マツ
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1940年、戦時色が強くなった日本では、特定の樹種の木材について用途指定がなされたが、マツの小丸太の用途は軍需用のほか坑木パルプ、包装用資材とされていた[14]。また、鉄道枕木としても使われていたが[15]、日本の場合防腐処理をしない場合の寿命は3-5年だといい、耐朽性のあるクリ(7-9年)などと比べると半分程度の寿命しかなかった[15]

木材輸入の自由化、スギ林の放棄、防腐・加工技術の進展などで外国からの輸入は増えている。英語でマツを指すpineに因んでパイン材と呼ばれることも多い。これはヨーロッパからの輸入住宅のフローリングなどに使われている場合は、ヨーロッパアカマツ(P. sylvestris)を指していることが多い。北米からの輸入の場合は、2×4建築の構造材やホームセンターに部材として販売されているカナダ産の白っぽい木肌のSPF材、これは特にコントルタマツ (P. contorta) が多いとされる。また、ボウリング場のレーンなどはアメリカ産の黄色っぽい木肌のSouthern Yellow Pine(SYP, 一般にSYPはテーダマツ、ダイオウマツ、エキナタマツ、スラッシュマツ等複数の種を含む)を指す場合もある。他の北米産としては家具用としてポンデローサマツ (P. ponderosa) なども入ってきているようである。北米産のものは「米松(べいまつ)」、国産のものは「地松(ぢまつ)」と総称することもある。

また、ニュージーランドは北米原産のマツ、特にラジアータマツ (P. radiata) に頼る林業を行っていることで有名で、ここから輸入される材は、ほぼこれに限られる。

伐採されるP. ponderosa

伐採されるP. sylvestris

心材と辺材の境目は明瞭P. sylvestris

マツのフローリング材

工芸品

アメリカ先住民の中には松の葉を編んでを作る部族もあった。

メキシコ伝統工芸の展示会で展示された松葉の籠

マツの葉を編んだ籠

燃料

他の木材と比べ可燃性の樹脂を多く含み、マッチ1本で着火できるため以前は焚き付けに用いられた。分離した樹脂である松脂もよく燃える燃料として使用された。第二次世界大戦中の日本では、掘り出した根から松脂を採取、松根油を採取し、航空機の燃料に用いようとしたことがある。

他の木材と比較し単位重量当りの燃焼熱量が高いことから、陶磁器を焼き上げる登り窯や金属加工の鍛冶用の炭として珍重される[11]。特にマツ材を急激に炭化させた松炭は熱量が多く鍛冶用の炭として適する[11]たいまつが漢字で「松明」と書くこともあるように明かりとしても重要であった。

また、マツを燃やした際に出る煤を集めて固めるとを作ることができる。これは松煙墨と呼ばれる。また、原理は不明だが、明治時代に発行された書物では油紙に墨で文字を書くとき、青い松葉を数本水に浸した水で墨をすったもので書くとよい[16]、とされている。

マツから精製された油

京都・五山の送り火は松の薪を使う

松材を不完全燃焼させて煤を採る、15世紀の中国

食用

マツの種子は一般に無害であり松の実(英:pine nut)と呼ばれ多くの種で食用となる。特にチョウセンゴヨウ (P. koraiensis) やその近縁種、イタリアカサマツ (P. pinea)、北アメリカ西部に生える英名Pinyon Pinesと呼ばれるグループの種子は大きく経済的価値が高い。なお、松の実を食べた直後から数日後に一過性の味覚障害を生じることがあり、欧米ではpine mouth(和名未定、直訳するとマツの口)と呼ばれている。原因は分かっていない。

表皮のすぐ下の皮である形成層も食用となる。日本では松皮餅などが知られ、北欧のサーミ人などは春に木から剥がし乾燥させ保存できる状態にしたものをシチューやバークブレッドなど様々な形に加工し、アメリカ先住民も他の木の形成層と共に食用としてきた[17]

ジンの香りづけのネズミサシ、杉樽で作る日本酒のようにマツ類も香料としての利用がされる。中国の紅茶正山小種は、タイワンアカマツなどの木材や樹皮で燻して独特の香りを付けて作られる。朝鮮半島には松葉と共に蒸すことで香りをつけた餅「松片(??、ソンピョン)」があり、秋夕、いわゆるお盆の時期に食べる風習がある。花粉もクッキーなどに混ぜられて食べられる。マツ類の若葉を砂糖水中に浸しておくと、葉に付着している細菌が炭酸ガスを発生させサイダーになる。サイダー自体への香りづけした飲料も日本や韓国で見られる。葉を煮出して松葉茶として飲まれる。英語ではpine teaやtallstruntと呼ばれる。若葉で茶を作ればビタミンAとCに富む。ロシアでは球果がまだ未成熟なうちに収穫したものを砂糖で煮付けてヴァレニエにする。

樹脂である松脂も香料として使うこともあり、フランスなどではマツの香りのするが作られており、ギリシャではレッチーナ(Retsina, ギリシア文字:Ρετσ?να)と呼ばれる着香ワインが作られている。Retsinaはワインを発酵させるが発明される前からあり、松脂はアンフォラと呼ばれる壺に入れられたブドウ果汁が酸化しないようにふたの役目をしたという。

乾燥させているマツの実

殻を割って取りだしたマツの実

マツの実とバジルを用いたソース、イタリアのペスト・ジェノヴェーゼ


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