マツ
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日本では松皮餅などが知られ、北欧のサーミ人などは春に木から剥がし乾燥させ保存できる状態にしたものをシチューやバークブレッドなど様々な形に加工し、アメリカ先住民も他の木の形成層と共に食用としてきた[17]

ジンの香りづけのネズミサシ、杉樽で作る日本酒のようにマツ類も香料としての利用がされる。中国の紅茶正山小種は、タイワンアカマツなどの木材や樹皮で燻して独特の香りを付けて作られる。朝鮮半島には松葉と共に蒸すことで香りをつけた餅「松片(??、ソンピョン)」があり、秋夕、いわゆるお盆の時期に食べる風習がある。花粉もクッキーなどに混ぜられて食べられる。マツ類の若葉を砂糖水中に浸しておくと、葉に付着している細菌が炭酸ガスを発生させサイダーになる。サイダー自体への香りづけした飲料も日本や韓国で見られる。葉を煮出して松葉茶として飲まれる。英語ではpine teaやtallstruntと呼ばれる。若葉で茶を作ればビタミンAとCに富む。ロシアでは球果がまだ未成熟なうちに収穫したものを砂糖で煮付けてヴァレニエにする。

樹脂である松脂も香料として使うこともあり、フランスなどではマツの香りのするが作られており、ギリシャではレッチーナ(Retsina, ギリシア文字:Ρετσ?να)と呼ばれる着香ワインが作られている。Retsinaはワインを発酵させるが発明される前からあり、松脂はアンフォラと呼ばれる壺に入れられたブドウ果汁が酸化しないようにふたの役目をしたという。

乾燥させているマツの実

殻を割って取りだしたマツの実

マツの実とバジルを用いたソース、イタリアのペスト・ジェノヴェーゼ

韓国の餅料理、??(ソンピョン)

ギリシアのRestina

チュニジアのAssidat Zgougou

松葉のお茶

また、マツを直接食べるわけでないが、マツ林に生えるキノコは多く、中には食用になる種もある。キノコの中にはマツの根とキノコの菌糸が結び付きマツと栄養のやり取りを行う種もあり、これらのキノコを食べることは間接的にマツを食べているともいえる。我が国ではその名にもマツ(松)が入るもマツタケ(松茸)やショウロ(松露)といった種が特に有名。マツと共生関係を結ぶ種は多く複数の科に渡って知られる。

日本の秋の味覚の代表であるマツタケ(キシメジ科)

半分地中に埋まるキノコ、ショウロ(ショウロ科)

アミタケ(イグチ科)

薬用

長野県開田村地方には松脂で溶いて、あかぎれにする伝統がある[18]。花粉は、中国で肌の防乾湿、防汗、止血、伝染性膿痂疹びらんなどに使用される[19]フランスカイガンショウ (P. pinstar) の樹皮から抽出されるピクノジェノール (Pycnogenol) を多く含むエキスは、サプリメントに利用されている(しかし、コクラン共同計画では有効成分のエビデンスが不十分であるとの報告がある[20])。

松の皮や脂は、傷口を覆う止血に用いられた。そのため、日本の城で植えられる例が多い。中国でも松皮散として止血に使用された[21]
花粉症の原因植物として

症例数は少ないが花粉症の原因植物となることが報告されている[22]
樹脂詳細は「松脂」を参照

マツの樹脂松脂(まつやに)と呼ばれる。樹木の樹脂は樹脂道という特殊な組織で生産され、昆虫や病原菌から植物を守る。マツ類は他の針葉樹に比べて樹脂道を多く持ち、枝や葉を折るだけでも多量に滲み出る。Strobus亜属の種では球果にも多量にこびり付くことが多い。生成当初は透明から淡黄色で流動性に富むが、揮発成分が減少するにつれ粘り気が増え固化し、色も酸化によって黄色茶色に変わる。

松脂はテルペン等の揮発成分を大量に含み水には溶けない。松脂の揮発成分は特有の芳香があり前述のように香料に利用されることもある。また、松脂を蒸留するとロジンテレピン油ピッチなどの成分が得られ、燃料、粘着剤、生薬香料滑り止めの添加剤などに用いられる。ロジンは、マツの根などからも得ることができる。詳細はロジンテレピン油を参照。

経済的な採取は幹に切り込みを入れる方法で行われ、現在は中国などのアジアを中心に行われる。マツの他にも針葉樹を中心に多くの樹種で樹脂は利用されるが、マツ類に比べて滲出量が少なく世界的に広く利用される種は無い。

松脂採取のために樹皮に切れ込みを入れる

採取風景

アリが入った琥珀

チェロ用の松脂[注釈 3]

文化
象徴

東アジア圏では、冬でも青々とした葉を付ける松は不老長寿の象徴とされ、同じく冬でも青い、冬に花を咲かせると合わせて中国では「歳寒三友」、日本では「松竹梅」と呼ばれおめでたい樹とされる。また、魔除けや神が降りてくる樹としても珍重され、正月に家の門に飾る門松には神を出迎えるという意味があるという。また、日本の色名には松を不変の象徴としてあやかった「千歳緑」または「常磐色」と名付けられた松の葉のような緑色がある。

イタリアではマツを珍重するという。ちなみにドイツでは同じマツ科でもモミ属の木を不死や魔除けの象徴として珍重する。クリスマスツリーは一般にモミ属を使うが、これもドイツ発祥の風習だといわれる。しかし、モミ属はマツ属に比べて分布域が限られるために、入手の難しい北欧、イギリス、アメリカ南部、オセアニアなどではマツ属の樹木を使うこともあるという。ドイツ国内にはモミを町の紋章とする自治体が多いが、イタリアに近いドイツ南部の町アウクスブルク (Augsburg) の紋章はマツの球果(松かさ)である。

日本の正月に見られる門松

歳寒三友として描かれる松と竹と梅

マツの葉と実を使ったクリスマス飾り、イギリス

バチカン美術館にある巨大な松かさの像

アウクスブルクの紋章

芸能

能舞台には背景として必ず描かれており(松羽目)、 歌舞伎でも能、狂言から取材した演目の多くでこれを使い、それらを「松羽目物」というなど、日本の文化を象徴する樹木ともなっている。松に係わる伝説も多く、羽衣伝説など様々ある。

松は日本や中国の貴族の位の一つである「大夫」と繋がりがある。これは始皇帝が雨宿りに使った松に爵位を授けたことに因み、大夫を「松の位」ともいう。後世では貴族の位よりも遊女の最高位である大夫すなわち太夫(たゆう)を指すことで知られるようになった。遊女を太夫と称するのは、古くに猿楽能楽)を遊女が演じた時、座を率いる主だった者が本来五位の通称であった大夫(太夫)を男の能楽師に倣って称したことが始まりだという。邦楽の曲中ではしばしば「松」が松の位の遊女を連想・暗示させるような表現をとっているものがある。

能舞台の背景に描かれる松

苗字・地名

松の字を使った苗字や地名は日本産樹木では杉と共に比較的目にすることが多い。
家紋

有名な家では公家菅原氏五條家が「荒枝付き左三階松」を使用している。

右三階松

丸に左三階松

遊び


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