なお、撮影直前までの脚本では、第4部に『天人五衰』(『豊饒の海』第四巻)が含まれていたが、構成があまりにも複雑になりすぎるという理由で割愛された[2]。また、ポール・シュレイダー監督は第2部「芸術(art)」では、『禁色』を使うことを希望していたが、遺族側の承諾が得られずに、『鏡子の家』になったという[2]。準備段階ではジョン・ベイリーの要望によりスタッフ間でイメージを共有するための資料として1969年の日本映画『御用金』の上映を行い「ルック」の参考とした[8]。
『金閣寺』において笠智衆が出演するわずかなシーンのみでセットを組んだが、諸般の事情によりすべてカットされた。このシーンはDVD化の際に初めて収録された。
主演・緒形拳が演じている三島の役は、戦後文壇デビュー以降から1970年(昭和45年)11月25日に起きた陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地での籠城、自衛隊決起を促す演説、そして最後の割腹自殺である。緒形拳を含め、キャスティングは日本を代表する俳優陣で占められ、非常に豪華なものであった[2]。日本人俳優は日本語で演技をしているため、英語の字幕と、三島文学の熱心な愛読者だという俳優ロイ・シャイダーによる英語のナレーションが要所に付いている[2]。海外で発売されているDVDには、緒形拳による日本語のナレーションが収録されている。
キャスト
フラッシュバック(回想)
緒形拳 - 三島由紀夫・24 - 45歳
利重剛 - 三島の青年時代・18 - 19歳
Yuki Nagahara - 三島の幼年時代・5歳
Masato Aizawa - 三島の少年時代・9 - 14歳
大谷直子 - 三島の母・倭文重
加藤治子 - 三島の祖母・なつ
小林久三 - 文学者の友人
北詰友樹 - ダンスの友人・美輪明宏
新井康弘 - 新聞記者
細川俊夫 - 『鹿鳴館』のプロデューサー
水野洋介 - 『憂国』のプロデューサー・ 藤井浩明
福原秀雄 - 軍医
1970年11月25日
緒形拳 - 三島由紀夫・45歳
塩野谷正幸 - 「楯の会」学生長・森田必勝
三上博史 - 「楯の会」隊員・小賀正義
立原繁人(現・芸名 徳井優) - 「楯の会」隊員・古賀浩靖
Junya Fukuda - 「楯の会」隊員・小川正洋
織本順吉 - 陸上自衛隊東部方面総監・益田兼利陸将