マッドサイエンティスト
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マッドサイエンティストは、奇矯な振る舞い、極端に危険な手段を用いることで特徴付けられる。彼らの研究所ではしばしば、テスラコイルバンデグラフ起電機や、その他の火花を飛ばしたりポンと音を立てたりするガラクタなどが、ぶんぶん唸っている。またロボットアンドロイドが描かれる場合は、失敗作の手足や胴体があちこちに転がっていたりする。

端的にマッドサイエンティストである事を受け手に理解させる為に、容姿で演出がなされる事も多い。例として挙げられるアイテムは、白衣、黒いマントモノクル、異様に光の反射率が高い(レンズの向こう側の目が見えない)眼鏡、得体の知れない液体の入った白煙を上げるフラスコ、手入れされずボサボサの髪形、機械義手や身体の一部のサイボーグ化などである[6]。日本で作られた創作作品における具体的な例としては、ナムコから発売されたアーケードゲーム、『超絶倫人ベラボーマン』の爆田博士が挙げられ、まず名前自体から、黒マント、眼鏡、片手は機械の義手、ヘアースタイルがキノコ雲を模しているという、まさに手本の様なデザインであった。
魔法使い

科学者という概念、職業形態が定着する以前の世界を物語の舞台とするフィクションでは、マッドサイエンティストの役割は、魔法使いが充てられる。作品の世界観によっては、錬金術やスチームパンクなどの疑似科学的な知識や技術の専門家、研究者である場合も見られる。これらは、演出上の差異が見られるものの行動や人物像、目的に関しては、ほぼ同一と言って良い。むしろ現実に則した世界観に比べファンタジー作品では、神や悪魔が存在し、明確に正邪善悪が定義されているため一層、その行動は、非常識として見做される場合が多い。また宗教の解釈を取り違えた狂信者、異端者という姿でも描かれる[7]
ノンフィクションのマッドサイエンティスト

歴史上に出現した著名だが、やや風変わりな科学者の行動がマッドサイエンティストのモデル、想像のアイディアになったといえる。

まず現代の常識、倫理基準において異常であっても当時は普通とされた人物も多い。

古代ギリシアのアルキメデスは、裸で市中を走り回った、研究に没頭するあまりローマ兵に抵抗して殺害されたとされるエピソードが有名である。エウドクソスは、天動説を唱え、アリストテレスらによって支持された。イタリアのレオナルド・ダ・ヴィンチは、医療分野でなく絵画の人体デッサンへの興味から死体を解剖した。陰陽道は、現代からすれば科学ではないが中国や日本は、これらを科学として重視した。天武天皇は、自身も陰陽道を修め、陰陽寮を設置した。陰陽師の安倍晴明安倍有世は、社会的に高い地位にあった。ジョン・ハンターは、「近代外科学の開祖」と呼ばれながら死体コレクターとして知られるが、当時の医師の倫理観からすれば死体の収集は、研究方法として正当な物である。ベンジャミン・ラッシュは、「精神病の患者を板の上に縛りつけて回転させることで頭に血液を集めて治療する」、「アメリカ合衆国憲法で医師免許を禁止しようとした」、「黒人が黒いのは遺伝病である」など現代の基準で見れば狂気の医者のように見えるが、当時としては正当な医学として高い評価を受けていた。アントワーヌ・ルイ医師は、処刑道具ギロチンを発明した。

対して現代だけでなく当時においても批判された人物としてナチスドイツにおけるヒトラーの主治医モレルがいる。モレルは病状を隠し劇物を使用した危険な治療を本人の同意なしに行った。「死の天使」と綽名されたメンゲレ医師は、人体実験を繰り返したとされる。考古学者ウォーリス・バッジは、数々の発掘品を大英博物館に送ったが、この手法に関して激しく批判された。

逆に現代から見れば正当な主張をして批判に晒された人物も多い。地動説のガリレオ・ガリレイや進化論のダーウィンが有名である。「院内感染予防の父」センメルヴェイスは、手を洗うことを推奨して精神病院に送られた。

次いで科学者や技術者の中でも、平和利用から離れる兵器開発者がマッドサイエンティストのアイディアに繋がる場合が多い[8]

ガトリング砲を発明した発明家ガトリングは、「1人で100人分戦えば兵士が少なくて済み、不衛生な戦場で病死が減る」と発言した。ノーベルは、ダイナマイトの発明者で知られ、彼に対して使われた「死の商人」は、広く軍事産業に関わるマッドサイエンティストのアイディアに使われた。工学博士平賀譲は、主張を曲げない頑固な性格から「不譲(ゆずらず)」の異名で知られる。ロケット技術者フォン・ブラウンは、「宇宙に行く為なら悪魔に魂を売り渡してもよいと思った」と発言している。フォン・ノイマンは、倫理に反するような研究を行った科学者ではなく多分野に渡って優れた功績を残したが、その卓越した頭脳と個性的な人物像を「悪魔」と評された。特に核兵器開発に参加したことや当人のタカ派の政治思想面からスタンリー・キューブリックによる映画『博士の異常な愛情』のストレンジラヴ博士のモデルの一人ともされている。コーンフレークの生みの親とされるジョン・ハーヴェイ・ケロッグは、極端な禁欲主義者であり、去勢を推進するための食事を開発中に、パン生地を乾燥させて作られたものが元になっている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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