シャロンは、マイアミでケヴィンと再会したが、飲み交わしながら話す気にはなれない。一方のケヴィンも、シャロンの現在の風貌や、彼に会いたいという動機に驚かされる。レストランのジュークボックスでバーバラ・ルイスの「ハロー・ストレンジャー」を聴いたふたりはケヴィンの家へ向かう。ケヴィンは、自分の思うような道でなくても、自分の人生は幸せなものだと打ち明ける。そんなケヴィンに、男性はおろか、親密な関係になった人物はケヴィン以来、誰もいなかったことをシャロンは明かす。直後ふたりは和解し、ケヴィンはシャロンを優しく抱きしめる。フラッシュバックで、少年時代のシャロンは、月明かりの海辺で遊んでいる。
キャスト2016年のトロント国際映画祭にて。左からバリー・ジェンキンス、アンドレ・ホランド、アシュトン・サンダース。
※括弧内は日本語吹替 2003年、タレル・アルヴィン・マクレイニー
シャロン (Chiron) - 映画の主人公
大人のシャロン / 「ブラック」 - トレヴァンテ・ローズ(小松史法)ティーンエイジャーのシャロン - アシュトン・サンダース(小松史法)子どものシャロン / 「リトル」 - アレックス・ヒバート[注釈 1](松浦裕美子)
ケヴィン (Kevin) - シャロンの1番の親友
大人のケヴィン - アンドレ・ホランド(金谷ヒデユキ)ティーンエイジャーのケヴィン - ジャレル・ジェローム(英語版) [注釈 2](金谷ヒデユキ)子どものケヴィン - ジェイデン・パイナー[注釈 3]
その他の人々
ポーラ - ナオミ・ハリス(冠野智美)
テレサ - ジャネール・モネイ(棟方真梨子)
フアン - マハーシャラ・アリ(楠大典)
テレル - パトリック・デシル[注釈 4](赤坂柾之)
製作
発展
2008年にデビュー作 "Medicine for Melancholy" (en) を発表して以来、バリー・ジェンキンスは様々な映画用シナリオを執筆していたが、どれも製作には至らなかった。2013年1月、プロデューサーのアデル・ロマンスキーがジェンキンスへ2作目の製作を求め[10]、ふたりは1か月ビデオ通話を通して話し合った結果、低予算の「映画的で個人的な」(英: "cinematic and personal")作品を作ることに決めた[11]。ジェンキンスはマイアミの The Borscht arts collective (en) から、マクレイニーの戯曲 "In Moonlight Black Boys Look Blue" を紹介された[11][12]。マクレイニーと相談した後[12]、ジェンキンスはブリュッセルに1ヶ月逗留して映画脚本の初稿を書き上げ[11][13]、元の作品から3章を抜き出しつつ、マクレイニーに敬意を表してホモセクシュアルな側面を残す脚本にした[12]。
脚本は、ジェンキンスとマクレイニーが受けた同じようなしつけを反映するものになった。フアンの造形はマクレイニーの弟の父を基にしており、フアンがシャロンに対してそうであるように、モデルとなった人物は子どものマクレイニーにとって「擁護者」(英: a childhood "defender")でもあった[14]。同様に、シャロンの母ポーラの描写は、薬物依存に苦しんだジェンキンスとマクレイニー双方の母を基にしている。ジェンキンスとマクレイニーは、どちらも映画の主撮影地であるマイアミ・リバティ・スクエア(英語版)出身である[10]。
映画の製作費用を求めていたジェンキンスは、2013年のテルライド映画祭で出会ったプランBエンターテインメント幹部に脚本を渡し、資金を獲得した。その後プランBエンターテインメントのデデ・ガードナー、ジェレミー・クライナーがプロデューサーに就任し[11]、A24が、会社の初製作映画として資金面の管理と世界配給を担当することになった[15]。 映画は3章仕立てで、シャロンとケヴィンは章ごとに異なる俳優が演じる。ティーンエイジャーのシャロンは、アシュトン・サンダースが演じている[16]。子どものシャロンとケヴィンは、マイアミで広く募集された後、アレックス・ヒバートとジェイデン・パイナーが選ばれた[17][18]。トレヴァンテ・ローズはオーディションでケヴィン役に決定していたが、結局大人のシャロンを演じることになった[19]。 アンドレ・ホランドはマクレイニーの戯曲を演じた経験があり、映画製作の10年前に、既に原作戯曲を読んだ経験があった[20]。ホランドは映画の脚本を読んだ後大人のケヴィン役に惚れ込み、「[脚本は]今まで読んだ中で最も素晴らしい」(英: "[The script] was the best thing I've ever read.")と述べている[21]。 ナオミ・ハリスは、当初ポーラ役を演じることに気乗りしておらず、ステレオタイプな黒人女性の描写を演じたくはなかったと述べている[22]。ハリスがこの悩みを打ち明けたところ、ジェンキンスは自身・マクレイニー双方の母親を象徴的に描いたものとして、キャラクターが必要だと力説した[20]。ハリスは後に、薬物依存者役は受けないと決めていたが、映画の脚本と監督の寛容さが彼女に訴えかけたと語っている[10]。役準備のため、ハリスはクラック・コカイン中毒者のインタビューを試聴し、実際に薬物依存の女性とも面会した。また、自分がいじめにあった経験を、トラウマから抜け出そうとする中毒者と結びつけたという[22][23]。
キャスティング