マリファナ
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長吉秀夫は元々「痲薬」と書かれていた単語が当用漢字表以後「麻薬」と書かれるようになり麻(あさ)との混同が生じたと示唆するが[31]、船山信次によれば、漢字の「麻」の字形は古くはであり、「大麻」「麻薬」の両方でこの字を使っていたとされる[32]

ラテン語、ギリシャ語の kannabis は「管」を意味し、これを由来とし英語では広くカンナビス (cannabis) と呼ばれ、乾燥した花や草をいう[1]。メキシコ・スペイン語でマリフアナ (Marihuana, marijuana) は、女性名 Maria Juana の短縮形でポルトガル語の Marigango、興奮剤の意が変化したという推察がある[1]。日本の辞書ではマリファナは、煙草に入れて吸引すると説明する辞書があるが[33]、メキシコでは煙草に混ぜる習慣がある[1]。インドでは効果が弱く安い、葉と茎が原料のものがバングと、花穂から製造されるものがガンジャと、樹脂から製造されたものがチャラスと呼ばれ区別される。中近東ではハシシと呼ばれる[4]

スラング・俗称や隠語としては、英語圏などでは「ウィード」「グラス」「ハーブ」「ポット」「420」があり、日本語においては「草」「葉っぱ」「野菜」「緑」などがある[34]
薬学的分類

ICD-10 第5章の薬物関連障害DSMでは、大麻は個別の単位である。刺激薬(アッパー)、抑制薬(ダウナー)、幻覚剤(サイケデリック)の三大分類では、大麻を抑制剤に分類する2009年の世界保健機関の資料があり、しかし知覚を変容させる幻覚特性もあるとされている[35]。この三大分類を使った別の資料では、抑制作用と幻覚作用の中間に分類されている[36]

幻覚剤や大麻に詳しいハーバード大学のレスター・グリンスプーンによれば、大麻には弱いサイケデリック作用があるが、ドラッグの使用者も幻覚剤のような強い作用を起こさないものだとして大麻を同列には扱わず、典型的な幻覚剤とは異なり大麻では眠気を起こす性質もあり、典型的な幻覚剤であるLSD、メスカリン、シロシビンでは、一方の薬剤の使用によってほかの薬剤が効かなくなるという、交叉耐性が生じるが、大麻の成分THCはそうした交叉耐性を起こさないという違いがある[37]。大麻では労働中に使用したり、ジャマイカでは大量に日常的に使用することがあるが、穏やかな刺激をもたらすことが目的である[37]
歴史「アサ#歴史」および「医療大麻#歴史」も参照ウィーン写本(1世紀)に記された、大麻の図(Cannabis sativa)

大麻の薬や嗜好品としての歴史は長く、中国で2700年前にシャーマンが薬理作用を目的としたとされる大麻が発掘されている[6]。2500年前の、中国の古代都市の車師の墓地からも、麻の布がなく花穂の特徴から摂取を目的としたと考えられる大麻草13本が出土している[7]後漢(25年 - 220年)の頃に成立したとされる中国最古の薬物学書『神農本草経』に薬草として使われていたことが記されている。「歴史の父」と呼ばれるヘロドトスは、『歴史』において、紀元前450年のスキタイ人やトラキア人は大麻を吸っていたと伝え、70年にはローマ帝国の医学治療として大麻の使用が言及された。アラビア中東では900年から1100年にかけて大麻の喫煙習慣が広まった。アメリカ大陸においては、1549年にアンゴラから連れてこられた奴隷が、ブラジル東北部での砂糖のプランテーション砂糖とともに大麻を栽培し、喫煙していた。アメリカ大陸のスペイン領やイギリス領でも大麻の栽培は行われ、特にメキシコでは大麻使用が大衆化した。

日本の『万川集海』(21巻、1676年)には、大麻の葉を乾燥させて粉にした「阿呆薬」なるものの製法が記載されている。食事などに混ぜて薄茶3服ほど摂取させると「気が抜けてうつけになる」とされている。ヨーロッパでは、嗜好品としての大麻は1798年のナポレオン・ボナパルトによるエジプト遠征によってエジプトから伝えられ、1843年にはパリで「ハシッシュ吸飲者倶楽部」が設立された。1937年以前に生産されていた大麻チンキ

西洋では1840年以降、大麻を医療に用いるための100冊以上の書籍が出版され、脚光を浴びた[38]。1870年にギリシアで大麻使用が全土に普及した。また、イギリスの上流階級や王室の間にも広がり、ヴィクトリア女王は生理痛の緩和に使っていた。薬用としては腹痛や発熱不眠症結核患者に使われた。

江戸時代の博物学者貝原益軒の『大和本草』に大麻(アサ)の項があり、麻葉の(マラリア)への治療薬としての効能、日本で大昔から麻が植えられていた様子が『日本書紀』や『舊事紀』に見られることなどが記されている[39]。その他、第二次世界大戦前の生薬学では、大麻の麻酔性がインド、中国では紀元前から知られており、嗜好用途のほかに鎮静薬及び催眠薬として、喘息への熏煙剤および紙巻煙草としての用法があると記載されている[40]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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