マラリア原虫は寄生した脊椎動物で無性生殖を、終宿主である昆虫(蚊)で有性生殖を行う。したがって、ヒトは終宿主ではなく中間宿主である。ハマダラカで有性生殖を行なって増殖した原虫は、スポロゾイト(胞子が殻の中で分裂して外に出たもの)として唾液腺に集まる性質を持つ。このため、この蚊に吸血される際に蚊の唾液と一緒に大量の原虫が体内に送り込まれることになる。血液中に入ると45分程度で肝細胞に取り付く。肝細胞中で1 - 3週間かけて成熟増殖し、分裂小体(メロゾイト)が数千個になった段階で肝細胞を破壊して赤血球に侵入する。赤血球内で 8 - 32個に分裂すると赤血球を破壊して血液中に出る。分裂小体は新たな赤血球に侵入しこのサイクルを繰り返す。
ヒトに対し病原性を及ぼすマラリア原虫(Plasmodium属)の種[14]
熱帯熱マラリア原虫 (P. falciparum)
三日熱マラリア原虫 (P. vivax)
卵形マラリア原虫 (P. ovale)
四日熱マラリア原虫 (P. malariae)
二日熱マラリア (P. knowlesi)(まれ)
検査赤血球内に感染している熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)のリング体(スケールは10μm)
ギムザ染色によってマラリア原虫は赤血球内に認められる。
末梢血ギムザ染色 - ただし通常のpH6.5ではなく、ph7.2 - 7.4のリン酸緩衝液を用いたほうが観察しやすい。
迅速診断キット
ICT Malaria P.f./P.v.R
OptiMALR
PCR-MPH法(岡山大学の綿矢ら)
赤血球の溶血にともないハプトグロビン値の低下が見られる。血小板数も低下する。
血液検査
予防蚊帳
ワクチンが実用化される以前は、マラリアの流行地に行く場合はまず感染を防ぐ為には、蚊に刺されないようにすることが最重要事項だった。殺虫剤や虫除けスプレーなどを使うほか、夜間は蚊帳を用いることも必要である。メフロキン等の抗マラリア薬の予防投与も行われる[15]。
蚊の防除パナマ運河地帯での防除作業(1912年)
一般的に、土着マラリアが流行する地域では、住民は劣悪な住居に住んでいる。実際、明治34年(1901年)に土着マラリアが流行していた北海道深川村(現在の深川市)では、7 - 8月、屯田兵の兵屋内で、容易に50 - 60匹のハマダラカを捕獲できた。つまり屯田兵の兵屋は、50 - 60匹のハマダラカが屋内に侵入するような劣悪な住居で、なおかつ住人は蚊帳などをほとんど使わずに生活していた。なお、そのハマダラカは、20 - 30匹に1匹の割合でマラリア原虫に感染していた(陸軍軍医学校教官陸軍一等軍医ドクトル、都築甚之助・陸軍二等軍医、大町文興調査)[16]。また、2008年2月半ば、ケニア西部にあるビクトリア湖畔のスバ県の土着マラリアが流行する地域(高地ではない)の伝統的な作りの住居(土壁。6畳ほどの民家に、夫婦2人と子供5人が生活している)に白いシーツを敷き詰め、屋内に殺虫剤を吹きかけると、10分間で、100匹以上のハマダラカの死骸を採取できた(長崎大学ケニアプロジェクト調査)[要出典]。つまり、この地域の伝統的な作りの住居は100匹以上のハマダラカが屋内に侵入するような劣悪な住居である[要出典]。
なお、2007年、国立感染症研究所ウイルス第一部部長倉根一朗は、マラリアの流行には、特に住宅構造が関係すること、現在の日本の住宅構造を考えると、毎晩、多数の蚊に刺される可能性はほとんど考えられないこと、今の日本のインフラストラクチャーを考えれば、自然災害などが重なってインフラストラクチャーが崩れるなどの変化が起きない限り、仮に地球温暖化が進んだとしてもマラリアが流行するとは思えないということを主張した[17][リンク切れ]。 マラリア原虫は遺伝子を変化させ薬剤耐性を獲得し、免疫防御を巧妙に回避する方向に進化してきた[18][19]ため、実用的な抗マラリア・ワクチンは長年開発途上にあった[20]。しかし2021年10月6日、世界保健機関(WHO)はマラリアに対するワクチンを推奨すると初めて発表した[21]。これは英国のグラクソ・スミスクライン(GSR)が30年以上開発してきた「RTS,S」で、原虫の表面タンパク質の一部をウイルスの殻で包んで、人体による抗体産生を促して原虫を排出させ、感染段階で作用させて発症を減らす仕組みである[21]。ただし「RTS,S」を投与しても免疫反応は起きにくいうえ、マラリア原虫は赤血球に侵入して発症させる段階では形態が変わるため、効果は限定される[21]。「RTS,S」は2013年にで販売される見通しとなった旨が報道された[22]。2011年時点では、実用化された場合、マラリア発症リスクが56%、重症化リスクが47%、それぞれ低減されるとしていた[23]。 ワクチン開発は、前述のグラクソ・スミスクライン社だけでなく日本の大阪大学微生物病研究所らのグループ[20][24]や、愛媛大学と大日本住友製薬による発症抑制型[21]でも行われている。 マラリア流行地域から帰国してから1 - 2週間後に高熱が発生した場合はマラリアが疑われるため、熱が下がっても安心せず、直ちに病院を受診することが必要である。再発を防ぐため、投薬中止は自分で判断せず、必ず医師の判断を仰ぐ。 マラリア原虫へのワクチンは上述のとおり開発中だが、抗マラリア剤はいくつかある。マラリアの治療薬としてはキニーネが知られている。他にはクロロキン、メフロキン、ファンシダール 三重大学の研究グループは、マラリア治療薬の耐性遺伝子特定法を開発した[25]。
ワクチン
保健教育
治療
疫学 2004年の100,000人あたりのマラリアの障害調整生命年(DALY)[26] body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper{margin-top:0.3em}body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper>ul,body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper>ol{margin-top:0}body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper--small-font{font-size:90%} .mw-parser-output .legend{page-break-inside:avoid;break-inside:avoid-column}.mw-parser-output .legend-color{display:inline-block;min-width:1.5em;height:1.5em;margin:1px 0;text-align:center;border:1px solid black;background-color:transparent;color:black}.mw-parser-output .legend-text{} no data <10 10-100 100-500 500-1,000 1,000-1,500 1,500-2,000 2,000-2,500 2,500-2,750 2,750-3,000 3,000-3,250 3,250-3,500 ?3,500