また、日本政府が捕鯨問題において捕鯨を正当化するために用いた「鯨食害論」は国内外の識者からの批判を受けており、2009年6月の国際捕鯨委員会の年次会合にて、日本政府代表代理だった森下丈二水産庁参事官が鯨類による漁業被害(害獣論)を撤回している[23]。
他にも、優先度は低いもののウバザメ、オンデンザメ、メガマウス、アオザメ、エイ、マグロなどの大型魚類やウナギやサーモンなどの多様な魚類を捕食していると考えられる記録もある[24][25]。
子育てと社会形成群れのメンバー同士の絆は強い(アゾレス諸島)
本種は家族の絆がとても強い。子は生まれてすぐには深海に潜ることができない。母親は子が深海へ潜ることができるようにするため、しばしば訓練をするが、子がなかなか潜ろうとしない場合は母乳を飲ませながら潜る。最近の研究では頻繁に深海と海面を行き来することが分かっている。
成熟した雄は、通常は独り立ちし、雌や子供が進出しない極海に至るまで広範囲を回遊する。若い雄同士で独自のグループを形成する。また、雌や子供の群れがシャチや捕鯨船などに襲われた際に救出にくることもある[26]。群れを守るために捕鯨船(大型帆船)を雄が攻撃して沈没させた例[注釈 13]も存在する。
また、後述の通り、花形の円陣(マーガレット・フォーメーション)を組んでシャチへの抵抗を見せることがある[27]。 近年、ホエールウォッチングが世界中に盛んになり、比較的個体数の多い本種も観察の対象とされる。特にカイコウラなどの様々な地域がマッコウクジラを対象としたホエールウォッチングで発展してきた。また、捕鯨を知らない若い世代が増えたこともあり、人間や船舶などに対する警戒心が薄れ、より人懐っこくなりつつある[28]。 ザトウクジラやナガスクジラ、ミンククジラ、シャチなどと行動を共にする場合がある。日本では、根室海峡[29]や伊豆諸島等でこれらの交流が観察された。 2011年には、アゾレス諸島にて、奇形ゆえに群れから脱落したと思わしいハンドウイルカにマッコウクジラの群れが寄り添っていた観察例が報告されている[30]。 また、その生涯の3分の2を深海で過ごす。軽く2,000メートルは潜ることができ、集団で狩りをすると考えられている。光の届かない深海においてはイルカ等に代表される反響定位(エコーロケーション)を用いている。家族同士での会話にも音を利用していると考えられている。 本種の潜水能力はクジラの中でも特筆すべきである[注釈 14][31]。ヒゲクジラ類の潜水深度は200- 300メートル程度とされる。マッコウクジラの場合は、全身の筋肉に大量のミオグロビンを保有し、これに大量の酸素を蓄えることが可能である。このため、1時間もの間を呼吸することなく潜っていることが可能で、さらに、これによって肺を空にして深海での水圧の影響を受けないことも明らかとなった。通常では、約1,000メートル近くの深海に潜ってから息継ぎをするために水面に上がり始めるまでの20分ほどの間、深海にて捕食などの活動を行っていることが分かっている。また、3,000メートルを潜ったとする記録もあり(長さの比較資料:1 E3 m)、深海層での原子力潜水艦との衝突事故や、海底ケーブルに引っかかって溺死したと見られる死骸の発見などの実例が、この記録を裏づける。しかし、2,000メートル以上の深さまで潜ると捕食すべきイカなどの数も少なくなるため、それ以上はあまり積極的に潜ろうとするとは考えにくいとも言われている。マッコウクジラと衝突した場合、大型船は船体を破損させることはないが、ヨットや木造船であった場合には多大な損傷をこうむることが予想される。
スキンシップ(アゾレス諸島)
異種間交流
人間との交流(アゾレス諸島)
人間との遊泳
潜水潜水する際の尾びれ(メキシコ湾)
深海への適応ダイオウイカの捕食を再現した模型