マンモス
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発掘メリジオナリスゾウ(南方マンモス)の全身骨格模型

マンモスの化石はヨーロッパなどで古くから掘り出されており、該当する現生動物がいなかったことから、巨人怪物の骨であるとされてきた。例えば、15世紀に発見されたマンモスの大腿骨は、「巨人の骨」としてウィーンシュテファン大聖堂に飾られていた。

フランス博物学者ジョルジュ・キュビエは、現生のゾウの骨格とこれらの化石の詳細な比較を行い、「これら化石は現生種とはまったく異なる古代に絶滅したゾウの一種である」と結論づけ、この化石種を「マンモス」と命名した。1796年王立科学芸術協会にて、キュビエは「現生ゾウと化石ゾウの種について」という題目でこの結果を発表している。ほどなく1799年シベリアのツンドラ永久凍土から、骨だけでなく皮膚、体毛も残ったづけのマンモスが発見され(D・F ヘルツによると肉は新鮮に見えたという)、キュビエの考えに強力な裏づけが得られた。
シベリア

シベリアで凍ったマンモスが次々と発見されたことを受け、1860年ロシア科学アカデミーは、「マンモスの完全な骨格を発見した者に100ルーブルを支払う」というパンフレットを作成し、シベリアの住民に配布した。しかし、マンモスを冒?することで呪いを受けることを恐れたり、マンモス運搬に使役されるなどの面倒に巻き込まれることを避けたりするなどの理由から、発見されても報告されることはほとんどなく、破棄されてしまうなど、多くのマンモスが闇に葬られてしまった。

1900年、北シベリアのベレゾフカ川岸でマンモスが発見されたという通報を受け、1901年5月3日、ロシア科学アカデミーの動物学者オットー・ヘルツとオイゲン・ピッツェンマイヤーらはペテルブルク(現・サンクトペテルブルク)を出発した。鉄道で5月14日にイルクーツクに、6月14日に馬車ヤクーツクに、9月9日に現地に到着した。マンモスは腐敗するも、残存した頭蓋骨と地中に埋没した下半身という半ば立ち上がった姿勢をしていた。これを運搬用に解体し、1902年2月18日に帰還した。復元された標本は「ベレゾフカのマンモス」と呼ばれ、ロシア帝国皇帝・ニコライ2世アレクサンドラ皇后も見学した。このマンモスは腰と後ろ足の骨を骨折していた。また歯の間や胃の内容物から植物が発見され、その食性があきらかとなった。胃の中からはイネ科の植物とスゲが多量に出てきた。ほかにキョクチヤマヨモギ、エンドウやデージー、キンポウゲなどの草やヤナギ、カバ、カラマツ、ハンノキなどの小枝も見つかっている。これらの胃の内容物からマンモスは、広大な草原(マンモスステップ(英語版)、ツンドラステップと呼ばれる)に暮らしていたと考えられている[6]

1977年ソビエト連邦(当時)のシベリアにて赤ん坊マンモスの死体が掘り出された。生前の姿をほぼ完全に残したこの赤ん坊は「ディーマ」と名づけられた。ディーマは体高90センチメートル、体長120センチメートル、生後6 - 12か月のオスの赤ん坊であり、約4万年前に死亡したと考えられる。ディーマは保存処理がなされた後、臓器筋肉血液などについて生化学的、解剖学的調査がなされた。

氷づけのマンモスから取り出したDNAの断片を現生ゾウのDNAと比較することで、これらの種の遺伝的な関係を明らかにするという研究がなされている。また、マンモスのDNAは長い年月の間に分解され断片化しているが、完全なDNAが見つかればクローン技術によってマンモスを復活させることができるかも知れないと考えられている。氷づけのマンモスから、完全なDNAが残されている細胞核を取り出し、現生ゾウの卵細胞に注入することで、マンモスの復活を果たすというものである。上述のディーマからは完全なDNAを取り出すことはできなかったが、必要なDNAを得るべく、氷づけのマンモスの探索が続けられている。シベリアで2007年に発見されたケナガマンモス「リューバ」。

2007年、ロシア連邦西シベリアの北極圏を流れるユリベイ川付近で約1万年前に絶命したとみられる生後1年ほどの雌の凍結マンモス(リューバ)がほぼ無傷の状態で見つかった。2012年には、タイミル半島エニセイ川河岸において、11歳の少年によって3万年前のマンモスの死骸が良好な保存状態で発掘された[7]

なお、2005年に愛知県で開催されていた愛・地球博では、ロシア北東部のサハ共和国で発掘されたマンモス(地名から「ユカギルマンモス」と呼ばれている)の一部(牙、頭部、左前肢等)を博覧会場で展示するプロジェクトが行われていた。その後もこの「ユカギルマンモス」は、万博閉幕後もフジテレビ本社(東京都、2005年12月10日 - 2006年2月28日)、愛知県体育館(愛知県名古屋市、2006年3月25日)、豊橋市自然史博物館(愛知県豊橋市、2006年4月8日 - 6月18日)、日本科学未来館(東京都江東区、2006年7月1日 - 9月3日)、大阪WTCコスモタワー(現:大阪府咲洲庁舎)(大阪府大阪市、2007年7月25日 - 10月8日)の5カ所で行われた各種イベントで、再度その姿を見ることができた。

また、2013年にはシベリアで発掘されたマンモス「ユカ」が、パシフィコ横浜で開かれた特別展マンモスYUKAで展示公開された。

近畿大学はこの「ユカ」の保存状態が良い肉片を入手しており、クローン技術を使ってマンモス体細胞の核を抜き取ってアジアゾウ卵子に移し、アジアゾウの子宮で出産させる研究を進めている[8]

2020年前後からは、温暖化により発掘が容易となったことでサハ共和国で「マンモスラッシュ」と呼ばれる発掘ブームが起きている[9]
日本

日本では13点の化石が発見されている。そのうち12点が北海道で発見され、残り1点は島根県日本海の海底約200メートルから引き揚げられた標本である[注釈 1]。加速器分析計による放射性炭素年代測定が行われ、8点が測定可能で、得られた結果は約4万8000年前 - 2万年前までであった。これらの結果から約4万年前より古い化石と約3万年前より新しい年代を示す化石に分けられ、約3万5000年前あたりを示す化石はなかった。マンモスに替わってナウマンゾウが生息していた時代ではないかと推測されている[10]
系統と分類
系統

Shoshani et al.(2007)[11]による。.mw-parser-output table.clade{border-spacing:0;margin:0;font-size:100%;line-height:100%;border-collapse:separate;width:auto}.mw-parser-output table.clade table.clade{width:100%}.mw-parser-output table.clade td.clade-label{width:0.7em;padding:0 0.15em;vertical-align:bottom;text-align:center;border-left:1px solid;border-bottom:1px solid;white-space:nowrap}.mw-parser-output table.clade td.clade-fixed-width{overflow:hidden;text-overflow:ellipsis}.mw-parser-output table.clade td.clade-fixed-width:hover{overflow:visible}.mw-parser-output table.clade td.clade-label.first{border-left:none;border-right:none}.mw-parser-output table.clade td.clade-label.reverse{border-left:none;border-right:1px solid}.mw-parser-output table.clade td.clade-slabel{padding:0 0.15em;vertical-align:top;text-align:center;border-left:1px solid;white-space:nowrap}.mw-parser-output table.clade td.clade-slabel:hover{overflow:visible}.mw-parser-output table.clade td.clade-slabel.last{border-left:none;border-right:none}.mw-parser-output table.clade td.clade-slabel.reverse{border-left:none;border-right:1px solid}.mw-parser-output table.clade td.clade-bar{vertical-align:middle;text-align:left;padding:0 0.5em;position:relative}.mw-parser-output table.clade td.clade-bar.reverse{text-align:right;position:relative}.mw-parser-output table.clade td.clade-leaf{border:0;padding:0;text-align:left}.mw-parser-output table.clade td.clade-leafR{border:0;padding:0;text-align:right}.mw-parser-output table.clade td.clade-leaf.reverse{text-align:right}.mw-parser-output table.clade:hover span.linkA{background-color:yellow}.mw-parser-output table.clade:hover span.linkB{background-color:green}

Elephantimorpha

†マムート科 Mammutidae(マストドン

Elephantida

†ゴンフォテリウム科 Gomphotheriidae

Elephantoidea

†ステゴドン科 Stegodontidae (ステゴドン類)

ゾウ科

アフリカゾウ属 Loxodonta

Elephantini

パレオロクソドン属 Palaeoloxodon (ナウマンゾウなど)

Elephantina


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