの世界の一部となった。

メソポタミアには、西のユーフラテス川と東のティグリス川という2つの大河川が南北に流れており、とくに下流域には両大河によって堆積した肥沃な土壌が広がっている。地形は平坦で高低差が少ないため河道が変遷しやすく、河口近くでは広大な湿地帯が広がっている。また両大河はメソポタミア南端でペルシャ湾に注いでいるが、非常に低平であるため海面変動の影響を受けやすく、海水面の上昇がピークに達した紀元前3500年頃(いわゆる縄文海進)にはペルシャ湾の湾頭は200km以上も西進した[1]植生としては気候が乾燥しているために森林が存在せず、また地質的には沖積平野であるために岩石のほぼ存在しない泥の平原となっていて、金属資源は存在しない[2]

降水量は非常に少なく、メソポタミアのほぼ中央にあるバグダッドの降水量は年間140mmにすぎない[3]。このため、南部メソポタミアでは灌漑なしで農業を行うことはできない。降水量は南から北に向かうにつれて多くなり、北部メソポタミアでは年間200mmを超えるため、天水農業が可能となる。このため人類が居住し農耕を発達させたのは当初は北メソポタミアであり、南メソポタミアへの入植は遅れた[4]。ただし南メソポタミアの土壌は非常に肥沃であり、灌漑を行えば両大河の水や洪水を農耕に利用することもできたため、いったん入植が開始されると豊富な収穫によって南メソポタミアが文明の揺籃の地となった。

ティグリス川はユーフラテス川に対して河況係数が大きく、源流山地からの距離が短くて勾配が急であるため、洪水を起こしやすい暴れ川であった。それに対しユーフラテス川はやや山地からの距離が長く勾配が緩やかで、ティグリス川よりも高地を流れていたため、シュメールの諸都市の多くはユーフラテス河畔かその近辺に位置していた[5]。ただしどちらの河川も氾濫は頻繁に起き、とくに晩秋に起きる洪水はシュメール時代の農耕にはなくてはならないものだったが、エジプトナイル川のような穏やかな洪水ではなく、激しい洪水ですべてを押し流されることも珍しくはなかった。こうした自然環境から大洪水の神話が生まれ、旧約聖書創世記ノアの方舟の話にも影響を与えたと考えられている[6]。メソポタミアは地形が平坦な上2本の大河が流れる交通の要衝であり、さまざまな民族が流入し活発な交易が行われてきた[7]

古代文明時代には、地域的に現在のバグダッド付近を境にして、北部がアッシリア、南部がバビロニアとされ、バビロニアのうち北部バビロニアがアッカド、下流地域の南部バビロニアがシュメールとさらに分けられていた。文明揺籃の地は最南部の下流域であるシュメールであり、ここから上流の北部に向かって文明が広がっていった[8]
特徴西アジアの金属資源地

太陰太陽暦を用いたが、太陰太陽暦では1年が約11日短くなることが紀元前3000年紀にはすでに知られていたため、調整のため適宜閏月が挿入されていた[9]。シュメール時代の暦は各都市によって異なっており、新年のはじまりも春分が多かったものの、夏至秋分を起点とする都市も存在した[10]。その後、バビロン第一王朝時代にはバビロニアで暦が統一され、のちに周辺地域にも広まった[11]六十進法もメソポタミアで生まれたものであり、現在の時間の単位に用いられている[12]。一間を日(七曜)にしたのもシュメール時代である[13]。暦と共に占星術天文学の雛形)も発達し、「カルデア人の智恵」と呼ばれた。
言語楔形文字でギルガメシュ叙事詩の一部が刻まれた粘土板。アッカド語

紀元前8000年紀から西アジア一帯で簿記のためのしるしとして使われていたトークンと呼ばれる道具が印章へと変化し、さらにその印を手で書いて絵文字化することで、紀元前3200年頃にウルク市において最古の文字とされるウルク古拙文字が誕生した[14]。この文字は象形文字表語文字であったが、紀元前2500年頃にはこれを発展させた楔形文字が誕生した[15]。楔形文字は周辺諸民族にも表音文字として借用され、紀元後1世紀頃まで西アジア諸国のさまざまな言語を表すのに利用された[16]。記録媒体は粘土板が用いられた。楔形文字によって書かれたものとしてはハンムラビ法典がよく知られている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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