ムカシトカゲ
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しかしながら、最近の分類学的研究[14] によると、ムカシトカゲ目は中生代を通じて多くの変異を経ていることがわかった。現在ではトカゲ類に占められている多くの生態的地位が、かつてはムカシトカゲ目に占められていた。中には海生爬虫類として成功したグループ(Pleurosaurs:プレウロサウルス類)さえいたが、彼らは現在のムカシトカゲとは似ても似つかない姿をしていた。詳細はムカシトカゲ目を参照。

ニュージーランドが他の陸地から切り離されたのは約8000万年前だとされているが[15][16]、@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}それ以前にここに到達していたムカシトカゲ目の一員が結果として今日まで唯一生き残ったムカシトカゲの先祖であると考えられている。ムカシトカゲは寒冷な気候への適応を示すが、これによってニュージーランドの島々での繁栄が可能となっている。この適応はおそらくムカシトカゲに特有のものであり、より温暖な気候で生息していた先祖形ムカシトカゲ目から受け継いだものではないと思われる。[要出典]
解剖学的記載

ムカシトカゲは現生で最も特殊化していない有羊膜類である。脳や移動方式は両生類に似ており、心臓は他の爬虫類の中で一番原始的である[2]。成体はオスで頭胴長280mm、全長610mm、体重1kgほど。性的二形を示し、メスはオスより小さく体重500gを越えない[15]。背中に並んだトゲは三角形の折り畳まれた柔らかい皮膚で形成されており、メスよりオスで大きく、威嚇やディスプレイの際には逆立つ。メスの腹部はオスに比べてセイヨウナシ形をしている。オスにはカメ・ワニのような陰茎もトカゲ・ヘビのような半陰茎も無いため[1]、ある程度成長した個体でないと性別を確認するのは困難である。ムカシトカゲの体色はオリーブグリーンから茶色や赤橙色まで変異があり、成長に伴っても変化する。脱皮は年1回。
頭蓋骨

無弓類形頭蓋骨側頭窩(頭蓋骨の眼窩後方に開いた窓)を持たない爬虫類の始祖的形状。現生爬虫類でこの形の頭骨を持つ者はいない。ムカシトカゲ頭蓋骨左図の双弓類型頭蓋骨の特徴である二本の側頭弓がはっきり見て取れる。有鱗目では全種が下側頭弓を失っているため、現生の鱗竜類でこの形の頭蓋骨を持つのはムカシトカゲのみである。
双弓類形頭蓋骨弓を2本持つ双弓類の基本的形状。現生爬虫類はすべて双弓類だが、この形をこのまま保持しているものは非常に少ない。
有鱗目型頭蓋骨弓を2本持つ双弓類のなかでも特殊化した形状。現生爬虫類の大部分を占める有鱗目では図のように下の弓が消失する。
ムカシトカゲの頭蓋骨

ムカシトカゲは現生の有羊膜類で最も原始的な頭蓋骨を持っており、完全な弓(側頭窩の下縁部を形成する骨の架橋部)で囲まれた2つの側頭窩をもつ双弓類の原始形を保持している[17][1][2]。そのため、弓を退化消失させて顎関節の自由度を得た有鱗目に比べて堅固な構造のままである。ドイツ語でこの動物を表す単語 Bruckenechsen(Brucke:橋、Echse:トカゲ)はこの架橋部に由来する名称である。カメ目の頭骨はかつては有羊膜類のなかで最も原始的な無弓類形の頭骨をもっており伝統的に無弓類とされてきたが、最近の研究ではそれは元来持っていた側頭窩が二次的に無くなって無弓形に収斂した双弓類だと考えられてきている。下顎端生歯列

上顎の先端は嘴状になっており、頭骨に入り込んだ裂溝によって上顎の後方と分けられている。下顎1列、上顎2列の歯列があり、顎を閉じると下顎歯列は2列の上顎歯列の間に入り込む。上顎骨以外に口蓋に歯列を持つというのは他の爬虫類にもしばしば見られる特徴であり、例えば多くのヘビも上顎2列の歯列をもつが、その配列と機能はムカシトカゲとは異なる。ムカシトカゲの歯は骨から鋸歯状に飛び出ているだけで顎骨と分離した構造になっていない端生歯であり[17]、生え変わりをしない(一生歯性)。靭帯によって連結した上下顎は、上下の剪断と組み合わさった前方・後方への動きを伴って咬合する。特殊化した独特の前後動に伴い、歯は閉じられる際に鋏のように前方へ動くため、保持力は非常に強力である。この仕組みにより、歯は自動的に研磨されて鋭さを保つ。老齢のムカシトカゲは歯が磨耗していくため、ミミズイモムシナメクジなどの柔らかい獲物を食べ、最終的に歯が磨耗しきると顎骨の間で直接食べ物を咬まなくてはならない。
感覚器官

ムカシトカゲの両眼は別々に調整可能で、昼夜とも視覚を得るために2種類の視細胞を含む二重網膜を発達させており、夜間の視覚のために光を反射させる輝板(タペタム)を持つ[2]瞳孔はネコのような縦型[18]。また、第3の瞼である瞬膜を持つ。

ムカシトカゲは頭頂眼(顱頂眼)と呼ばれる第3のをその頭蓋の頂点に持つことで知られ[16]、これは視床上部の一部である上生体複合体に由来する。上生体複合体は後部の上生体(松果体、松果腺)、前部の副上生体(旁松果体)からなるが、ムカシトカゲをはじめとする数群の脊椎動物では、その片方もしくは両方が光受容機能を持つ[19]。ムカシトカゲの場合、発達して光受容機能を有して頭頂眼となるのは、副上生体である。他の四足動物ではトカゲ類に頭頂眼を持つものがいるが、やはり副上生体が基となる。かつて上生体複合体は本来の眼のように左右対の器官であり、左側が副上生体に、右側が上生体になったとする説がある[20][19]。実際この器官は遠い祖先から受け継がれた本当の眼の名残であるとも言われている。ムカシトカゲの頭頂眼は単純ではあるが、本来の眼とよく似た構造を備えており、自前の水晶体、桿状体に似た構造を持つ網膜、脳に繋がった神経などを(退化してはいるが)備えている[20][16]。この特徴的な眼が外部から確認できるのは孵化したてで頭頂部に透明な部分がある時期だけで、4?6か月が経過すると色素を持った不透明な鱗で覆われてしまう。この器官の役割はよくわかっていない。ビタミンDの生成に紫外線を吸収するのに有用であるとか、明暗周期の決定に役立つなどの説があったが、トカゲ類における切除実験の結果から、適切な体温調節のためだとする有力な説が出されている[21]

進化史において両生類の鼓膜は後頭部の切れ込みである耳切痕に張られていたが、初期の有羊膜類でこの鼓膜はいったん失われ、その後の様々な系統で新生していると考えられている[22][23]。たとえば主竜類有鱗類では、新たに新生した鼓膜は方形骨の後縁にある弓状のカーブに張られ、主竜類と同じクレードに属するカメ類[24]では逆に腎臓型に窪んだ方形骨によって形成された耳室から前方の方形頬骨に向かって前方に蓋をするように張られており、またスッポン科カミツキガメ科、およびリクガメ科のほとんどでは方形骨単独で全周が形成された耳室を形作る[25][26][27](このことから、主竜類と有鱗類の鼓膜は同じ形ではあるが祖先形質を共にする共有派生形質ではなく、別個に発達したものだと考えられている)。一方、原始的な単弓類では鼓膜を持たず、下顎を構成する角骨に空気振動を拾う薄い反転板 (reflected lamina) が付属しており、ここから下顎角骨>下顎関節骨>顎関節>方形骨>鐙骨という伝達系を持っていたが、哺乳類の段階になるとこの下顎を構成していた角骨全体が反転板を中心に鼓骨が形成するループに変化して鼓膜が新生し、先述の伝達系全体が3つの耳小骨から成る中耳に変形して繰り込まれ、顎関節そのものが新たに下顎歯骨と側頭部の鱗状骨間に再編成されている[28]。そして、ムカシトカゲは有羊膜類の中で最も原始的な形質の聴覚器官を保っており、鼓膜を持たず、中耳腔も主に脂肪組織からなる粗い組織で充填されている。鐙骨は、舌骨や鱗状骨と同じく、不動性の方形骨に直接つながっている。有毛細胞は特殊化しておらず、求心性神経と遠心性神経両方の神経支配を受け、低周波のみに反応する。100?800Hzの音に反応を示し、官能のピークは40dB・200Hzである[29]
脊椎と肋骨ムカシトカゲ若年個体


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