ロマンス語の影響を受けてはいるが、マルタ語の文法は依然としてアラビア語そのものである。形容詞は名詞を後ろから修飾し、本来副詞は少なく、語順はかなり自由である。アラビア語やヘブライ語と同様、名詞が定冠詞をとる場合、それを修飾するセム語起源の形容詞も定冠詞をとる。例:L-Art l-Imqaddsa(=〈定冠詞〉-土地 〈定冠詞〉-聖なる)。ちなみに、アラビア語では'al-'ar? 'al-muqaddasa、ヘブライ語ではha'arets hakkedo?a。但し、形容詞が定冠詞をとらないこともある。ロマンス語起源の形容詞は定冠詞をとらない。
名詞の数には部分的に双数が残存している。
動詞はアラビア語の「三語根のパターン」を保持している。つまり、子音三つからなる語根に貫通接辞を付け加えることで動詞に文法的な意味を付与するのである。例えば、「書く」を表す三つの子音KTBに接中辞-i, 接尾辞-naを加えてktibna(私たちは書いた)を作る(ちなみにアラビア語ではkatabna, ヘブライ語ではkatavnu)。時制は非過去
と過去の二つである。ロマンス語起源の動詞にはアラビア語的な動詞派生法は適用されないが、動詞活用は、アラビア語の活用法をそのまま使い、接頭辞と接尾辞がつく。例えば、idde?idejna(私たちは決めた)はロマンス語の動詞(i)dde?idaにアラビア語の語尾-ejna(一人称複数完了)がついたものである。チュニジア方言などいくつかの方言でこのような動詞活用が見られるとはいえ、アラビア語ではこのような動詞活用は行わないのが基本である。
マルタ語の文法にはアラビア語的なものとロマンス語的なものが共存しており、語彙の起源と慣習に従って使い分けられる。英語からの借用語に見られるアングロサクソン語的な要素は最近の現象である。
ロマンス的な文法は概して周辺的である。ロマンス語起源の名詞は-iか-ijietを付け加えることで複数になる。例えば、lingwa(言語)はlingwiと複数化される。アラビア語語彙の複数はもう少し複雑である。語尾複数は-at/-iet/-ijiet(アラビア語の-at, ヘブライ語の-ot)、-(i)n(アラビア語の-iin, ヘブライ語の-im)、-an/-ien(アラビア語の-aan)をつけることで行われ、語内複数はktieb(本)/kotba; ra?el(男)/(i)r?ielのように母音の変化によって表される。これらはアラビア語のほか、セム語系では一般的な屈折である(ヘブライ語ではsefer(本)/ sfarim) この節には独自研究が含まれているおそれがあります。問題箇所を検証し出典を追加して、記事の改善にご協力ください。議論はノート
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マルタ語の語彙はアラビア語語彙を基礎とし、(イタリア語トスカーナ方言よりむしろ)シチリア語から膨大な借用語をとりいれたハイブリッドである。この点においてフランス語の影響を強く受けたゲルマン語である英語、アラビア語の影響を強く受けたインド・イラン語派のペルシア語と似ている。なお、ロマンス語を基調としつつアラビア語語彙を受け入れたスペイン語とは鏡像的な関係であるとも言える。
語彙の60%はアラビア語語彙であり、残りはロマンス語であると概算される。Zammit (2000) によるとコーラン・アラビア語からサンプルをとった1820語の語根のうち40%がマルタ語に見出すことができるとのことである。これは他のアラビア語のモロッコ方言 (58%) やシリア方言(英語版) (72%) に比べて少ない。一般に基本的な概念を表す語彙はアラビア語であり、新しい概念、物、政府、法律、教育、芸術、文学に関する「高尚」な語彙はシチリア語から借用されている。よって、ra?el(男)、mara(女)、tifel(子供)、dar(家)、xemx(太陽)、sajf(夏)といった語彙は全てアラビア語起源であり、skola(学校)、gvern(政府)、repubblika(共和国)、re(王)、natura(自然)、pulizija(警察)、?entru(中心)、 teatru(劇場、映画館)、differenza(差異)などはシチリア語からの借用語である。よって、ロマンス語の話者はマルタ語版ウィキペディアのメインページや新聞記事の見出しを理解することはできるが、「その男は家にいる」のような基本的な文でさえ理解できない。これは、外国語のできない英語話者がフォーマルな、あるいは学術的なフランス語の意味を推測することができるのに、簡単な文章はむしろ理解できないというのに似ている。
例として人権宣言の最初の部分を挙げる。
Il-bnedmin kollha jitwieldu ?ielsa u ugwali fid-dinjita u d-drittijiet. Huma mog?nija bir-ra?uni u bil-kuxjenza u g?andhom i?ibu ru?hom ma' xulxin bi spirtu ta' a?wa.
ロマンス系の語彙はイタリア語トスカーナ方言ではなくシチリア語の発音を反映している。よって、イタリア語の語末のoはuに、語末のeはiとなっている。例えばイタリア語の Cristo(キリスト), arte(芸術)は、マルタ語ではそれぞれ Kristu(シチリア語ではCristu), arti(シチリア語でもarti)である。
その他
かつてアル・アンダルスで使われていたアラビア語を復元する際には、言語のルーツの近さと接触した言語の類似性からマルタ語が大きな参考とされている。詳しくはアル・アンダルス=アラビア語を参照のこと。
類似の状況の他言語としては、ドンガン語が挙げられる。キルギスなど中央アジア諸国で漢民族系ムスリムによって使用され、中国語方言を基本としながらも、アラビア語・ペルシア語・テュルク諸語・ロシア語からの借用語が多く、キリル文字で表記される。
関連項目
言語 - 言語の分類一覧
アラビア語シチリア方言
イタリア語
アラビア語
アル・アンダルス=アラビア語
ロマンス語
フスハー
アーンミーヤ
参考文献
Aquilina, Joseph (1995). “Maltese: A Complete Course for Beginners (Teach Yourself) ”, NTC Publishing Group, ISBN 0844236977.
Aquilina, Joseph (1987). “Maltese-English Dictionary: A-L Vol 1”, Midsea Books Ltd, ISBN 999099336X.
Aquilina, Joseph (1989). “Maltese-English Dictionary: M-Z Vol 2”, Midsea Books Ltd, ISBN 9990993319.
Zammit, Martin (2000). “Arabic and Maltese Cognate Roots”, Manwel Mifsud Proceedings of the Third International Conference of Aida, 241-245. ISBN 9993200441.
脚注[脚注の使い方]
外部リンク.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}マルタ語版のウィキペディアがあります。