ミサイル
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艦対艦ミサイル(SSM:: ship-to-ship missile)
水上艦から発射される対艦ミサイル。明示的に艦対艦ミサイルとする場合は潜水艦から発射される対艦ミサイルは含まれない事が多い。
空対艦ミサイル(ASM:: air-to-ship missile)
航空機から発射される対艦ミサイル。航空機は機動力に優れるため、このグループのミサイルの射程は他のプラットフォームから発射される対艦ミサイルより短いものが多い。
対潜ミサイル

対潜ミサイルは水中の潜水艦を攻撃するミサイルで、その多くが弾頭相当として短魚雷を備えて着水時に分離する。ミサイルであると共に対潜兵器でもある。
対空ミサイル母機から切り離されたASATミサイル

対空ミサイルは空中の目標を攻撃するミサイルである。
地対空ミサイル(SAM:: surface-to-air missile)
地上から発射される対空ミサイル。拠点防空用の長射程ミサイルと野戦防空用の中短射程ミサイルに分けられる。
艦対空ミサイル(SAM:: ship-to-air missile)
艦船から発射される対空ミサイル。個艦防空用の短射程ミサイルと艦隊防空用の長射程ミサイルに分けられる。
空対空ミサイル(AAM:: air-to-air missile)
航空機から発射される対空ミサイル。航空機同士の戦闘で使用される兵器である。視程外距離戦闘で用いられる長射程ミサイルと近距離で使用される短射程ミサイルがある。短射程ミサイルはヘリコプターや低脅威度の航空目標への攻撃や格闘戦に用いられる。
弾道弾迎撃ミサイル(ABM:: anti-ballistic missile)
空中の弾道ミサイルを迎撃するミサイル。宇宙空間の飛行中や大気圏の落下中の高速度の目標ミサイルを迎撃するためには、高度な技術が求められる。
対衛星ミサイル(ASAT:: anti-satellite missile)
衛星軌道上の人工衛星を攻撃するミサイル。技術的にも政治的にもかなり特殊なミサイルである。
特徴

日本語で言うところのミサイルは一般には推進装置と誘導装置を持つ兵器を指し、推進装置だけで誘導装置を持たないロケット弾や、推進装置を持たず誘導装置だけを持つ誘導爆弾や誘導砲弾とは区別される。一方でこの分類はかならずしも普遍的なものではなく、AGM-62のような推進装置を持たない誘導弾が「ミサイル」に分類されることもあるし、ロシアにおいては誘導装置を持たないロケット弾も「ミサイル」に分類される。一般の爆弾砲弾は推進装置も誘導装置も有しない。推進装置は一般に固形ロケットを使用するが、大陸間弾道弾には液体ロケットを使用するもの、巡航ミサイルには燃費の良いジェットエンジンを使用するものがある。

軍用航空機は空を飛ぶことで目標を攻撃するが、自ら目標に向かって失われることは想定されておらず、砲弾と大砲の関係のように、別の投射体を放つためのプラットフォームとなっている兵器である。近代兵器としてのミサイルの黎明期には、「戦闘機」や「爆撃機」として分類されたものも存在する
F-99 ボマークB-62 スナーク 等)。

無人で放たれた後は短時間の1度限りの使用であるため、高熱や振動・圧力に起因する強度低下や再使用の整備は考慮せずに済み、比較的新しい技術を導入しやすい。

排気煙の視認を避けるため、白煙の元となるアルミニウム粉を用いない固体推進剤、さらに排気炎を出さないものが研究されている。外殻を金属からプラスチックへ変更し、ステルス性を高める研究が行われている。

発射地点から攻撃可能な目標地点までの最大距離が射程である。地対空ミサイルや艦対空ミサイルでは重力に逆らって上昇するのに推進力が消費されるため、水平距離だけでなく高さも含めて表現されることが多い。小型ミサイルでは多くの場合、弾頭部の種類別にミサイルの型名が付けられているため、射程も一意に決まるが、大型ミサイルでは弾頭を変更可能な場合、重い弾頭を運搬する場合と軽い弾頭を運搬する場合では射程が異なることがある。すべてのミサイルは発射時には爆発しないように作られており、その多くが安全装置や誘導装置の動作手順の都合によって、最短有効距離や最小有効射程などと呼ばれる攻撃に使用しても動作が保証されない距離が設定されている。

多くのミサイルは、飛翔体の他にも外部での誘導や発射にさまざまな装置を必要とする。以下に主要なミサイル・システムの構成要素を示す。簡易な肩撃ち式の対戦車ミサイルでは、射撃統制に複雑な装置は必要とせず、追尾レーダーも飛翔体に内蔵したものだけで済ますミサイルもある。

射撃統制装置(=発射プラットフォーム側の誘導装置)

捜索レーダー、追尾レーダー、IFF装置

射撃計算機、発射機、通信装置


運搬装置

ミサイル(飛翔体)[1]

呼称

「ミサイル」とは、原義では投射体、飛び道具投石を指すが、現代で「ミサイル」と呼ぶ場合は主に推進システムと誘導システムを持つ兵器を指し、近代以前の投射武器(投石、焙烙玉など)を指すことは少ない。

語源はラテン語の動詞 mittere(投げる)から派生した形容詞 missile(投げられるもの)であり、ローマ時代では“ミッシレ”と呼ばれていた。

語としては、語源のラテン語を綴りをそのまま自言語の読みにしたもの(missile:英語-ミッスル、フランス語-ミシール、イタリア語-ミシーレ、等[注 1])の他に、ラテン語の発音を自言語の綴りに直したもの(スペイン語: Misil、デンマーク語: Missil、等)、近代兵器としての概念を訳したもの(ドイツ語: Lenkflugkorper、Lenkrakete-直訳すると「操縦(される)飛行体」及び「操縦(される)ロケット(弾)」、中国語:??(繁体字:導弾、d?odan)等。後述の日本語の「誘導弾」「誘導飛翔体」もこれに含まれる)、がある。

また、ロシア語ポーランド語では総じて「Ракета(ラケータ、ロケットのロシア語表記/読み)」、「Pocisk odrzutowy(直訳すると「噴射弾」)」と呼称され、無誘導の「ロケット弾」および航空宇宙用語としての「ロケット」と区別されないことがあるが[注 2]、後者二つも含めて世界的に通称としてラテン語綴りの「missile」及び英語風発音の「ミサイル」で通じることがほとんどである。

正式な軍事用語として「ミサイル」が登場するのは、1947年にアメリカ空軍が発足した際に航空兵器全般の正式な命名規則を制定し、それまでは定まった名称がなかった誘導ロケット系や飛行爆弾系の兵器をあらたな定義である「ミサイル」に一括分類したときである。なお、具体的な由来や命名者は不明である。

日本での訳語としては「誘導弾(ゆうどうだん)」という呼称が用いられており、これは公式な名称として自衛隊を始めとして用いられているが、「誘導飛翔体(ゆうどう-ひしょうたい)」という語が用いられることもある。現代では「誘導弾」「誘導飛翔体」の呼称は防衛省の公的呼称以外にはあまり使われておらず、英語風のカタカナ表記である「ミサイル」が特に解説を要しない名詞として用いられていることが多い。

「ロケット弾」の和訳語が「噴進弾(ふんしん-だん)」であることから、「誘導(式)噴進弾(ゆうどう(しき)-ふんしん-だん)」という用語もある。

尚、各種のミサイルのうち、弾道ミサイルのみは「弾道弾(だんどう-だん)」の呼称が和訳語として用いられており、“弾道誘導弾”とは呼称されない。
構造ミサイルの構造

ミサイルの飛翔体は、ほぼ同じような構造から成り立っており、構成する装置類を頭部から後部に向かって順に示す。モジュール化構造を備えた飛翔体では、筐体となる外殻と特にそのモジュール同士の接続部に高い強度が求められる。

推進ブースターが発射時の加速補助のために外部装着される事もある。ジェットエンジンが採用されていれば弾体の一部に開口部が設けられ、空気取り入れ口が装備される。そういったミサイルでは操向翼とは別に主翼とも呼べる大きな翼を備えるものが多い。巡航ミサイルは誘導装置の一部として電波高度計を備えるのが一般的で、衛星位置情報システムや地形地図情報システムも備えるものが多く、そういった装置のアンテナが露出される。小型ミサイルでは誘導用のワイヤーを尾部より繰り出すものがある。
索敵装置

目標を捜索(: search)、発見・識別するシステム。索敵装置にはレーダーソナーなどの捜索システムと発見した目標の識別を行う敵味方識別装置(IFF:: identification friend or foe)が含まれる。赤外線誘導ミサイルや長射程のミサイル、対地ミサイルの場合、ミサイル本体に搭載されていることも多く、英語ではこれをシーカー(: seeker)と呼ぶ。
誘導装置
詳細は「ミサイルの誘導方式」を参照

誘導装置はミサイルの先端付近に取り付けられ、目標を追跡(: tracking)し目標の現在位置とミサイル自身の進行方向とのずれを随時計算して操縦装置へ進路補正を指示する。英語ではガイダンス・システム(: guidance system)、ホーミング・システム(: homing system)と呼ぶ。ミサイルには複数種類の誘導装置が搭載される事があり、それぞれ使用される時点に応じて中間誘導装置(: intermediate guidance system)、終末誘導装置(: terminal guidance system)と呼ばれる。一種類しか搭載されていない場合は単に誘導装置と呼ばれる。
安定翼

操向用の操舵翼とは別に安定翼(=固定翼)によって飛翔の安定性を高めるのが通常である。主翼とも呼ばれる。固定式と展張式のものがある。展張式安定翼では、ミサイル内に格納されているものと、ミサイルの周囲を囲むように折り畳まれているものがある。多くがスプリングによって発射直後に展張する。操舵翼も展張式のものがある。
弾頭

弾頭は誘導装置の直後に置かれる事が多く、ミサイルが目標を破壊するために必要な装置である。英語ではウォーヘッド(: warhead)と呼ぶ。
通常弾頭
核兵器や生物兵器、化学兵器以外の弾頭であり、弾頭部の重量は携帯ミサイルの数キログラムから対艦ミサイルの数百キログラムまでの幅がある。ミサイルは飛翔するために軽量であることが要求され、多くの爆弾と比べれば弾殻は薄く、肉厚高抗張力合金鋼やチタン合金で作られているものが多い。

榴弾弾頭:高性能火薬を主体とした弾頭である。


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