ミサ曲
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また、中世フランス(サン・マルシャル楽派カリクストゥス写本ノートルダム楽派など)に特徴的であるが「ベネディカムス・ドミノ」が代わりに歌われる事が多かったようである。それ以外はハンガリーの作曲家、コダーイが「ミサ・ブレヴィス」において作曲している。
固有文 (proprium)

固有文については、ミサの目的によってテキストが異なるため、その概要について記述するのに留める。ルネッサンス期までは作曲依頼されたミサ曲の目的に合わせて新たに作曲された例もわずかに見られるが、この場合そのミサ曲は年間を通して一度しか演奏される機会が無いことになるため、ミサ曲とは分離して単独の曲として作曲される例が多い。特にオッフェルトリウムの作曲はモーツァルトの頃まで行われている。
イントロイトゥス (Introitus)

ミサの開始で歌われ、そのミサの目的が紹介される。和訳では「入祭唱」。現行典礼の「第一朗読」および「答唱詩篇」にあたり、アンティフォナと詩篇唱とドクソロジア(小栄光唱)、すなわちアンティフォナ-詩篇唱-ドクソロジア-アンティフォナ形式で歌われる。降誕節(主の降誕)の日中のミサの例では、アンティフォナでは『旧約聖書』「イザヤ書」9:6から採られた歌詞(Puer natus est......)が「おさな子われらに生まれ、み子われらに与えられぬ。その肩に権威おび、その名大いなる御計画の使いと呼ばれん」と歌われ、詩篇唱では『旧約聖書』「詩篇」97:1からとられた歌詞(Cantate Domino......)が「主に向かいて新しき歌うたえ、主、不思議なるわざなさりしゆえ」と歌われる。グレゴリオ聖歌の場合、旋律は第七旋法で書かれ、喜びにわき上がるような動きが印象的である。
グラドゥアーレ (Graduale)

ミサの前半「言葉の儀」において、「使徒の書簡」朗読の後に歌われる。名前の由来は幾つかあるが、いずれの説も祭壇の階段(グラドゥス)に関係する。和訳では「昇階唱」。レスポンソリウム形式で歌われる。降誕節の日中のミサの例では、詩篇97:3、4からとられた歌詞が「地上のすべての国々はわれらが神の救いを見たり。すべての地よ、神をたたえよ。主はその救いを知らせ、民の目の前にその正義を示したまえり」と歌われる。グレゴリオ聖歌の場合、旋律は第五旋法で書かれ、歌詞の母音をのばすメリスマが目立つ(昇階曲参照)。
アレルヤ (Alleluia)

もしくはアレルイア。ヘブライ語が語源で非常に古い起源をもつ。レスポンソリウム形式で歌われる。賛嘆の歌なので、待降節、レクイエム、四旬節には歌われず、代わりに次のトラクトゥスが歌われる。和訳では「アレルヤ唱」。
トラクトゥス (Tractus)

待降節、レクイエム、四旬節のミサにおいて、アレルヤ唱の代わりに歌われる。和訳では「詠唱」。
セクエンツィア (Sequentia)

中世後期からルネッサンスにかけて、アレルヤ唱の説明文的な役割として派生し、アレルヤ唱に続いて歌われるようになった。和訳では「続唱」。セクエンツィアはその後ミサのあちこちに挿入されるようにもなった。トリエント公会議に於いて4曲を残して全て禁止された(後に1曲が追加公認)。レクイエムのセクエンツィアであるディエス・イーレはその残されたものの一つ(セクエンツィア参照)。
オッフェルトリウム (Offertorium)

ミサの後半「聖餐式」の始めに最後の晩餐を再現するため葡萄酒と種なしパンを祭壇に捧げるが、この間に歌われる。アンティフォナ形式。和訳では「奉献唱」。
コンムニオ (Communio)

「聖餐式」の最後の「聖体拝領(キリストの血と肉の象徴である葡萄酒と種なしパンを信者に配る儀式)」の直前に歌われる。和訳では「聖体拝領唱」。
レクイエムとの違い

ミサ曲の特殊な形としてレクイエムがある。レクイエムは、「死者のためのミサ曲」あるいは「鎮魂ミサ曲」などと訳され、死者ミサの入祭唱の冒頭句から取られた名称である。通常のミサ曲と典礼文に若干の違いがある。まず通常は教会暦にしたがって通常文(たとえばミサ開始の典礼文である入祭唱)が割り振られる箇所でも、レクイエムでは、入祭唱をはじめとして固有文や儀式に関連する聖歌などが含まれる。また通常のミサで用いる『グローリア』や『クレド』が用いられず、他の通常文も語句が変更される場合などがある。
第2バチカン公会議以降のミサ曲

1962年から65年にかけて開かれた第2バチカン公会議では、その典礼改革に於いてミサをラテン語ではなく各国の言語に訳したもので執り行うことが許可された。また、上記で解説されている固有文にも、第2バチカン公会議で変更・廃止され、現代の一般的な典礼では用いられない部分がある。

ミサ曲においてもこれをうけて、例えばアルゼンチンアリエル・ラミレスによる「ミサ・クリオージャ」(南米大陸のミサ)のように自国の言語によるものが作曲され始めている。日本においては高田三郎による『やまとのささげうた』や『ミサ賛歌I』、その弟子である新垣壬敏の『神の母聖マリア』、サレジオ会の司祭である伏木幹育によるものなど、「典礼聖歌」におさめられたミサ曲がある。

これらのミサ曲は、歌唱の訓練を受けた聖歌隊が歌うためではなく、ミサの参加者である会衆が皆で歌えることを目的としており、演奏会用に作曲された作品群とは趣を異にする。とはいえ、ミサ曲としての構成は同じであり、多くは「Kyrie」「Gloria」「Sanctus(Benedictusも含む)」「Agnus Dei」の4曲、もしくは「Gloria」を除いたもの、「Credo」が加えられたものなどが存在する。
脚注^ 及川信『オーソドックスとカトリック―どのように違うのか歴史と多様性を知る 第二部 三「ミサではないのに」』139頁 - 140頁、サンパウロ ISBN 9784805612279
^ a b cミサとミサ曲<ミサ曲>の節を参照のこと。 - 国本静三 音楽サロン

関連項目

トロープス

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