日本産のクワガタムシとしては大型の種で[14][15]、オスの成虫は最大で体長[注 2]80 mm以上に達する個体が記録されている(後述)[16][17]。日本では北海道から九州まで分布する普通種であり[8]、コクワガタやノコギリクワガタとともに一般的なクワガタムシとして知られ、人気も高い[18]。採集や販売、ペットとしての飼育の対象にもされている(後述)[19]。日本本土(北海道・本州・四国・九州)には原名亜種 Lucanus maculifemoratus maculifemoratus Motschulsky, 1861 が、伊豆諸島には亜種 L. m. adachii Tsukawaki, 1995 が分布するが[6][8]、本項目では原名亜種を中心に解説する。
ミヤマクワガタのオスの性染色体数は n=13 であり、第1分裂でXY対を識別できる[20]。性決定様式はXY型(雄ヘテロ型)であると推定される[21]。 原名亜種である L. m. maculifemoratus Motschulsky, 1861 の場合、日本国内では北海道・本州・四国・九州および、択捉島、利尻島、礼文島、焼尻島、奥尻島、飛島、佐渡島、隠岐諸島、瀬戸内海島嶼部、五島列島[注 3]、甑島列島、熊毛諸島の黒島に分布する[18]。また国後島を分布域に含める場合[6][22][24]、および択捉島を除外する場合もある[24]。タイプ産地は Japan (日本)である[22]。 伊豆諸島に分布する亜種 ssp. adachii や、かつて亜種関係にあるとされていた海外産の近縁種については後述の「亜種」節を参照されたい[22][25]。 成虫の体の背面には光沢があるが、大顎と頭部前方には光沢はない[26]。触角の先端から4節目までは長く鰓状に伸びているが、綿毛がなく光沢を有する[27]。また眼縁突起は複眼の半分に達さない[27]。雌雄とも腹面には灰褐色の毛が生えている[26]。 雌雄とも各脚の腿節に黄褐色の部分があることで他種のクワガタムシと区別できる[28]。また中脚の脛節には3 - 5本、後脚の脛節には2 - 4本の棘がある[1][29]。日本産クワガタムシのほとんどの種の場合、中脚・後脚の脛節に生えている棘は0 - 1本の場合が多く、この点でもミヤマクワガタを他種と区別できる[28]。また前脛節は幅広で内側に湾曲する[30]。日本産のミヤマクワガタ属であるミヤマクワガタや、ミクラミヤマクワガタ L. gamunus Sawada & Watanabe, 1960 およびアマミミヤマクワガタ L. ferriei Planet, 1898 の3種に共通する特徴として、前脛節の先端に生えている2本の外歯(脛節の外側に生えている棘)が発達していることが挙げられる[31]。 成虫の体長[注 2]は、オスで22.9 - 78.6 mm、メスで25.0 - 46.8 mmである(いずれも2013年時点)[8]。なお飼育下ではこれを上回る体長80 mm以上のオス個体が記録されている(後述)。一般的に採集される個体の平均体長は60 mm前後とされ、67 mm超の個体は大型とされる[33]。 オスの大顎を除いた体長を27 - 51 mm、大顎の長さを7.5 - 22 mmとする文献もある[1]。犬飼哲男は1917年から1919年にかけ、北海道帝国大学の構内でノコギリクワガタとミヤマクワガタそれぞれの雌雄を多数採取し、その個体変異に関する統計を集計した[34]。同論文によれば、調査対象となったミヤマクワガタのオス320頭の大顎を除いた体長は28 - 50 mmと連続的な変異があり[35]、44 mmの個体が最多(42個体)だった[36]。またノコギリクワガタのオス(調査個体数は1362頭)と同じく、その変異は2つの頂点を有する双頂曲線に文化する傾向があるとした上で、その原因はオスの内在性によるものであり、異種族の混在や外界の影響などではないと述べている[35][37]。メスに関しても809頭を調査した結果、変異の幅は25 - 39 mmとオスより著しく限定されており[35]、33 mmの個体が最多(175頭)だった[38]。
分布
形態
体長
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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