1960年代から80年代の間、レングルは数十冊の児童書および一般書を上梓した。後者の一冊"Two-Part Invention"は結婚生活の回想録で、1986年9月26日に夫が癌で死亡した後に刊行された。 1991年に自動車事故で重傷を負ったが回復し、1992年には南極を訪れている[8]。 晩年、レングルは骨粗鬆症のためあまり動けなくなった。2002年の脳内出血以降には更に動けなくなり、講演や講義といった活動からは手を引かざるを得なくなった。2001年以降は、未発表だった旧作を刊行する以外には作品の発表を行なわなくなった。 マデレイン・レングルはコネチカット州の自宅に近い介護老人福祉施設にて、2007年9月6日に老衰で死亡した[9]。 レングルは米国聖公会の信徒で、万人救済主義(キリスト教の非主流派思想のひとつ)を信仰していた。そのため、キリスト教系の書店にはレングルの著作を取り扱うことを拒否する店も少なくない。一方で、世俗の批評家の幾人かはレングルの作品を宗教的に過ぎると批判している[10]。 レングルの作品にはジョージ・マクドナルドの影響が顕著であり、神罰に関する彼女の見解もマクドナルドのそれと類似している。レングルは次のように述べている。「私は、子供を愛する親と同様、神が永遠の罰を求めているとは思いません。愛の鞭の目的は物事を教えることだけであり、懲戒の必要がなくなれば罰も終わるのです。そして、その罰には常に愛が満ちているのです。」[11] レングルの主要な作品はChronosとKairosの二大シリーズに分類される。前者はオースティン一家の物語で、序盤の舞台設定は現実的だが突如として超現実的な要素が出現し、SFとなる。後者はミューリ(Murry)家[注 1]とオキーフ(O'Keefe)家の物語であり、舞台設定は時に現実的、時に幻想的なものとなる。一般的に言えばオキーフ家の第二世代を扱った作品は現実的要素が強い。このように傾向に違いはあるが、"Chronos"と"Kairos"は同じ世界を舞台にしている。歴史的事件は両シリーズに共通であり、幾人かのキャラクターは両シリーズに跨って登場する。 レングルには小説と詩だけではなく、自伝Crosswicks Journals をはじめとして、信仰や芸術の問題を探求したノンフィクションの著作も多い。彼女のいわゆる「真実の物語」において創作と回想録の境目は曖昧である。作中の出来事は多くの場合、自身や家族の経験に基づいており、地名や人名が架空のものに差し替えられているのである[12]。 作品のテーマは多くの場合は暗に匂わされるに留まるが、重要なテーマの一つとしては「愛」が挙げられる[13]。レングルは自身の創作姿勢を以下のように述べている。 「わたしは、ただの物語でない物語、人生について、ある態度を示すことのできるような物語を書こうと努めているのです。なぜなら、それが作家というものの責任だと考えるからです。ことに若者たちに向かって書く作家は、わたしたちが生きている世界に対して肯定的な態度をもっていることを示さなくてはならない、と思うからです。こういったからといって、わたしはなにもお説教をしようというのではありません――もしわたしの書くものが、物語よりも説教を多く含んでいるようなら、その作品は失敗しているのです。私は、読者をただ楽しませるだけの物語を書くことに興味はもっておりません。」 ?レングル(訳・猪熊葉子)([13]293ページより)
晩年
宗教的信念
作品概説
作品リスト
And Both Were Young (1949) 『春のワルツ』恩地三保子訳、新潮社、1958年
Prelude
Kairos
First-generation (Murry) (Time Quartet)
A Wrinkle in Time
『五次元世界のぼうけん』渡辺茂男訳、あかね書房、1965年
『惑星カマゾツ(時間と空間の冒険 I)』大瀧啓裕訳、サンリオ、1982年
A Wind in the Door
A Swiftly Tilting Planet (1978) ISBN 0-374-37362-0 『時間をさかのぼって(時間と空間の冒険 III)』大瀧啓裕訳、サンリオ、1982年
Many Waters (1986) ISBN 0-374-34796-4